デール・カーネギーと言う人物がいる。ご存じの方も多いと思うが、「自己啓発書」というジャンルを作り上げた人物の1人だ。(カーネギー・ホールなどで有名な鉄鋼王のアンドリュー・カーネギーとは別人)
彼の代表的な著作「人を動かす」はベストセラーであり、日本国内で430万部、世界で1500万部以上が出版され、発売から70年近く経った現在でも売れ続けている。
「自己啓発書」を嫌う人も多いが、カーネギーの本が売れ続けているという事実は、現代には自己啓発書が必要とされていることの証である。
昔は良くも悪くも、「考え方」や「悩みへの対処」といった、宗教が担っていた分野を現代は「自己啓発書」が代替するようになったのだろう。そういう意味では、この本は宗教の原典やカウンセリングなどと比べて何の遜色もない。
さて、カーネギーの代表作は上で紹介した「人を動かす」だが、もう一つ有名な著作が「道は開ける」である。そして、その主題は「どうやって悩みを克服するか?」だ。
悩みのない人はいない。人間が知恵の実を食べて以来、悩みは人間の精神の最も根本的な現象だ。それに対してスポットライトを当てた本である。
さて、この本は全部で8章から成り立っている。1章から順番に、以下のようになっている。
1.悩みに関する基本事項
2.悩みを分析する基礎技術
3.悩みの習慣を早期に絶とう
4.平和と幸福をもたらす精神状態を養う方法
5.悩みを完全に克服する方法
6.批判を気にしない方法
7.披露と悩みを予防し心身を充実させる方法
8.私はいかにして悩みを克服したか
この本は約450ページに渡る長編であるが、彼が述べている「すべての悩みを解決する方法」はただひとつである。
彼はローマ皇帝、マルクス・アウレリウスの言葉を引用し、こう述べている。
”「われわれの人生とは、われわれの思考がつくり上げるものにほかならない」
愉快な考え方をすれば、私達は愉快になるだろう。
惨めなことを考え始めたら、惨めになる一方だろう。
恐ろしいこと思い浮かべれば、恐ろしくてたまらなくなるはずだ。
病的なことを考えれば、病気になるにちがいない。
失敗するのを気にしたら、まちがいなく失敗してしまう。
自分ばかり可愛がれば、他人から敬遠され、皆が寄り付かなくなるだろう。”
この本には、極端なことを言ってしまえばこれしか書いていない。
要は、「悩みなんて、気にするな。気にするから悩むのだ」という禅問答のような回答だ。
しかし、確かにこれは本質である。病気になっても明るく生きることはできるし、お金がなくとも豊かに暮らすことはできる。
要はそれを良しとするかどうか、というだけだ。
読者諸兄はどのように感じるだろうか。上の一文だけで説得されるだろうか?そうでないならば、450ページのこの本を読んでも良いかもしれない。
厚すぎる本と思うだろうか?でも安心して良いと思う。この本は説得された時点で、どこで読むのをやめても大丈夫だ。
10ページの時点でやめても、200ページの時点でやめても、450ページの時点でやめても、ずっと同じことが事例を変え、繰り返し書いてある。自分にピンとくる事例が出てくれば、それでオシマイなのだ。
ちなみに私がピンときた事例は以下の事例だ。
”ナポレオンやヘレン・ケラーも、ミルトンの言葉を完全に実証している。ナポレオンは多くの人間が熱望するもの-栄光、権力、巨万の富-をことごとく手に入れたけれども、セント・ヘレナでは「私の生涯で幸福な日々は六日もなかった。」と言ったのである。一方、盲目で半聾唖のヘレン・ケラーは「人生とはほんとうに美しいものだと思います」と断言している。”
人生は気持ち次第、好きなことを気持よくしよう。
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