この記事で書きたいことは、大筋以下のような内容です。

 

・「勉強出来ない教育ママはとにかく塾に通わせたがる」的な話を読みました

・塾で全てが解決するわけではないのはまあその通りなのですが、マウントと煽り主体で「じゃあどうすればいいねん」という話を置いていき過ぎだなとも感じました

・塾が有効に動作しない時、その原因になるのは多くの場合「タスク管理不足」です

・人類はマルチタスクが苦手でして、その為タスク管理やタスク整理の練習を積まないといけません

・子どもに「勉強する気を起こさせる」ことは大抵の場合極めて困難ですが、勉強をするインフラを整え、タスク管理の技術習得を手伝ってあげることは出来ます

・どうすればいいの?→大きく三つあります。「広い机を用意して」「タスク可視化とタスク整理用のインフラを作って」「当初はなるべく子どもと一緒にタスク整理をしてあげましょう」

・ただ、その上で「三歩進んで二歩下がる」という子どもの特性と、「育児に一般解は存在しない」ということも頭に入れておくべきですよね

 

以上です。よろしくお願いします。

さて、書きたいことは最初に全部書いてしまいましたので、後はざっくばらんにいきましょう。

 

先日、こんなまとめを読みました。

「勉強できない教育ママ」の1番マズい点は、学生時代に勉強できる子達が多い環境にいなかった事。→「ほなどないしたらええねん」

 

「勉強出来ない教育ママ」という存在を仮定して、それに対して「「勉強が出来る」ということについてのイメージがないので、習い事以外の環境の整え方を知らず、塾に通わせればそれで良しとしがち」という主旨で喝破しようとする内容の記事ですね。

 

正直、このまとめについては賛同出来る部分もあれば賛同し辛い部分もありまして、仮想のサンドバッグに対するマウント会場という風情もあり、あまり建設的な意見のやり取りになっていないなあ、と思ったんです。

「教育ママ」という言葉はヘイトを集めやすいものですが、実際そこを気持ちよく非難しても育児のハードルをあげるだけで何も解決しないよね、という所感です。

 

記事の後半部分では、当初の主旨からすれば本質的な話ではない「パパの不在」という話を持ち出して、夫婦間対立を煽ろうとしているような雰囲気もあり、少々煽り度数高めのまとめだとは感じました。

ただ、

というようなご意見もあり、それはもっともだと思ったので、ちょっと私見を書かせていただきたくなりました。

 

「子どもを塾に通わせること」がイコール「勉強の環境を整えること」ではない、というのはまあ大筋その通りでして、子どもによって塾通いにも向き不向きがありますし、塾に行ったからといって成績が上がるとは限りません。

たとえ塾通いに適性がある子であっても、「塾に通わせ始めたのでこれで安心」という状況は、少なくとも小中学校くらいでは基本的に訪れません。

 

塾を活かす為に何が必要って、まず「タスク管理」が必要なんですよ。

 

以前から何度か書いている通り、しんざきは昔地方の補習塾で働いていたことがありまして、それなりの人数の子を教えましたし、それなりの人数の親御さんとお話しました。

で、親御さんとの意識のギャップが発生しがちな要素として、「塾の勉強は、実は塾では完結しない」という点があるんです。

 

当たり前のことですが、子どもの集中力や理解力には限界があります。

進学塾か補習塾か、受験対策か定期試験対策かというところで多少違いもありますが、塾での一コマの授業はせいぜい一時間から一時間半というところ、その時間内で必要な内容全て伝えられるわけはありませんし、一方子どもたちも聞いた内容全て消化出来るわけはありません。

 

塾の授業は全て「復習をしてちゃんと知識を身につけましょう」というタスクを前提としていますし、塾のテストは全て「ちゃんと直しをして間違ったところを確認しましょう」というタスクを前提としています。

 

「ただ塾に通って授業を聞いてきただけ」だと、成績は上がらないし勉強のやり方も身につかない。塾にもよりますが、宿題のプリントやら配布物やら見直し用のテストやら、まあ子どもはいろいろ持ってかえってくる。

 

で、大抵の子どもは、タスク管理やタスク整理の手法やコツなど知らないので、学校の宿題と併せて「プリントの量が多すぎる」というだけで疲弊して、塾のプリントを机の上に溜め始めるし、親に見せないといけないプリントを机の奥に放置する。

 

そこで親が、単に「塾の宿題やったの!?」「学校の宿題は!?」などと詰めてしまうと、よりいっそう塾や勉強が嫌いになって、ますますタスク着手のハードルが高くなる。

私が何度もこの目で観測した、ひとつの典型的な悪循環です。

 

早い話、「家でもきちんとタスク管理をしないと、塾の教育は有効に動作しない」んですね。これが「塾に行きさえすればそれでよし、というわけではない」の最大の理由です。

 

一言で「勉強が出来ない」といっても色んな状態、色んな段階があるんですが、「やるべきことを整理出来ない」というのは、「勉強が出来ない」という状態の典型的な構成要素のひとつです。

子ども本人に理解力があったとしても、知識を吸収する為の色んなタスクが入り交じって可視化出来ず手もつけられず、結果的にどんどん理解が遅れてしまう、というケース、実際すごーーく多いんですよ。

 

この点、放置すると塾に行くことが逆効果になってしまう場合もあります。学校の授業に集中した方がまだマシ、という状況ですね。

 

***

 

じゃあどうすればいいのか、という話ですがこれもシンプルで、一言で言うと「インフラ整備」です。これに尽きます。

 

これも以前書いたことがあるんですが、子どもに習慣を根付かせようとする時、「言い聞かせる」「叱る」はあまり有効なコマンドではありません。

最強なのは、「自然に動いていると、勝手にそれをやっていることになる」という動線があることですが、そこまでいかなくても「その行動をする為のコストを可能な限り下げる」インフラを用意することは可能です。

 

以下、手前味噌ですが引用します。

「決意する」は無意味。習慣を根付かせるのは「動くと、勝手やれる」ような動線とインフラの整備

ただ、恐らく「習慣を根付かせる方法」として最強なのは、「自然に動くと、勝手にそれをやっていることになる」という動線とインフラの整備なのではないかなあ、と。

 

当然のこと、子どもについてもそれは同じで、親がどれだけ口うるさく言っても、根付かないもんは根付きません。

「〇〇が習慣にならない」と嘆く人は、まず「それをやりやすい動線は確保出来ているか」「自然とそれをやっていることになるインフラの整備は不可能か」ということを考えてみてもいいんじゃないかなあ、と。

で、ほんのちょっと主語が大きい話をするんですが、人類はそもそも「マルチタスク」というものが苦手です。これについては先行研究がいろいろあります。

 

たとえばこちらの記事は、「マルチタスクによりタスク切替のコストが発生し、それは条件によっては40%にも達することがある」という内容の実験と論文について触れてくださっています。

 

要は、「頭の中にやらないといけないことが色々入り混じっていると、人類の処理能力は途端に下がってしまう」ということですね。

これを自然に整理しつつタスク対応出来る人というのは、大人でもSSRクラスの希有な人材であって、子どもではなおのことウルトラレアでしょう。

 

基本的には、頭の中がごちゃごちゃしている状態を何とかするには、まずタスクを可視化、脳の外に追い出して優先付けをする必要があります。それも、なるべく個人の思考任せにせず、機械的に分類出来るようインフラの力に頼る方が望ましいです。

 

以下は、私が補習塾で教えていた頃に紹介していた、その方法の一つの例です。

 

・なるべく利用可能スペースが大きい机を用意する

・プリント整理用のラックを用意して、例えば「未整理」「親に渡さないといけないプリント」「間違えたところを直さないといけないテスト(○○点未満/○○点以上に分ける)」「今週中の宿題」「やり方がわからないので先生に質問しないといけないプリント」などの分類に分けてあげる

・塾から帰ってきたら、とりあえず何も考えず配布物やプリントを「未整理」のラックに突っ込む

・親と相談しながらプリントを仕分けして、どこから手をつけるか決める

・要らないと判断したプリントは容赦なく捨てる

 

この辺は正直色んなやり方があり、子ども・家庭によって何が向くかも様々なので試行錯誤なんですが

「何をしないといけないか、何はしなくて良いかを明確化する」

「それを可能な限り手間なく行える」

というのがまず目指すべき状態なのは確かです。「勉強しなさい」とひたすらいい続けるより、こちらの方が遥かに大事です。

 

とにかく、「未整理のプリント」ってそれ自体「優先度不明なタスクの塊」なので、これを放置していても百害あって一理なしなんですよね。

だから、可能な限り思考せずにこれを整理出来るようになることが、「勉強出来るようになる」の重要な第一歩であることは間違いありません。

これだけで勉強が出来るようになるわけではないですが、「勉強出来る」という状態に持っていく為の必要要件のひとつではあります。

 

場合によってはホワイトボードを使ったり、テキストに付箋を挟んだり、といったルールが有用な場合もあるでしょう。

ちゃんと出来たらご褒美というルールが効果的な子もいれば、やり方さえわかれば自分で出来る、という子もいます。

 

とはいえ、最初のうちは親のフォローが必要というのは大抵の場合間違いなく

「子どもと一緒にタスクの優先順について考える」

「タスクが進められているか適宜声かけしてあげる」

というのは、それ自体大事なタスクだったりします。

 

この辺、塾に通う通わないに関係なく、「タスク管理を身につける為のインフラ作り」というのはどんな場面でも無駄にならないので、まずここから手をつけてみるのはいかがでしょうか、などと考えるわけです。

 

ただ、一つ重要なのが、「子どもの成長は三歩進んで二歩下がる形式であって、物事がすぐ身についたりはしないし、今日できたことを明日には忘れていることも全く珍しくない」という認識です。

 

これを忘れて、「なんで出来ないの!」「なんでやらないの!」と叱ってしまっても、親子いずれも疲弊するだけであまり良い結果を招きませんので、まあ声かけはしつつ辛抱強く見守ってあげるのが良いですよね、と考える次第なのです。

 

以上、簡単ですが私見を述べてみました。

 

とにかく子どもの成長は非線形であって、何が得意か、何が刺さるかはあまり一般化出来るようなものでもないし、昨日出来たことが今日出来ないことも普通ですよ、と。

 

一方、「勉強出来ない」という状態を脱却する時、「まずタスク管理」というのはそれなりに重要な考え方なので、その為のインフラ整備をするのは決して無駄なことではないですよ、と。

そんな話でした。

 

今日書きたいことはそれくらいです。

 

 

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【著者プロフィール】

著者名:しんざき

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。

レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。

ブログ:不倒城

Photo:Ivan Aleksic