フリーランスになりたいのですが、という相談をたまに受ける。大抵の場合は「やめたほうがいい」と申し上げる。

というのも、フリーランスは幾つかの「条件」が揃っていないと、生活に困ってしまい、結局サラリーマンに戻らざるをえないからだ。

その条件とは、次のものである。

 

 

1.安定した、当面の仕事をくれる人がいる

「貧すれば鈍する」は本当だ。月に20万円程度の「安定した当面の仕事をくれる人」がいない時にフリーランスになるのはおすすめできない。理由は2つある。

・貯金が徐々に減っていく時の焦りで、すぐにお金になること以外に時間が割きにくくなる。

・「単価の安い、納期の短い、条件の悪い仕事」でも、受けざるをえない。

こうして、フリーランスは「カネがない⇒条件の悪い仕事でも引き受けてしまう⇒時間がなくなる⇒良い案件を開拓する時間がない⇒ますますカネがなくなる」という悪循環に陥っていく。

 

余談だが、当面の仕事をくれる人がいなくとも、「実家が金持ち」「パトロンがいる」であれば問題はない。昔の芸術家、作家などにはこのパターンが良くあった。例えば太宰、漱石、などは金持ちの息子だった。

多少でもお金に余裕があれば、新しい事をする活動にも時間を割く余裕ができる。

 

 

 

2.以下の技術がある

会社勤めをしていると気づかないが、フリーランスの人は思ったよりもたくさん存在している。

そして、彼らは基本的にはカメラマン、ライター、デザイナー、システムエンジニア、あとはコンサルタント・講師をやっている。要するに、アウトプットがすぐに売れる技術があり、それを生かしてフリーランスをやっている、という当たり前の話だ。

逆に言えば、フリーランスはこれ意外の職業ではほとんど見たことがない。多分ニーズがないので、食べていけないのだろう。

したがって、上の5つのどれかにおいて、「人より優れた技術」を有していない場合は、フリーランスはおすすめできない。

 

 

3.有名企業に所属していた(または関わっていた)ことがある

フリーランスが仕事をもらう場合に最も難しいのが、「信用問題」だ。

知り合いから仕事をもらっているだけではいずれネタが尽きるため、どうしても顧客の新規開拓は必要になるが、その際にある程度の「肩書」が重要になる。

そして「有名企業に所属していた」という肩書は結構重視される。面白いことに、ベンチャー企業ですら「有名企業にいた人」の方を信用する。人脈や仕事の進め方などを見た結果なのかもしれないが、まあ、これが現実なのだ。

 

 

4.見せられる「実績」がある。

ライターやカメラマン、エンジニアなどは「実績」が命である。実績のないフリーランスは信用されないし、安く買い叩かれる。

独立前にある程度の「実績」を作り、そしてアピールすることは、webを使えば誰でもできる。できるだけ多くの「自分のサインが入った作品」を、世の中に送り出しておかなくてはならない。

 

 

5.人に好かれる

世の中には、「嫌なヤツ」には仕事を出さない人が圧倒的に多い。これは合理的、というよりも感情的な問題だ。したがって「圧倒的に好いてくれる人」が何人か居ることが、フリーランスとしてうまくいくための最初の条件である。

ただし「万人に好かれようとするヤツ」もまたダメである。「媚びを売るような人物にはいい仕事はできない」と思っている人は多く、その上だれにでもいい顔をしていると、そこに付け込まれて破綻する。

「面倒な仕事はあいつに押し付けちゃえ」という発言を、私は何度も聞いた。これは会社と同じなのだろう。サラリーマンであれば助けてくれる人もいるが、フリーランスはそんなに都合よく助けてくれる人はいない。

 

 

 

 

上に書いたことは「現実」として存在する。だが、私は「だからフリーランスになるのをやめろ」という気は毛頭ない。

実際、私の父も数十年の間、フリーランスだった。また、今後は「半分サラリーマン、半分フリーランス」のように仕事をする人が本当に多くなると考えているし、実際に増えている。

 

しかし、現実を把握せずに「なんとなく勢いで」でフリーランスになるのはよっぽど運が良くなければ成功できない。現実を直視し努力を続ける人物のみに、明日はある。

 

 

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(2025/3/18更新)

 

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