マネジメントの観点からすると、企業においては4種類の人がいる。
1.上司が何も言わなくても、成果を出す人
口出し無用。できる人なので、有能な部下として活躍する。
2.上司の言うとおりにやって、成果を出す人
簡単な仕事であれば、きちんと上司が仕事を設計し、彼らの仕事をレビューしながら進めれば、結果は出せる。ただし彼らを「上司が言わなくてもできる人」にするためには時間と忍耐が必要。
3.上司の言ったとおりにやっても、成果を出せない人
最初はここからはじまる。仕事を覚えたての時。
そして通常であれば、新人で会社に入ってから、3⇒2⇒1の順番で成長していく。
ところが、この流れから取り残されてしまうのが4.の人だ。
4.上司の言った通りにやらず、成果を出せない人
働かないわけではないのだが、とにかく上司の言ったとおりにやらない。そればかりではなく 妙なこだわりがあり、時間をかけ過ぎたり、指示を勝手に解釈したり、不必要なクオリティを追求したりするので 成果が出ないが、本人はさほど気にしていない。
そして、本題の「聞きにこない」人物はこの4.に当たる事が多い。
実は会社の現場では 「上司に聞きづらい」 とか、 「どうやって聞いたら良いのかわからない」 という人ももちろんいるのだが、実際に多いのは、「上司に聞くべき時に、聞こうと思わない」ことである。
例えば、4.の人と仕事をするとこうなる。
「提案書の下書きができました」
「ああ、おつかれさん……ん??このタイトル、前回の打ち合わせの時と違うようだけど。章立てもちょっと変えた?」
「はい。作っていてこちらのほうが良いと思ったので。」
「ちょっとまて、打ち合わせの時これで行こう、って言ったじゃないか。何で勝手に変えるんだ。」
「ですから、こっちのほうが良いと思ったので。内容を踏まえてです。」
「……おまえなあ、チームで決めたことを「自分が良いと思ったので」で勝手に変えていいと思ってるのか。」
「はい。」
「バカヤロウ!そんなわけないだろう!!報告、連絡、相談が当たり前だ。」
「しかし、この程度のことでいちいち相談していたら、仕事が滞ります。」
「……やりなおしだ。」
「は?」
「やりなおしと言ってるんだ、きちんと前回決めた章立てとタイトルに直して、さっさと出し直せ。」
「しかし……私は今日の夜予定があり……」
「そんなもの知るか、お前が報告しないのが悪いんだろう。もうお客さんへの提出はギリギリなんだぞ。」
「はあ……。」
「オレは、前にも言ったよな。勝手に自分の解釈で仕事をするなと。」
「……。お言葉ですが。「自分の頭で考えろ」といったのは課長です。この通り、自分で考えました。」
「屁理屈を言うな!」
「屁理屈ではありません。自分で考えて、こちらのほうが良いと思ったので、変えたまでです。それとも「自分で考えろ」は撤回なさいますか?」
「お前というやつは……。」
「私は間違ったことは言っていないと思います。私の解釈が嫌であれば 「俺の言った通りにやれ」と、細かいところまですべて指示を出していただけなければ困ります。」
「……。」
課長は困り果ててしまった。 彼は一体どんな指示を出すべきだったのだろうか。
本質的に「聞きにこない人」は
・聞くべきこと
・自分で判断していいこと
の境界線が曖昧なまま働いている。だから、上のようなトラブルを起こす。 しかし、現場だけを責める訳にはいかない。 なぜなら、上司も「自分で考えろ」とか「こんなことをいちいち聞くな」と部下に言っているからだ。
この状況を解決するためには、上司は2つのことを徹底しなければならない。
・上司は現場での判断基準を提示
例えばタイトルや骨子については相談すること、表現や表記のみで内容に関して変更がない箇所は 各自で判断して良い、など。判断基準を提示する。
また、作業指示をする時に部下に質問させ、「〜で作業が止まったら報告せよ」など 幾つか例を上げてすり合わせをしておくと、かなりスムーズに事を運ぶことができる。
・部下に保守的に報告、記録させる
判断基準がない、あるいは逸脱した、と思うときには必ず「上司への問い合わせと、問い合わせ内容の記録」をやるよう要求する。 ここに関しては保守的に考え、「誤解があると困るので、先回りして確認しよう」という習慣をつけさせること。
「こんなことはいちいち聞くな」とは絶対に言ってはならない。いちいち聞かれるのが困るのであれば、基準を提示すべきだ。
「報連相を徹底せよ」というのは、現実的には以上の2点を上司と部下で何度か行い、ある程度の共通認識を形成することだ。
最近ではプロジェクト単位で動く仕事も多いため、必ずしも共通認識が醸成される土壌があるとは言えない。 その場合、どんなことはリーダーに報告し、どのようなことはメンバーが自分で判断して良いのかをあらかじめ詳細に決めなければならない。
プロジェクトマネジメント世界標準であるPMBOKにて、「変更管理マネジメント」が重要な位置を占めているのは偶然ではない。
「たかが判断基準」と思う方も居るだろうが、 実は仕事のクオリティを左右する、かなり重要なポイントだ。心してかかりたい。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
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