最近相談されることの多い、経営上の悩みの1つが「上司が部下を育てられなくなってきている」という悩みだ。最近立て続けに同じような悩みを持つ経営者にお会いして、状況を聞くと、概ね次のような状況だ。
経営者は言う。
「上司が育成したくない、というわけではないんだよ。もちろん、育成していない、というわけでもない」
「ではどのような状況なんでしょう?」
「いや、育てられないんだよね。部下を。」
「どういうことですか?」
「あまりはっきりいいたくないのだが…要するに、彼らの持っていた知識やスキルが、既に役に立たなくなっていて、部下に教えても大して仕事の役に立たない、ということがたくさんあるんだよ。
逆に、仕事で必要なスキルは、若い子たちのほうが遥かに強かったりする。技能の逆転が起きているんだよね。」
どうやら、想像以上に上司の持っていた知識の陳腐化のスピードが早いようで、若い子たちは「上司はガミガミ言うだけの、スキルも知識もない、うるさいだけの存在」とみなしている向きがある。
経営者は続ける。
「例えば、営業のような伝統的な職種も、例外じゃないんだよ。相手の担当者も若くなっているからね。SNSの話や、マーケティングの話についていけなくなっている。
お客さんとの情報共有もクラウド上で行っているようなんだけど、正直上司の中にはかなり苦労している人もいるみたいなんだよね」
「営業は、対人スキルが重要なのでは?」
「相手が年配だとそれでもいいんだけど、相手が若いと、「こんなことも知らないの」とスタートラインにすら立てない感じだね。ベテランのヒトはなかなか新しいスキルを身につけようとしないし…困ったものだよ」
技術や知識の陳腐化のスピードが極めて早い現在、前線から3年ほど遠ざかっただけでも、現場の恐ろしいほど早い変化について行けなくなる人が多いという。
実際、「下積みが無意味」と考える人の増加は、このような状況を反映してのことだろう。「何年も頑張ってスキルを付けても、結局陳腐化するのであれば、割にあわない」と考える人が増えるのは当然だ。
これは年配の方々だけではなく、産休などで前線を離れた女性にとっても深刻な問題だ。例えば、日本女子大学は、「リカレント教育」という再就職支援プログラムを作り、そのような女性の方々に対する支援を行っている。
日本女子大学リカレント教育課程は、大学卒業後に就職しても育児や進路変更などで離職した女性に1年間(2学期)のキャリア教育を通して、高い技能・知識と働く自信・責任感を養い、再就職を支援するプログラムです。
社会の変化に対応した新しいあなたの発見と、充実したキャリア(生き方)を応援します。
文科省によれば、リカレント教育へのニーズは高まっているという。
年配だからといって、最新の知識やテクノロジーに疎くて良いという言い訳は、もはやあり得ない。「長年培った技能」の陳腐化のスピードは、今後ますます早くなるのだから。
(2024/3/13更新)
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