私がまだ駆け出しのコンサルタントだったころ、様々な会社に訪れたが、その中で一つ、思い出深いものがある。

 

おそらく、製造業の会社だったと思うが、ある説明会でのこと。

それは、10分から15分程度の短いもので、プロジェクトの意義を、メンバーの一人が、社内向け説明するものだった。

 

ただ、お世辞にも上手な説明ではなかった。

資料も、プレゼンテーションも、よく練られていたわけではなかった。

 

そして、同じことを思ったであろう、参加者の一人が、こんなことを言った。

「説明がわかりにくいんですけど」

 

ちょっと失礼な感じではあったが、当然の指摘でもある。

ところが、そこにいた役員が、「分かりにくいんですけど」と言った人に対して、こう言ったのだ。

「その言い方は良くない」と。

そしてこういった。

 

「説明はもっと練習すべきだし、わかりにくいという点にも同意する。しかし指摘のしかたも良くない。「ここがわかりにくいのでもう少し話をしてほしい」とか、「ここまではわかったけど、次のところが理解できなかった」とか、単に否定するだけなら、子供でもできる。

と言った。そして続けて、

「好き嫌いを言うだけじゃなく、建設的な場にするためにどうすべきか、よく考えて発言しなさい」と言った。

 

 

そして、同じような話を、他にも聞いた。

例えば、採用においてだ。

 

私が聞いた中で、最も記憶に残っているのは

「とにかく、邪悪な人を採用しないようにする」

という、ある経営者の話だ。

 

「邪悪」という強いことばが何を示しているか、最初、よくわからなかったのだが、採用面接を繰り返すうちに、なんとなくわかってきた。

邪悪な人とは、仕事においては「仲間や組織風土に、悪影響を及ぼす人」を指す

 

すぐにマウントを取ろうとする人。

・「別に悪口言ってるわけじゃないよ? 事実でしょ?」

・「今日のプレゼン、内容が薄いよね~」

・「君にはまだ早いかな。もう少し勉強してから提案したら?」

 

妬みと悪口ばかりの人。

・「今回はタイミングが良かっただけでしょ」

・「まぐれで上手くいっただけで、大したことないよ」

・「才能ないよね。」

 

責任を果たそうとしない人。

・「そんな理想ばっかり言っててもね~」

・「私はこの程度なんです」

・「そこまでやるように言われてませんでしたけど?」

・「勉強したくありません」

 

こうした発言の元にある思想は、強い利己性だ。

冒頭に述べた会議で、「説明がわかりにくいんですけど」としか言わない発言者は、その場を、建設的な場にするための努力を怠っている。

要は、幼稚なのだ。

 

 

この類の「幼稚さ」は、救いがたい。

というのも、仕事の能力が足りないだけであれば教育訓練によって、それをカバーできる可能性があるが、利己的な発言は人間性に根差しているので、カバーが非常に難しいからだ。

 

しかも、波及効果が大きい。

例えば、幼稚さの一つの表れが「無礼」だが、無礼な人間が職場にいると、生産性が落ちる。

職場で誰かに無礼な態度を取られていると感じた人は、たとえば次のような行為に出ることがわかった。
・48パーセントの人が、仕事にかける労力を意図的に減らす。
・47パーセントの人が、仕事にかける時間を意図的に減らす。
・38パーセントの人が、仕事の質を意図的に下げる。

 

そしてもう一つ。

幼稚さは、自分自身で気づきにくく、それゆえに基本的には直らないし、直りにくい。

 

自己中心的な人は、自分への指摘を受け取るどころか、それを「自分への攻撃である」と受け取り、ますます意固地になる。

 

実際、冒頭の「説明がわかりにくいんですけど」と言った人間は、役員からの再三の指摘に対しても、

「分かりにくいものを、わかりにくいと言って、何が悪いんだよ。」

という趣旨の発言を同僚に繰り返していたため、会社から追い出された。

 

能力はカバーできるけど、人間性はカバーできない。

採用の時に、「人間性を最も重視すべき」と言われる所以である。

 

 

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登壇者
安達裕哉(ティネクト株式会社 代表取締役社長)
Deloitteで12年以上にわたり大企業から中小企業まで業務プロセス改善コンサルティングに従事。近年はAIによるコンテンツ作成を専門とする。著書に『仕事ができる人が見えないところで必ずしていること』『頭のいい人が話す前に考えていること』など。


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お申込み・詳細
こちらのイベント詳細ページ をご覧ください。

(2026/6/26更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

安達裕哉

生成AI活用支援のワークワンダースCEO(https://workwonders.jp)|元Deloitteのコンサルタント|オウンドメディア支援のティネクト代表(http://tinect.jp)|著書「頭のいい人が話す前に考えていること」76万部(https://amzn.to/49Tivyi)|

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◯note:(生成AI時代の「ライターとマーケティング」の、実践的教科書

Photo:Oleg Laptev