採用を手伝っていると、ほんとうに様々な人にお会いする。
様々な経歴、様々なスキル、人は本当に多種多様だな、と感じる。
そして、その中でご縁があった一部の方に仲間として加わっていただく。
「仲間」として加わっていただくかどうかの判断は、大抵の会社で3つのことを行って吟味する。
1つ目は経歴の確認、2つ目は筆記試験、3つ目は面接だ。
中には筆記試験をやらない会社もあるだろうが、経歴の確認と面接を行わない会社はないだろう。
さて、多くの方にお会いする中で、一つ困ったことがある。それは「うつ病」の病歴がある方の扱いだ。
特に最近は多い。
私の感覚だと、5人に一人位は「このブランクは何?」と思う様な経歴の方がいる。
そして、経歴を見て一定期間ブランクがあったり、履歴書に書いてある退職の理由が「過労により」であったりすると、私が知るかぎりでは大抵の会社では面接でそのことについて尋ねる。
最初私は「面接で病歴について尋ねるのは違法なのでは?」と思ったが、そうではないようだ。
様々な弁護士のQ&Aを見ると、ほとんどが、「精神疾患の既往症の確認はOK」としている。
また、ほとんどの弁護士は採用活動時ここ数年の精神疾患の既往症があるか?への回答を文書でもらうようにアドバイスしている。
この場合、嘘をついて既往症を申告しなかった場合、解雇がやりやすくなるようで、企業も入社前にうつ病の既往症のある人物をフィルタリングしようとしているのは明らかだ。
そして、会社、特に中小企業はうつ病の既往症のある方を雇うことにはかなり消極的である。
ほとんどの中小企業経営者はうつ病の既往症があるだけで、「とりあえずリスクを回避するため」に、不採用としていると感じる。
ある経営者が言っていた。
「うつ病にかかったことのある人なんて、怖くて雇えないです。以前一人うつ病の方が社内にいたのですが、私達は最初彼のために時短勤務にも応じましたし、休職も認めました。もちろん、復帰してもらうように願っていました。
でも、一旦復帰してもまた2ヶ月ほど経つとまた会社に来なくなったり、遅刻がちになったり、段々と職場の雰囲気が悪くなって…。で、本人に確認したんです。「どうしたいんだ」って。すると、本人も「わかりません」って言うんです。結局、彼は自主退職しました。それ以来、うつ病にかかったことのある方を採用しないようにせざるを得ませんでした。」
また別の会社で、一人の方が募集を見て面接を受けに来た時のこと。こんなやりとりがあった。一通りの質問が終わった後、面接官の一人がこんなことを聞いた。
「このブランク期間は、何をしておられましたか?」
「その前の職場でかなり忙しく、体を壊してしまいまして…休養していました。」
「1年間、療養していたということですか?」
「そうです」
「病名は何ですか?」
「いわゆる、うつ病です」
「わかりました。ありがとうございました。」
この応募者は、筆記では高い能力を示していが、採用されなかった。
経営者も多くの方は「切り捨てる」という発想ではない。できるかぎり助けてあげたい、と思うのが人情である。
しかし、企業の体力からして「ウチで雇うのは難しい」と考えているようだ。
このような人々はどうすればいいのだろうか。
仕事~働くための支援、休職からの復帰支援など~
障害をもつ人たちが働くための様々な支援があります。働きたいけれど不安があるとき、どこに相談すればよいのかわからないときに利用しましょう。
(みんなのメンタルヘルス 総合サイト)
このような支援制度は、ハローワークなどに相談窓口があるそうだ。
しかし、事情を知る方から話を聞くと、「きちんと相談に乗ってくれるかどうかは、担当者によりますね」という。
その方はまた、こういうことも言った。
「ソフトバンクのグループは、メンタルヘルス対策にかなり力を入れているようですよ。うつ病復帰プログラムというものがあって、臨床心理士が相談に乗ってくれます。実績もあって、6割の人はキチンと職場復帰できるそうです。面白いことに、その3分の1の人は、以前よりパフォーマンスが高くなるそうです。」
6割を高いと見るか、低いと見るかは人によるだろうが、人をたくさん抱える企業はメンタルヘルスに気を配るところも少しずつ増えているのだろう。しかし、「うつ病は甘え」と言い切る方もまだ少なくない。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
・筆者Twitterアカウント安達裕哉(人の能力について興味があります。企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働者と格差について発信。)
筆者Facebookアカウント https://www.facebook.com/yuya.adachi.58 (最新記事をフォローできます)