リクルートではカルチャーとして、何かを上司に相談すると「あなたはどうしたいの?」と聞かれるという。

私が所属しているコンサルティング会社でも、同様のカルチャーがあり、

「で、安達さんはどうするの?」

「安達さんはどう思う?」

と、上司に何度も言われた記憶がある。

 

実際、自分の意見を持ってない状態で、上司に答えだけ求めるようなコンサルタントは

「使えないやつ」認定されて、キャリア的にも厳しい。

 

まあ、そうだろう。

「上司が出した案をそのままやるだけ」

の社員を、客先に行かせたり、出世させるわけには行かないだろうから。

 

「どうしたいの?」はパワハラ

ただ、この「どうしたいの?」という聞き方。

人によっては、強いプレッシャーを感じるらしい。パワハラだという人もいる。

 

だから、こんなふうに揶揄される。

冒頭のツイートをしたmotoさんも、

上司「キミには、自分の意志はないの?ただ言われたことだけやって、いざとなったらどうしたらいいですか?って、それ仕事していて楽しい?自分の意志がない仕事なんて、やってて楽しくないでしょ?」

と詰められた話を書いている

 

このギャップがなぜ生じるのか、といえば、非常にシンプルで、

「裁量を持つこと」に対する態度が、人によってかなり異なるからだ。

 

仕事において

「できるだけ責任を持ちたくない ≒ できるだけ裁量を小さくしたい」

と考える人と、

「大きな責任を引き受けたい ≒ 裁量を持ちたい」

と考える人が両方いる。

 

そして、できるだけ責任を持たず、できるだけ裁量を小さくし、あるいは、できれば仕事をしたくない、と考える人にとって、

「あなたはどうしたいの」という質問は苦痛以外の何物でもない。

 

「早く答えを教えろよ……仕事したくないんだからさ」

という人に、「どうしたいの」などと聞いても、「(知らねーよ)」で終了だ。

 

だから、こういう質問は、

「仕事にやる気と向上心があって、年収1000万円以上の給料をもらっている人」

に対してするべきであって、

「特に仕事が好きでもない、早く家に帰りたい、年収が400万円の人」

の人に要求するべきものではない。

 

彼らは、「どうしたい」を決めるべき給料をもらっているわけでもなく、また、それを決めたいわけでもない。

だから、そうした期待をされても困る、と思っている。

 

そういう人たちに、「リクルート」の話を聞きかじって、「どうしたいの」と言っても、白い目で見られるだけである。

「聞くべき人を間違えた」

ということだ。

 

そもそも、多くの人は「仕事でやりたいこと」なんてない

そもそも、多くの人は「仕事でやりたいこと」なんてない。

ちょっとカッコよく見えて、楽に高い給料が貰えれば、仕事内容なんて、(よほどのことでない限り)なんでもいいのだ。

 

例えば、日本財団の調査では、18歳の若者が「企業選びで重視すること」のトップは、

1.給与や待遇が優れている 52.6%

2.福利厚生が充実している 35.7%

3.希望する業界である 33.2%

4.ワークライフバランスが充実している 31.0%

となっている。

自己実現とか、やりたい仕事とか思っている人は、多少はいるだろうが、基本的には少数派だ。

 

逆にそういうことを「本気で」考えている時点で、「意識の高い」「仕事に前向きな人」と判断して良いかもしれない。

 

もちろん、企業はそういう人を求めているのだろうが、この採用難の時代に、大した給料も払っていない人に、そういうことを求めるのは厳しい。

いい人材は、金がかかるし、安く使える人たちに、「考えてうごく」ことを過剰に期待するほうが間違っている。(やってくれる人もいるけどそれは例外)

 

多くの人は仕事を「何をやらないとマズいか」だけで判断している。

こういう状況であるから、多くの人は

「どうしたいの?」

と聞かれても、答えは唯一つ。

そんなことはどうでもいいから、何をやらないとマズイのかを早く教えろ」

と思うだけだ。

 

そういう場合は、望み通りにしてあげるとよい。

文字通り、「何をやると給料がもらえて、何をやらないと罰されるのか」を伝えるのだ。

 

この際、「自主的に」とか「自ら考えて」とか、そういうのは忘れる。

彼らが仕事に対して、最優先に考えているのは、「何をすれば、給与が滞りなくもらえるか」だけなのだから。

 

逆に言えば、「何をやりたいのか」を「(かっこつけではなく)本気で」きちんと伝えてくるような部下は、鍛えれば幹部になれる素養がある。

貴重な人材だ。

 

あるいは、「やりたいことなど ない」と言っていた人も、時がたつと変わることもある。

そういう時にはじめて、「どうしたいの」と聞けばよいのだ。

 

*

 

なお、「学歴」と「やりたいことがある」ことは、あまり関係がない。

前者は認知能力に関する話であり、後者は非認知能力に属する話である。

賢い人であっても、仕事でパッとしないことが数多くあるのは、そのためだ。

 

マネジメントやコミュニケーションは常に、「相手が中心」になる。

相手に成果を求めるのであれば、「彼らの考えていること」から、始めねばならない。

 

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【著者プロフィール】

安達裕哉

生成AI活用支援のワークワンダースCEO(https://workwonders.jp)|元Deloitteのコンサルタント|オウンドメディア支援のティネクト代表(http://tinect.jp)|著書「頭のいい人が話す前に考えていること」88万部(https://amzn.to/49Tivyi)|

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Photo:Nejc Soklič