夫婦喧嘩の種といえば、真っ先に思い浮かぶのが、家事の分担問題だ。

 

「家事を手伝ったのに、やり方がちがうと文句を言われた。もうやる気がなくなった」

「やってくれるのはうれしいけど、結局こっちの手間が増えるだけ。それならもう自分でやったほうが早い」

 

古今東西、家事分担でモメている夫婦は多いだろう。

なぜ、家事分担はこうもすれ違ってしまうのか。

 

わたしなりにその理由がわかった気がするので、家事を手伝っているのになぜか怒られる、喧嘩になる、という方はぜひ、この記事を最後まで読んでいただきたい。

 

家事は結局、どちらかが多く負担するもの

「そもそも家事は2人のものだから、『手伝う』というのはおかしい」という人もいると思う。

しかし実際のところ、家事分担が完全に50:50の家庭はほとんどなく、どちらかが多く負担しているのが現実だ。

 

なのでこの記事では、我が家基準で「家事をメインで担当する妻と、それを手伝う夫」を前提に書いていく。

各ご家庭に合わせて、妻を夫、夫をパートナーなどに読み替えていただきたい。

 

さて、本題に入ろう。

我が家はわたしがメインで家事をやっているが、夫はおおらかなタイプなので、手を抜いたからって何か言ってくることはないし、わたしが疲れているときは代わりにやってくれる。感謝の気持ちでいっぱいだ。

 

……が。

正直なところ、家事を手伝ってくれる夫に、イライラすることもあった。

 

家事を手伝ってくれた夫にイラッとした理由

いやね、聞いてくださいよ。

出先から帰ってきて、クタクタのなかお昼ご飯を作ったことがありまして。

昼食後「食器の片付けをお願い」と言ったところ、夫も疲れているだろうに、「やっておくから昼寝でもしてなよ」と快諾してくれた。優しい。

 

しかし片付けをはじめた夫が、

「あれ? 食洗器にまだ食器があるよ」と言ったのだ。

 

わたしはいつも、朝イチで食洗器のスイッチを入れ、午前中に洗浄が終わった食器類を片付けておき、昼食を作りながらまな板や菜箸など使い終わったものを食洗器に入れ、後片付けしやすいようにしている。

だから夫は、「洗い終わった食器はしまわれていて、つねに食洗器に物が入れられる状態」しか知らないのだ。

 

でもそのときわたしは本当に疲れていて、食洗器のなかの洗い終わった食器を片付けていなかったし、料理しっぱなしでキッチンの上には調理器具が散乱している状態だった。

だから、使い終わった食器を食洗器に入れようとした夫が、「食洗器のなかに洗い終わった食器がまだ残ってるよ」と言ったのだ。

 

もちろん夫に、悪気はない。だっていつもなら、その食器は片付いているはずだから。

でもそのときは疲れ切っていたこともあって、「全部こっちがお膳立てしないとできないの? それくらい自分ですればいいじゃん」と言ってしまった。

 

せっかくやってくれようとしたのにごめんね……。

 

妻のイライラと夫の不満、家事分担をめぐるすれ違い

でもこういうイライラは、結構頻繁に起こる。

たとえば、犬の散歩。

もともと朝は夫の担当という約束で飼い始めたが、わたしのほうが早起きなので、なんやかんや毎朝わたしが行くようになった。

 

でもたまには朝ゆっくりと過ごしたいので、平日週1で夫が朝の散歩に行くことに。

しかし夫はいつもギリギリに起きるので時間がなく、散歩前に「首輪つけといて」とわたしに散歩の準備を任せ、散歩から帰ってきたら「脚拭いといて」と丸投げ。

 

わたしは朝ゆっくりしたいのに!

あれやって、これやって、って言われるんならもうわたしが行くよ!

と、結局わたしが毎朝散歩に行くことになってしまった。

 

ほかにも、洗濯。

洗濯するとき、夫は洗濯カゴの上から洗っていく。

 

すると、スポーツやら出勤やらでよく着替える夫の服しか洗わないことがある。

え、わたしの服も洗ってよ!! っていうかタオルがもうないじゃん、なんでそういうの考えないの!?

 

で、結局わたしがするようになる。

 

……なんてことが続くと、夫は

 

「朝忙しいなか散歩に行ったのに文句を言われた」

「せっかくやる気になって洗濯をしたのに、もうやらないでと言われた」

 

と不満に思う。

 

わたしはわたしで、「やってくれるのはありがたいけど余計面倒なんだよな」と思ってしまう。

いやぁ、家事の分担ってむずかしいね……。

 

家事の「流れ」を無視すると、余計な手間が増える

なんでこんなにもすれちがうんだろう、と考えて気づいたのが、「家事」という作業に対する認識が、わたしと夫で大きくちがうことだ。

 

ふだん家事をやらない夫は、ぶっちゃけその作業のことしか考えていない。

でもふだん家事をやるわたしは、すべての作業を「一連の流れ」のなかで捉えている。

 

たとえば、「誕生日だから俺が料理をつくるよ!」と張り切ってごちそうを作ったのに、妻が不満そう。そんな話をよく聞く。

 

だいたいの場合、夫は料理をつくる=その料理のことしか考えずに実行している。

「おいしい料理をつくったよ! 喜んでくれるかな!」と。

 

でも妻は内心、「使いかけのトマトがあるのになんで新しいものを買うの? 日持ちしないキノコをこんなに買って、あしたどうするつもり? ああ、使ったもの全部キッチンに放置してる、終わったらわたしが片付けなきゃ……」と思う。

家事を「流れ」で認識していない人が家事をすると、無計画さのしわ寄せが相手にいくのだ。

 

我が家を例にすると、夫は「食器を片付ける」「犬の散歩に行く」という作業は、ちゃんとやってくれた。

でも食洗器はつねにカラになっているものという認識で、犬の散歩の後片付けは考慮していなかった。

 

要は、その作業だけすればいいようにお膳立てされてある状況が当然で、なおかつやりっぱなしでいいと思っていたわけだ。

 

わたしは一連の流れをひっくるめて「食器の片づけ」「犬の散歩」だと思っているので、「やるなら全部やってよ~! そうじゃないと逆に仕事増えるじゃん~!」となっていたのである。

 

分担制の仕事と流れがある家事の大きな違い

ではなぜ、夫は目の前の作業のことしか考えていなかったんだろう?

それは夫が、家事を仕事のように捉えているからじゃないかと思う。

 

仕事であれば、データを集める人、資料を作る人、資料をもとにプレゼンする人、それを判断する人、それぞれ役割が分かれている。

 

基本的に分担制だから、「資料を作って」と言われたら資料を作ればいい。

データを集める担当者がほかにいるから、手元にデータはあって当然。会議に出席しないから、自分が作った資料がどう使われているかはよく知らない。

 

書類関係は経理に丸投げすればいいし、取りたい資格があれば支援制度があるか人事に問い合わせてみればいい。

自分のタスクをこなしておけば、とりあえずはそれでいいのだ。

 

きっと家事に対してもそういうスタンスで、夫は「その作業をちゃんとやったから十分だ」と満足している。

「資料を作れ」と言われたから作ったのに、「別のプロジェクトのことも考えて」「その資料を使ったあとどうなるか想像してよ」なんて言われても、首をかしげるだろう。

 

一方の妻は、夫の無計画さのしわ寄せで前後に発生する余計なタスクをこなしながら、溜息をついている。

「この準備をしてあげないとやり方わからないだろうし、終わった後の後始末はわたしがやらなきゃ……」と。

 

家事をひとつひとつの作業としてとらえるか、一連の流れとしてとらえるかのズレが、家事分担のすれちがいの原因じゃないかと思う。

 

夫婦間の家事分担に必要なのは「流れの共有」

では、どうやってこの意識の差を埋めればいいのか。

 

そこでおすすめなのが、

 

・一連の作業を一緒する

・作業の期限を共有する

 

のふたつだ。

 

そもそも「流れ」を理解していないのだから、それを理解してもらう。知ってもらう。

料理であれば、前日の買い物のさらに前、冷蔵庫で食材の在庫確認から一緒にやればいい。

 

調理中も、

 

「ちょっと多めに玉ねぎ切っておいて、明日のお昼に使うから」

「日持ちしない野菜を全部野菜炒めにして付け合わせにしよう」

「そのフライパン、使い終わったら洗っておいて。調理台のスペースがなくなるから」

 

のように、後々のことを一緒に考えていく。

 

そのうえで、作業の期限を具体的に提示する。

 

「〇〇時に買い物に行くから、その前に買い物リストを書き終えておく」

「19時に食べるために調理開始は18時。その前に食洗器が終わってる必要があるから、16時には食器を洗っておく」

「次の日に必要な調理器具があるから、夜ごはんを食べ終わったら20時にはもう食洗器をつけて、翌朝終わってるようにする」

 

という感じで。

 

家事にはどれだけの準備が必要かを知ってもらい、やりっぱなしにするとどれだけ後が面倒かを体感してもらえば、「なるほどそういうものか」と納得してもらえるんじゃないだろうか。

 

お互いを理解してパートナー同士協力しあうのが理想

我が家は今まで、わたしがガミガミと「いま食洗機をつけても遅い!」「やりっぱなしは迷惑!」と言っていたが、「夜ごはんの支度があるから○○時までに食洗機つけてね」「後片付け含め散歩だからその時間踏まえて家を出てね」と言うようにした。

 

すると、「食洗機つけるの忘れそうだからいまのうちやっとく」「ごめん、帰ってから犬の脚拭いたり玄関きれいにする時間ないかも。明日行くから今日散歩行ってもらえる?」なんて言ってくれるようになった。

認識をちょっとすり合わせれば、こっちはとても助かるし、相手も気持ちよく手伝える。

 

なんやかんや言ったところで、いっしょに暮らすなら、お互い感謝の気持ちをもって協力できたほうがいいからね。なにごとも、コミュニケーションだ。

 

「えー、そこまでするのは面倒くさい」と思ったそこのあなた!

こっちはその面倒くさい作業を毎日してるんだよ!

 

「そこまでするならもう全部自分でやるよ」と思ったそこのあなた!

自分が病気になったとき、なにもできずに立ち尽くすだけの夫を見て天を仰ぐことになるよ!

 

家事分担のあり方は、その家庭によってちがう。

本人たちにとってよければ、それでいい。

 

ただ家事分担でよくモメるなら、家事を流れとして意識していないことが原因の可能性があるので、ちょっと考え方を変えてみるといいんじゃないかなーという話だ。

 

 

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安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
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(2025/6/2更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

名前:雨宮紫苑

91年生まれ、ドイツ在住のフリーライター。小説執筆&写真撮影もやってます。

ハロプロとアニメが好きだけど、オタクっぽい呟きをするとフォロワーが減るのが最近の悩みです。

著書:『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)

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