この記事で書きたいことは、大体以下のようなことです。

 

・長女から、「私が「○○面白い」って話をするとすぐ「それつまんなかった」と被せてくる友達がいてちょっと苦手」という話を聞きました

・人の「面白い」を否定することでマウントをとりたがる人、というのはどこにでもいます

・人の「面白い」「好き」を否定するのは敵を作りやすい論法だから気をつけないとな、と思いました

・ただし、ある作品に「つまらない」という感想を持つことは自由ですし、そこを起点に楽しい議論が盛り上がることもあるので、「つまらない」自体を否定して欲しくもありません

・楽しくて建設的な議論とマウント合戦の線引きはなかなか難しいポイントです

・「議論」と「マウント」の線引きをどこにおくか、あるいはコンテンツの楽しみ方について、子どもたちともちょっとずつ話していきたいなーと思いました

 

以上です。よろしくお願いします。

 

さて、書きたいことは最初に全部書いてしまったので、後はざっくばらんにいきましょう。

ちょっとしたことなんですが、子どもと会話して思ったことをそのまま書きます。

 

しんざき家には、子どもが3人います。長男が高校生、長女次女が中学生の双子です。

何度か書いている通り、しんざき家の子どもたちはこぞってゲームや漫画やアニメが好きなのですが、最近の長女次女は「週刊少年ジャンプ」発の漫画・アニメにハマる割合が高いです。

 

現在進行形で一番ハマっているのは恐らく「ハイキュー!!」で、「男子バレー部に入ってセッターになりたい(※長女次女が通っているのは女子校)」と言い出すほどの入れ込み具合なのですが、そこを起点にブルーロックやヒロアカにもハマり始めたようですし、呪術やワンピも以前から好きです。

 

直近では、「以前から知っていた作品が実はジャンプ漫画だった」ということに気付き始めたようで、

「え、逃げ上手の若君ってジャンプだったの!?」

「鬼滅も?斎木くん(※「斎木楠雄のψ難」のこと)も?ワールドトリガーもジャンプなの!?ジャンプすご……」

などと驚いてました。ジャンプすごいですよね。超わかる。

 

しんざき家には大量の小説や漫画があるのですが、「幽☆遊☆白書」も「HUNTER×HUNTER」も置いてないのに何故か「レベルE」だけ置いてあるという、富樫作品においてはちょっと特殊な環境です。そのためか、初めてH×Hを観て「これレベルEと同じ人が描いてたの!?」とびっくりしてました。いたぞ……「レベルEしか知らない富樫ファン」が、我が家には確かにいた……。

まあ、どんなジャンルであれ、「好きなコンテンツ」は多ければ多い程人生が豊かになるので、色んなものにハマってくれればいいんじゃないかなーと思う次第です。

 

それはそうと、長女次女は学校で起きたことも色々聞かせてくれるのですが、最近長女から「ちょっと苦手な友人の愚痴」を聞かされました。

なんでも、「○○面白い!」という話をしていると、決まって「それ私はつまらなかった」と被せてくる友人がいる、というのです。

 

「この前も、「ハイキュー!!」の話してて、「○○くんかっこいい」とか言ってたら、ハイキューつまんなかった、何が面白いのかわかんないって」

「そうなのかー。いつもそんな風に言われるの?」

「んー、いつもじゃないけど、大体。他の漫画の時も言われる」

「漫画の趣味合わないのかな。折角面白いって話してるのに、ただつまんないって言われるのはイヤだよね」

「うん。もやってする」

 

こんな会話でした。

 

正直言うと、この時私、何て返事するかかなり悩んだんですよ。今でもちょっと悩んでます。

頭の中で自分の思考を四捨五入した上で、別段長女が深く悩んでる様子でもないし、漫画の話以外ではその友人との関係も悪くなさそうだったので、一旦ゆるく同意するだけにしました。

 

ただ、この話ってテーマとして結構難しくて、幾つか考えるべき要素を内包していると思うんです。

 

私が悩んだ要素は、大筋以下のようにまとめることができます。

・あるコンテンツを「面白い」と思うか「つまらない」と思うかは人それぞれであること

・ただ、「面白い」に対して「つまらない」を被せることでマウントを取る論法は敵を作りやすい、ということ

・ただし、長女の友人の意図がそこにあったのかどうかは私には分からないこと

・「面白い」と「つまらない」を語り合うことで、楽しい議論ができることもある、ということ

・その線引きをちょっと会話しただけで伝える自信はないので、おいおい伝えていこう、と考えたこと

 

順番に書きます。

まず、「面白い」「面白くない」というのは完全に個人の感じ方、個人の自由であって、当然それを表明するのも自由だ、という前提があります。

誰かにとって面白いコンテンツが、他の誰かにとっても面白い保証は一切ありません。それは個人の感性にもよりますし、コンテンツに触れるタイミングにも、環境にも、時代や社会情勢にもよります。

 

例えば「ドラゴンボール」は言うまでもない大名作ですが、今、一からDBを読んで「古くさいし全然面白くなかった」と主張する人がいてもそれは仕方ないし、文句をつけるようなことではないでしょう。

基盤となる「冒険活劇」や「強敵との戦い」を面白く感じるかどうか、というのはもちろん好みによりますし、鳥山先生の絵柄が合うかどうかも感性次第です。暴力的な表現がそもそもダメ、という人だっているかも知れません。

 

更に、「先達コンテンツの影響を受けた漫画」を読んできた人が、その先達に出会った時、新鮮さを感じられるかどうか、という問題もあるでしょう。

実際、例えば大量のDBフォロワーに触れた後、改めてDBを読めば、私だって多少は「面白い」と感じる度合いを下げてしまうかも知れません。

読む人、読む時によって面白さは変わる。それは当然です。

 

その上で、他人の「面白い」に対して、「つまらない」を被せることで精神的マウントを取りたがる人というのは確かにいるし、戦争を避けたいならそこは避けた方が無難かもな、とも思います。

しんざきは2004年から、大体20年くらいブログを書いています。その過程で、色んなコンテンツについて「この漫画面白い!!」とか「このゲーム面白い!!」と主張してきました。

 

で、ありがたいことに色んな反応をいただくんですが、「お前こんなつまんないコンテンツのが好きなの?」といった、「相手の「面白い」を否定することで、自分が精神的優位に立とうとしている」ように思えるコメントをぶつけられることも、時にはあるんですよ。

 

つまり、「相手が好むもの」「相手が好む要素」を低レベルなものだと断じることで、自分の方が立ち位置が上なんだ、と示すようなマウントですね。

自分の感性の方が相手よりも優れていると表明する、悪役お嬢様的には「そんなつまらない食べ物を食べていらっしゃるんですの?」というヤツです。100件コメントをいただいたとして、大体2,3件はそういうコメントがあります。

 

相手が示した論点の粗探しをすることって、論点それ自体を設定することよりは簡単なので、「否定をする」だけで気持ちよくなっちゃう人にとっては格好のエサ場でもあるんですよ。

時には、わざわざファン同士が「面白い!」を語り合っているところに殴り込んできて、「なんでこんなつまんないの好きなの?」などと、全員に喧嘩を売っていく人もいます。ちょっとロック過ぎますよね。

 

ただ、ここが一番難しいところなのですが、ただの「コンテンツに対する批判」「自分の感想や批評の表明」と、「相手を否定することによるマウント」は簡単に切り分けられるようなものではなく、ファールラインが揺れ動く問題でもある、という話があります。

 

上で書いたように、「面白い」「つまらない」という感じ方は人それぞれですし、「つまらない」と表明することも当然自由です。

そして、「つまらない」という言葉の裏で何を考えているのか、正確に読み取れるのはエスパーだけです。その人はマウントをとろうとしているのかも知れませんし、あるいは単に相手の感想を聞いて、自分の「つまらない」という感想をトリガーされただけなのかも知れません。

 

冒頭の長女の話を聞いて、私が深く立ち入らなかったのも、「その友人が何を考えてどんな言い方をしているのかは、長女の話だけだとちょっと分からんな」と感じたからです。

 

これは飽くまで私の尺度なのですが、

・コンテンツに対する批判だけではなく、それを好む相手に対する否定も含んでいる

・コンテンツを否定する論拠が「相手の感想の否定」だけで、その人独自の尺度がない

・ただ相手の感想の否定だけで、「自分は何を面白いと感じるのか」を提示しない

というような要素に当てはまる場合には、「あ、これは精神的マウントかな」と判断することが多いです。とはいえ、これも人によって判断は分かれるかも知れません。

 

更にもう一つ問題として、「面白い」と「つまらない」を語り合い、戦わせることで楽しい議論になること、何か新しいものが産まれる場合もある、ということなんですよね。

オタク談義には、「好きなコンテンツのちょっとした不満について話すと超盛り上がる」という傾向があります。まさに上記した「レベルE」でも触れられていた要素ですが、ネガティブな意見って色んな思考のトリガーになるんですよね。

 

「それはそう」とか、「いやそんなことはない」とか、「お前はこういう要素を見落としている」とか、まあ「つまらない」を起点にして、熱く楽しい議論が始まることだってあるわけです。それを最初から拒絶してしまうのももったいない。

とすると、相手を否定しない範囲で、適度に「つまらない」をぶつけ合うのも、コンテンツを楽しむ上では大事なことだ、と言えるのかも知れません。
長女の会話を聞いて、私は大体上のようなことを考えました。明確な結論が出るような話ではありませんし、今でも悩んでいます。

 

正直、夕食後のちょっとした会話でこれを伝え切る自信はなかったので、今後、色んな機会で少しずつ子どもたちと会話して、ちょっとだけでも何かを得てくれればなあ、と考えています。

一番の前提として、「色んな「面白い」「つまらない」に触れることで、人生は何十倍も楽しくなる」ということは間違いない話で、友人たちとも楽しくコンテンツ語りをしながら、色んな本や漫画やゲームやアニメに触れていってくれればなあ、と思う次第なのです。

 

今日書きたいことはそれくらいです。

 

 

 

 

 

【著者プロフィール】

著者名:しんざき

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。

レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。

ブログ:不倒城

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