皆さん、「ごんぎつね」ご存知ですよね?小学校の頃、大体の国語の教科書に載ってましたよね。

「ごん、お前だったのか」という成句は知っているけど実際に読んだことはない、あるいは内容を忘れたという方は、ぜひ青空文庫にてご一読ください。ネットミームの原典を確認するのは大事だと思います。

 

いちいち内容に触れるのも気恥ずかしいところではあるのですが、

 

・「いたずらを反省して、贖罪の為に栗や松茸を運ぶ狐のごん」「一方それを誤解してごんを撃ってしまう猟師の兵十」という構図が、道徳的な側面もありながらストーリー展開として強烈で、いろんな人の心に強い印象を残した

・結果、「ごん、お前だったのか」が広くミームとして定着するまでに至った

 

というところかと思います。

 

うちの長女次女も多分に漏れず「ごんぎつね」を教科書で読んできたのですが、感受性の強い次女はごんが撃たれてしまったことが余程腹に据えかねたらしく、「ハッピーエンド版ごんぎつね」みたいな漫画を描いてました。

 

兵十が撃つ前に栗を誰がくれたのか気付く、というストーリーになるのかと思いきや、「兵十が撃った弾をごんが無下限呪術で防ぐ」「そのままごんが人間に変身して兵十と結婚する」という、比較的力業なハッピーエンドになっているのが印象的でした。

なんでいきなり呪術廻戦なのかは知りませんが、小学生のイマジネーションは素晴らしいと思います。

 

それはそうと。

もとのお話からは微妙にニュアンスがずれるのですが、Web上のミームとしての「ごん、お前だったのか」は、「縁の下の力持ちが人知れずやってくれていた仕事が、その人がいなくった為に回らなくなる」「結果、その人の大事さにみんなが気付く(けれど後の祭り)」という意味合いで使われることがしばしばあります。

 

一時期Twitterでも、「ごん、お前だったのか。いつも社内サーバーのメンテをしてくれていたのは」みたいなコピペが大流行しましたよね。

 

この筋立て、社会人を中心に刺さる人が多いためなのか、なろうみたいなWeb小説でも一時期大流行していました。

していました、というか、現在でも一大勢力を保っていまして、例えば「もう遅い」のタグで検索すると物凄い量の作品が出てきます。(参照:「小説家になろう」検索)

 

つまり、「組織内で、誰にも気付かれていなかったけれど、実は大事な仕事をしていた主人公を追放してしまう」「それを後悔して呼び戻そうとするけれどもう遅い」「主人公はその組織を出て大活躍」みたいなテンプレートですね。

もちろんこの手のテンプレートは、定着して以降は様々にアレンジされるものなので、バリエーションは山ほどあるのですが、大筋は今でもぶれていません。それだけいろんな人に「響く」展開だということなのでしょう。

 

なろう小説に限らず、「ブラックな職場を辞した人が人知れず重要な仕事をしていたことを知って、偉い人が後悔する」という展開には、溜飲を下げる人が多いようです。

まあ、「もう遅い」を偉い人に叩きつける展開はスカっとしますよね。

 

ただ。飽くまで個人の観測の範囲内では、という話なのですが、マネージャーや経営者など、偉い人たちが「ごん、お前だったのか」となっている場面を見ません。マジで見かけません。

 

大抵の場合、「縁の下の力持ちが辞めたことによって回らなくなった仕事」というものは、偉い人たちの間で「引き継ぎ漏れ」として処理されます。

つまり、単に「あの野郎仕事抱え込んでやがった」と舌打ちされて、しばしば現場が詰められるか、あるいは現場のマネージャーが怒られます。

 

これ、なかなか溜飲が下がらない話で大変心苦しいんですが、「偉い人に人の心がないから」というわけでは必ずしもないんですよ。

 

一つ間違いのない事実として、

「仕事の可視化も大事な仕事の内」

というものがあるんです。

そもそも、「自分以外誰にも知られていない重要な仕事」って、本来存在しちゃいけないんですよね。

 

別に「もう遅い」展開でなくても、人間いつ職場を離れることになるかなんて分かったもんじゃありません。

ケガでもして入院するかも知れませんし、病気にかかるかも知れません。

当たり前ですが、そうなるとその「重要な仕事」は誰にも知られないまま止まります。

 

コロナ禍でますます「冗長人員がいない状況」のリスクが明確になった感がありますが、「誰かひとりしか詳細を知らないけれど、止まるとみんなが困るようなタスクが存在する」って、既にそれだけで十分リスクなんですよ。

 

「ごんぎつね」においては、ごんは狐なので「自分が栗や松茸を届けている」と主張は出来ませんでしたが、我々は人間なのでアピールをすることが出来ます。

「自分がどんな仕事をしていて、その仕事にはどんな価値がある」と上にアピールすることは非常に重要です。

別に本人の評価の為だけではなく、会社が抱えているリスクを低減する為に重要です。

 

仮に、そういったアピールを一切せずに「人知れず重要な仕事を回しています」という人がいたとしたら、その人は「奥ゆかしい人」ではなく、もちろん「縁の下の力持ち」でもなく、むしろ「会社のリスクを放置している怠慢な人」と評価されかねません。

 

なので、偉い人は「ごん、お前だったのか」とは言わないし、思わない。まずはそういう話なわけです。

 

ただし、もちろんこれにはいろんなケースがありまして、「私はこういう仕事を自分だけで回しています」「私がいなくなったら大変なことになりますよ」というのをきちんと発信していて、その上でマネジメント層が拾ってくれない、という場合もあります(肌感としてはむしろそっちの方が多いです)。

 

これは純然たるマネジメントのポカ、マネージャーの失敗でして、本人は何も悪くありません。

実際、「何度仕事の価値を発信しても拾ってもらえないからイヤになって辞める」という転職事由だってちょくちょく聞きます。

 

言ってしまうと、「縁の下の力持ち」が存在する時点で、既にマネジメントが敗北しているんですよね。

マネージャーは、部下がやっている仕事をきちんと把握していないといけないし、適切にその価値を評価しないといけない。

そこを怠ると大体の場合えらいことになります。

 

まあこの場合でも、言われるのは「ごん、お前だったのか。知らないところで重要な仕事をしていたのは」ではなく「上司、お前だったのか。仕事の重要性の評価を怠っていたのは」ってなるでしょうけど。

いずれにしてもあんまり溜飲は下がりませんね。

 

時間が流れるのは早いもので、この前まで「今年の冬めっちゃ寒いな」という話をしていた筈が、世界はいつのまにやらもう3月も下旬、そろそろ年度が変わる時期です。

今年の4月から新社会人になる方もいらっしゃるでしょうが、まずは

 

「自分の仕事の価値は、遠慮せずじゃんじゃかアピールしていきましょう」

ということを、心からお贈りして今回の記事を締めたいと考える次第なのです。よろしくお願いします。

 

今日書きたいことはそれくらいです。

 

 

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システム開発やITコンサルティングを経て、
外資系製薬企業で15年以上のITビジネスパートナーとして人事からコマーシャル、 メディカルなど製薬企業の様々な分野のプロジェクトに携わる。
現在はネクセラファーマ株式会社で、システムだけではなく、企業風土改革や業務改善をリードし、
日本発グローバルバイオ製薬企業にむけて、同社の成長基盤の構築に尽力している。

岡田 雄太(ワークワンダース株式会社 CTO)
野村総合研究所に新卒入社後、証券総合バックオフィスシステムやオンライントレードシステムなどの開発に従事。
その後、8 Securities(現SoFi Hong Kong)へ出向し、日本人唯一のエンジニアとして国際的なプロジェクトに携わる。
BOOSTRYでは信託銀行向けSaaSの立ち上げと成長を牽引。
WiseVineではCTOとして開発組織を30名規模に拡大し、プロダクト開発を推進。
2025年4月よりワークワンダース株式会社CTOに就任。AI活用を中心とした開発支援をリードする。


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(2026/01/19更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

著者名:しんざき

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。

レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。

ブログ:不倒城

Photo by Birger Strahl