新卒採用においての、インターンからの直接採用が盛り上がりを見せている。

時に「青田買い」と批判されるインターンからの採用だが、なぜこれほどの盛り上がりを見せているのだろうか。少し前に、ある採用担当者とのミーティングにおいて、直接話を聴く機会があった。

 

「来年は出来る限り全員、インターンから採用したいですね」とその担当者は言う。

「ほう。そうですか。」

「ええ、インターンからの採用ではハズレを引くことが無くなりましたから。」

「詳しく聞かせてください。」

「ウチは中途が中心ですが、新卒採用も年間に数人、やってきました。その時は採用の成功率はまあ、五分五分ってとこでした。」

「そんなもんですかね。」

「やっぱり、面接や筆記だけではわからない部分があるわけですよ。でも、インターンは違います。ある程度長期間仕事をすれば、その人のポテンシャルと言うか、能力はかなりはっきり分かる。で、いい人だけ採用すれば良い。」

「そういうことですか。」

「今は学生さんもインターンに積極的ですし、理系の子も結構参加してくれるようになりました。すると「働きぶり」を見て採用する事ができるわけです。これはかなりメリットが大きいですね。アルバイトからの登用で新卒を確保する、っていう会社がありましたが、合理的と思います。」

「なるほど」

 

担当者は、あたりを見回して言った。新卒が働いている。

「面接であれこれ聞くよりも、実際に働いてもらうのが、一番良いですね。で、学生であってもいい人には裁量を与えて、きっちりお金を払う。学生さんも、下手に就職活動をして時間を使うよりも、実入りはいいわけです。」

「中にはあまり仕事のできない学生さんもいるんですか?」

「それなんですが、結構二極化している感じがします。うちには有名大学の子が結構来てくれるんですが、同じ学校でも上と下の能力差は圧倒的ですね。「この子は、他でも欲しがらないだろうな」って言う子は、結構います。」

「厳しいですね。」

「そうなんです。逆に、できる子は際限なくできますね。中途よりもできるくらいです。そういう子は、年収を高めに提示します。まあ、大したコストじゃないですからね。」

「本当ですか?思い切ったことをしますね。」

「そうですか?欧米ではインターンからの採用が普通っていうじゃないですか。流動性が高い業界では、これが当たり前になっていくと思いますけどね。我々も新卒が「化ける」のを待っていられません。」

「そうかもしれません。」

「逆に、中にはオファーを断る子もいるんですけどね。」

「どういうことですか?」

「まあ、もっといい会社で稼げる、と思っているのかもしれません。あとはもっと大きい会社に行きたい、という人もいました。まあ、それならそれでも良いんですけどね。ウチは安定志向の人は多分あわないと思いますし。でも「いつでもこっちにおいで」って言ってあるんで、大企業に飽きたら来てくれるんじゃないですか。」

 

 

インターンから採用された新人たちにも話を聴くと、確かに有能な人物がそろっていた。「成功」と言わしめるだけはある。

 

一人の新人に「なぜこの会社に決めたの?」と聞くと、

「面白い仕事がしたかったんです。自分を試したくて」

と彼は言った。

 

別の新人は

「大企業で下から徐々に上がっていく、というのはちょっとあり得ないですね。今は会社も守ってくれないみたいですし、安定を求めると逆にリスクが高いですから」

といった。なかなかクールに世の中を見ている。

聞けば、彼らの中でも特に優秀な学生は就職活動が始まる前に既にいくつも内定を獲得しているという。

 

しかし、一方ではインターンで採用されず、別の会社を探すように言われた学生もいる。

「自分の力の無さを痛感しました。正直、同じ歳でここまで違いがあるなんてショックです。」

と、彼は言った。

 

「新卒一括採用」は、終身雇用と年功序列という制度のおかげで、社会の2極化を防ぐことに一定の効果があっただろう。

だが、それは「インターン採用」の盛り上がりと共に、静かに崩れ始めているのかもしれない。すでに多くの知識集約型企業は「ポテンシャル」という曖昧なものから「実力」で新卒を評価したいと考え始めている。

 

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