仕事の効率化を進めなければ、と言われる。部下や後輩にもそのように指導するひとが多いだろう。

だが実際に「仕事を効率化するにはどうすればいいですか?」と無邪気にも後輩に聞かれて、何を伝えればよいのだろうか、と考えるとこれは結構難しい。

 

それは「効率化」というキーワードの意味をよくわかっていないからではないだろうか。

私はあるシステム会社で、「効率化とは何か」について教えていたマネジャーの話を聞き、そのことを学んだ。

 

 

まず効率化とは何か。

誤解が多い領域だが、これは、同じ仕事を「早くできるようになる」ではない。

早くできるようになるのは、効率化の一つの現れではあるが、効率化そのものではない。速さを目的とすると、動作が雑になるなど、効率化がうまくいかないことがある。

そうではなく、本質的には効率化とは、「考えなくてもできるようにすること」である。

 

上記のマネジャーは、プログラミングの効率化は、「プログラムを早くすること」を目的とするのではなく、「考えなくてもプログラミングできる部分を増やせ」と言っていた。

具体的には、マニュアル化、モジュール化、関数などの暗記、パターン化などである。

 

 

 

例えば、経費精算という仕事がある。

レシートや領収証を毎月末に一つ一つ確認して、どの費目に当たるかを確認し、合計して算出するという仕事だとしよう。

まず効率化されてない状態だとどうなるか。この場合、月末に全てレシートを見て、どの費用なのかを確認しなければ

ならない。つまり、都度考えなくてはいけない。

 

これを効率化された状態にするにはどうしたら良いか。様々な方法があるが、手間の掛からない方法として

財布に幾つかのポケットがあるものを用意し、交際費ならこのポケット、事務用品費ならこのポケット、と予め決めておけば、月末の仕分けは無くなる。

つまり、考えなくて良いのだ。生産のスピードもアップし、ミスも少なくなることだろう。

 

 

他にも、「メールを書く」にも適用できる。

よくある手法だが、予め幾つかのパターンをメールのテンプレートに登録しておき、

・お礼メール

・日程調整メール

・会議の議事録メール

・問い合わせ対応

などは考えなくても、定型文を埋めるだけで返信できるようにしておくと、考えなくて良くなる。

 

もちろん営業など、非定型業務にもこのような発想は大事だ。毎回「営業のトークをどうしようか」と考えるよりも

・アイスブレイクのシナリオ準備

・顧客の要求の聞き取り項目の決定

・当社の提案パターンの用意

・ニーズのすり合わせ時、交渉すべき項目

・顧客に刺さる強みのアピール項目

・質問の想定問答

・スケジュールの雛形

という形で、ある程度営業を「考えなくてもできる」ようにしておけば、準備に必要以上に時間をかける必要がない。つまり「早くやる」のではなく「考えなくてもできるようにする」のが、効率化だ。

 

 

効率化は非常に大きな3つのメリットがある。

1つは、処理が早くなること。

考えなくてもなめらかに動作ができることで、処理能力は格段に向上する。「なんであの人、あんなに仕事が早いの?」と言われている人は、「早くやっている」のではなく、「考えなくてもできること」が多いから、仕事が速いのだ。

 

2つ目は、より高度なことが実現できること。

ある一定のことが自然にできるようになると、更にレベルの高いことに自分のリソースを使えるようになる。

例えば、補助輪なしの自転車に自然に乗れるようになると、長距離を走ったり、悪路を走ったり、アクロバットができたりと、より高度なことにチャレンジできるようになる。

 

昔から読み・書き・そろばんは習い事としてスタンダードだったが、そのゴールは、読むこと書くこと、計算することを、無意識できるようになるまで習熟することだ。

無意識に読めれば、情報収集のスピードは恐ろしく早くなるし、考えをまとめるときに書くことでうまくまとめられる。いちいち筆算をしなくても大きな桁の計算ができるのは、算盤が人間の計算能力を効率化するからだ。

 

プログラミングでも、スポーツでも、ブログを書くことも、計算も、読書も、みなある程度の動作を「考えなくてもできるようになる」ことによって次のレベルに到達できる。

 

3つ目は楽になること。

「考える」は非常にエネルギーをつかう行為であり、疲れる。「考えなくてもできる」のは、非常に楽な状態だ。楽になれば、より質の高い生活を送ることができる。

「名人、達人は力まない」と言うが、スポーツにかぎらず、ブログを書いたり、プログラミングをリラックスして行うことができる状態は、充実感を生む。

 

 

 

実際、このように「考えなくてもできる」ようにするためには大別して2つの方法がある。

1つはマニュアル化・パターン化・モジュール化などにより「ノウハウを再利用できるようにする」こと。

そしてもう一つは反復練習だ。

「達人になるには1万時間の練習が必要」とマルコム・グラッドウェルは言った※1が、それは世界のトップレベルでの話であり、実務レベルで「考えなくてもできるようにする」ためにそれほど時間は必要ない。

 

きちんと動作や作業を定義すれば、簡単な作業なら1日、高度なものでもせいぜい3カ月から1年もあれば十分であり、だれでも「効率化」を行うだけで、生活の質はぐっと上がるのだ。

ぜひ「考えることに時間を使っている仕事」を探して、効率化してみてはいかがだろうか。

 

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