ChatGPTの登場以来、AIが生成する文章を活用する人が増えてきています。
例えば、世界有数のコンサルティング企業である、マッキンゼー・アンド・カンパニーは、全世界約3万人の社員の約半数がChatGPTを含む、生成AIを利用していると明かしました。*1
しかし、現在のところ、ChatGPTが生成する文章のクオリティに懐疑的な人も多いのではないでしょうか。
実際、ネット上では「ChatGPT的」という言葉が生まれ、記事を揶揄する言葉として使われています。
うーむ。完全に先入観だけど、この記事はChatGPT的なAIで作成してる。体裁の整い過ぎた文章なのに、実際の伴わない空虚な内容。記事の見出しもお手本のような検索ワードのゲーム記事テンプレ。
このようなものが溢れる時代がもう来たのかね。 pic.twitter.com/gudb5BBoNl— ワイチ@魔法の覚醒 (@whaichi) June 2, 2023
確かに現状ではこのツイートが指摘するように、文章生成AIの出力する文章を記事にそのまま使うと、「テンプレート的」だという批判を受けても仕方がない、と感じます。
ChatGPTに記事を書かせると……
ただし、そうかなあ?そんなテンプレ的になる? と思った方もいると思います。
そこで、例えばChatGPTに、『ChatGPTで作った記事を、『人間が書いたみたいな記事』にするテクニック』というタイトルで、記事を書かせてみましょう。
それが、以下の出力です。
これを見て、AIが書いた文章だとわかるでしょうか?
「そう感じる」という人と、「そうは思わない」という人に、別れるかもしれません。
しかし、ある視点から見ると、この文章は冒頭のツイートにある「記事テンプレ」に酷似しており、これは「AIが書いた」のだと、一目でわかります。
そして、その理由こそ、「ChatGPT的」の正体です。
いったい、ChatGPTが生成した文章と、人の書いた文章とは、何が違うのでしょう。
ChatGPT的であるとはどういうことか
結論から言うと、「ChatGPT的である」ことは、大きく3つの要因によって引き起こされています。
1.意外性がない
人間のライターは、「意外性」が記事のビューを集めるために重要であることを知っています。
なぜなら、ミステリ小説に代表されるように、『意外性』=『エンターテインメント』であることを知っているからです。
ところがChatGPTは論理ではなく、確率処理で文章を生成する*2ため、「一見、ありそうにない話」を提起し、論理的にそれを説得するような出力が苦手です。
起承転結でいう『転』が苦手なのです。
例えば、過去記事に「“正直”と“誠実”は、まったくちがうという話」がありますが、こうした「意外性のある話」は、ChatGPTから通常の手法では出力されません。
ジェームス・W・ヤングは、アイデアを「既存の要素の新しい組み合わせ」と定義しました*3。
しかし、新しい組み合わせを意図的に生み出すことを、ChatGPTをはじめとした文章生成AIは苦手としています。
2.具体的な話題が苦手
またAIは「体験」をしませんので、文中で具体的な話題を出すことが苦手です。
つまり、どこまでいっても「聞きかじり」の領域を出ないという事です。
例えば、過去記事「ワールドトリガー24巻が泣ける程面白かったので面白さについて解説させてください」を見てください。
その一部を抜粋しますと、ここには、とても細かい、具体的な描写があります。
このような描写は、現在の生成AIにはできません。
そもそも、ChatGPTの致命的な欠点として、「話が具体的になればなるほどウソが増える」ということがあります。
例えば、同タイトルでAIに記事を出力させると、以下のようになります。
・伏線が巧みに回収され
・成長と団結が見られます
・緊張感を一層引き立てます
など、一般論と、あいまいで抽象的な表現に終始していることがわかります。
つまり、「細かな具体的話題」を見ることで、ChatGPTと人間の書いたものの区別ができるのです。
3.表現が冗長
AIの出力する文章には「表現が冗長」という特徴があります。
推敲を重ねていないので、同じ主語を繰り返したり、同様の話題を複数回取り上げたりします。
例えば上の出力の冒頭に、「AIは長い文脈を理解し続けることが難しいことがあります ~ 必要です」という、非常に冗長なパラグラフがあります。
人間の編集者であれば、このパラグラフを同じ意味で
「AIは複数のパラグラフにわたる長い文脈が苦手であり、文章の一貫性を保つため、記事を人間が修正する必要があります」
と、1/5程度に短くできます。
ChatGPTが人間より優れていること
では逆に、ChatGPTが得意とする領域はあるのでしょうか?
これは間違いなく「網羅性」です。
つまり、インターネット上で「普通、こうだよね?」という話題を網羅された文章を出力させたら、右に出るものはいません。
よくできたwikipediaのページのようなものです。
であるがゆえに、ChatGPTの出力する記事は、「駆け出しのライターが、ネットを調べて書いた記事」に酷似しています。
これが、「低スキルライターが駆逐されるのでは」と予想される理由です。
冗長で、意外性や具体性はないが、テーマについての網羅性は高い。
それが、現在の生成AIの出力する記事です。
文章生成AIの出力を、「人間と同水準の文章にする」3つの手法
しかし、これは「人間と強みが違う」という事であり、逆にうまくやれば文章生成AIと人間とで効率的な分業ができます。
そのために、以下の3つの手法を適用します。
1.タイトルに『意外性のあるテーマ』を設定する
人間が「テーマ設定」の際に、意外性を含めてやれば、ChatGPTはそれに従って、説得のロジックを考え出すことができます。
例えば、上で挙げた「”正直”と”誠実”は、全くちがうという話」をChatGPTで出力させると、そこそこ良い精度での記事が得られます。
そのため、タイトルは、人間がアイデアを出さねばなりません。
意外性のあるテーマを見つけ、ChatGPTにその根拠となる一般論を探索させるのが、賢い分業の方法です。
2.具体的、かつ主観的表現を加える
ChatGPTには、具体例の出力を苦手とします。
『具体的なエピソードを』を要求しても、以下のように「どこかで聞いたような話」が中心になります。
したがって、AIが出力している「具体的なエピソード」を、著者の体験に置き換えてしまうと、AIの感じがなくなります。
「私は(具体的なシーン)で(具体的に)こう思った」という主観的な表現で記述するのです。
3.表現を簡潔に
上で示したように、AIの文章は1/5程度まで圧縮できることが多いのです。
圧縮して短くなった文章に、上で示したような「具体例」を入れて、文字数を調節します。
ChatGPTの出力を編集してみる
では早速、以上の手法に従って、ChatGPTの出力を「人間と同水準の文章にする」ように編集してみます。
サンプルとして、冒頭で示した生成記事を書き換えてみましょう。
(編集後の文章はこちらに掲載しています)
編集後の文章は、ChatGPTで出力した文章がベースなっているにもかかわらず、「人間の書いた文章」とあまり区別がつかないものになっています。
この手法は汎用性があるため、ChatGPT以外の生成AIの文章にも使えます。
社内で生成する記事的な文章、例えばコーポレートサイトやオウンドメディア、あるいは社内報などに活用いただくと良いでしょう。
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【著者プロフィール】
安達裕哉
元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。
◯Twitter:安達裕哉
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◯有料noteでメディア運営・ライティングノウハウ発信中(webライターとメディア運営者の実践的教科書)
image:Andrea De Santis
*1 McKinsey says ‘about half’ of its employees are using generative AI
*2 ChatGPT Explained: A Normie’s Guide To How It Works
*3 アイデアの作り方 ジェームス・W・ヤング CCCメディアハウス