『こうして社員は、やる気を失っていく』という書籍が売れていると聞きました。

もしかしたら「日本人は死ぬほど会社が嫌い」という現実を表しているのかもしれません。

 

その際、編集者の方から、その本のプロモーションとしてイベントをやるのですが、登壇しないかとお誘いを受けたのです。

少し考えましたが、結局お引き受けしました。(イベント詳細は、記事末尾です)

 

その理由は、この本の序章に書かれている「部下のやる気を高めようとするより、やる気を削ぐ行為を直ちにやめろ」というメッセージをもっともだと思ったからです。

 

他人のやる気は操作できない

私が考える「やる気」に関する議論で最も重要なのは、「他人のやる気は、都合よく操作できない」という点です。

というのも、人のやる気というものは、仕事だけではなく、様々なプライベートな要因によっても、上がったり下がったりするからです。

 

 

かつて「管理職研修」の講師をやっていたこともあり、私は部下の「やる気」に、とても気をつかっていました。

特に、会社からも「社員には、やりたいことをやってもらおう」という方針が出ていたため、マネジャーになってからは「どうやって部下のやる気を上げようか」と悩みました。

 

そんなある日、私は普段頑張っていた部下の一人が、元気がないと気づきました。

お客さん先なのに落ち込んでいて、明らかに仕事が手についていないようなのです。そこで「これは良くない」と思い、後で理由を尋ねたところ、

「そんな風に見えます?」と言われました。

「普段と違うとは思う」というと、彼は

「すいません、プライベートの事情で落ち込んでます。」

というのです。

 

ああ、なるほど。

勘違いしていた。

そう思いました。

 

つまり、お金をもらっているプロであれば、「仕事のやる気」と「プライベート」は切り離されており、プライベートの状況によらず、仕事を遂行するという思い込みは、間違っていたのです。

確かに都合よく切り離せる人もいるでしょうが、そうでない人もまた、数多くいるのです。

 

いや、むしろ仕事とプライベートが地続きの人のほうが多い。

そんな当たり前のことに気づいたのです。

だから、こんな理由で、たやすく仕事のやる気は下がります。

 

パートナーにフラれた。

親類縁者が重い病気になった。

娘の受験がうまくいかなかった。

昨日夫婦ゲンカした。

二日酔いになった。

好きなアイドルのスキャンダル。

最近太った。

ランチがおいしくなかった。

財布を落とした。

 

むしろ、人生における仕事の優先度が低い人は、「好きなアイドルのスキャンダル」に心奪われて、仕事どころではない、という事が普通にあるのです。

そして、ここから得た教訓は、「上司がいくら踏ん張っても、人のやる気は予測不能かつ、操作不能」という事実です。

 

上司は部下のプライベートで下がった「やる気」に責任を持つ必要などない。

「それはそれ、これはこれ。プライベートで悩んでいるなら休みをとれ、出勤するなら仕事しろ」と言えばいいのです。

 

上司はせめて「部下のやる気」を削ぐようなことはするな。

ただし、これをもって上司が「部下のやる気」に無関心でよいという事にはなりません。

というのも、上司が「やる気を削ぐ原因」になるケースも多いからです。

 

例えば、上述した『こうして社員は、やる気を失っていく』には、こんな「やる気を削ぐ上司」のケースが記載されています。

 

・理由や背景を説明しない──「意味のない、ムダな仕事」と思わせる上司

・一方通行の指示──双方向のコミュニケーションがとれない上司

・話を聞かずに結論を出す──頭ごなしに決めつける思い込み上司

・意見も提案も受け入れない──「自分が絶対」のお山の大将上司

・言うことに一貫性がない──行き当たりばったり上司

 

こんな上司であれば、プライベートに関わらず、会社が憂鬱な場所となるのは無理ありません。

上司がわざわざ、仕事を邪魔しているようなものです。

 

私のかつてのボスは、こう言っていました。

『上司の役割は、部下の靴の中の石ころを取り除いて、走りやすくしてあげることだよ』と。

 

それはつまり、上司は部下の仕事の障害を取り除くことがメインの仕事であり、「部下のやる気を上げよう」なんて考えなくていいということ。

そして、せめてやる気を削ぐようなことはするな、という意味だと私は理解しています。

 

 

以下、『こうして社員は、やる気を失っていく』トークイベントのご案内です。

日時:2022/09/21 (水) 19:00 – 20:30 【店頭参加およびオンライン参加】

イベント申し込みページはこちら

数多あるマネジメント書籍ではモチベーションを高め、高い意識で目標に突き進むチームを創り出していくことを目的としています。
しかし、そういった意識向上を果たしたチームの影に、振り落とされてしまった人々がいるのではないでしょうか。

本イベントは、社員のモチベーション管理と組織管理を題材にした対談イベントとなっており、モチベーションの下がらないチームの形成を扱います。

 

 

 

【安達が東京都主催のイベントに登壇します】

ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。


ウェビナーバナー

お申し込みはこちら(東京都サイト)


ティネクト代表の安達裕哉が東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。
ティネクトでは現在、生成AIやマーケティング事業に力を入れていますが、今回はその事業への「投資」という観点でお話しします。
経営に関わる全ての方にお役に立つ内容となっておりますでの、ぜひご参加ください。東京都主催ですが、ウェビナー形式ですので全国どこからでもご参加できます。

<2025年7月14日実施予定>

投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは

借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。

【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである

2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる

3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう

【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。


お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください

(2025/6/2更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

安達裕哉

元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。

◯Twitter:安達裕哉

◯Facebook:安達裕哉

◯有料noteでメディア運営・ライティングノウハウ発信中(webライターとメディア運営者の実践的教科書

 

Tegan Mierle