昔、非常に腕利きの管理職がいた。実際、彼がトップに就任してから、その部署は数年で過去最高の業績を出し、それを更新し続けた。

 

彼のマネジメントは特徴的だった。

彼は、部下のことを全く顧みなかったのだ。彼が興味があるのは、徹底して部署の業績のみ。彼は自分が部下にどう思われているかも全く意に介さなかったし、部下の話を聞きもしなかった。

 

だが、彼は部署の有能な人々からは恐ろしく信頼されていた。彼は嘘をつかず、徹底して合理的であり、成果を追求し、そして結果を出したからだ。

逆に無能な人々からは嫌われた。

彼は仕事をとりあえず与える。そして彼らの活動を見る。彼は手抜きや、約束を破るもの、言い訳をするものを決して許さなかった。そして、そのようなことをした人間にはロクな仕事を与えなかった。

「怠けたい奴らは、適当に仕事をあてがっておけばいい。こっちの邪魔さえしなければいいんだ。」

要するに、その管理職は無能な人間がいないがごとく振る舞った。

 

もちろん、中には態度を改める人物もいた。

彼は成果が出ずとも改善を続ける人物には何回かのチャンスを与えた。彼は努力する限りは、彼らを「戦力」とみなした。

が、変わることのできない人物、無能な人物は、何年かするうちに、やめていった。

 

彼はまた「成果に応じた処遇」を徹底した。結果が出れば、報酬を弾み、結果がでなければ、給与を減らした。そこには感情的なものはなかった。

ただあるのは。公正な処遇だけということだけであり、彼の厳しさは他のマネジャーの中でも際立っていた。

 

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ある時、彼は新人に仕事を与えた、

「この仕事、どれくらいでできる」

「一週間でなんとか。」

「本当に一週間でできるのか。これは約束だぞ」

「はい。」

だが、その仕事は新人が想像するよりも困難な仕事であり、結果は出なかった。期限を迎えた日、新人はその管理職に「無理でした」と報告した。

その管理職は静かに言った。

「なぜやりきらなかった。」

「申し訳ございません、見積もりが甘かったです」

「違う、俺が聞いているのは、なぜ結果が出るまで、限界までやらなかったのかと聞いている。お前は俺が「できませんでした」で許すとでも思ったのか?」

新人は管理職の厳しい言葉に凍りついた。

「す、すみませんもう一度やらせてください。」

管理職は「ダメだ。これは、お前には無理な仕事だ。オマエには頼まない。」といって、新人からその仕事を取り上げた。

新人は落ち込んでいた。

 

1週間後、管理職はまた別の仕事をその新人に振った。

その新人の仕事への真剣さは、以前とは天と地ほどの差があった。その新人は「真剣にやるとはどういうことか」を学んだのだった。

そして、仕事は無事終わった。管理職は「よくやった」とだけ言ったのだが、新人は、心底嬉しそうだった。

 

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また、3年目の若手社員がその管理職のもとに配属になった事もあった。

実は、その若手は他の部署で鼻つまみ者だった。なぜなら、自分の実力をあまりにも過信していたからだ。鼻持ちならないその態度は、社内でよくトラブルを引き起こしていた。

そこで上層部が「彼ならなんとかするのでは」と配置転換したのだった。

 

管理職は異動してきた若手にこう言った。

「オマエはトラブルを良く起こすらしいな。」

「私が悪いわけではないですよ。相手が勝手に怒っているだけです。」

「そうか。では仕事をしてもらう。」

その管理職はその若手に早速仕事を与えた。

「どれくらいでできる。うちの連中は3日あれば十分だが。」

「私も3日もあれば大丈夫です。」

「わかった。」

 

そして3日後、若手は成果品を持ってきた。

「できました。」

管理職はそれをしばらく眺めて言った。

「20点だ。赤点だな。」

若手は憤慨した。「いや、これだけやったんだから、20点はあり得ません。」

管理職は若手を睨みつけた。

「このクオリティで、良くプロが名乗れたものだな。こんな仕事で満足しているならオマエこの仕事向いてないよ。もっとぬるい仕事をやるんだな。」

 

若手はあまりの怒りと、恥ずかしさで何も言えなかった。今まで誰からもここまで言われたことはなかったのだ。

管理職は「もういいよ、オマエは役に立たないから、そのへんで雑用でもやっててくれ」と言った。

 

若手はとにかくこの管理職を憎んだ。「こんなに自分に恥をかかせたやつを見返してやる」と、猛烈に勉強をし、仕事をこなした。

だが、数年後に彼が一人前になった頃、彼はその管理職に感謝するようになっていた。

 

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上の新人も若手も、この管理職に対する評価はぴったり一致している。

「好きではないが、感謝はしている。」

それは、管理職に対する最高の賛辞なのだ。

 

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