コミュニケーションのコツは何か、と問われれば、

「聴くことが大事」

「相手の動作を真似よ」

「共感しなさい」

といった「相手に好かれるためのテクニック」が紹介されることが多い。

 

だが、仕事における、真の意味でのコミュニケーションのコツ、すなわち要諦は

「察してくれ、に甘えないことだよ」と知人であるコミュニケーションマネジメントの研修講師はいう。

「新しい働きかたで大事なのは「好かれるため」のものではなく「コラボレーションするため」のコミュニケーションなんだよ。つまり初対面でも、人間関係がそれほど濃密でなくとも、成果が出せるような。」

「ふーん。」

 

だが「察してくれに甘えない」と一言で言われても、具体的にはあまり良くわからない。

「つまり、どういうこと?」と聞く。

 

「コミュニケーションが不調で、お互いに不信感を持ったり、いがみ合ったりしているプロジェクトやスタートアップって、大抵「察してくれ」が多すぎるんだよ。」

「具体的には?」

「例えば、トップに対して「困ってたら助けてくれるだろ」と思って助けを自分から求めないケース。結果的に締め切り寸前に「すみません、納期を遅らせてもらえませんか」といって揉める。」

「ああ、そういうこと」

「「こっちは困ってんだから上司が察してくれよ」に甘えてる、というわけだ。」

「なるほど」

「ちなみに、このケースの場合はもちろん上司にも非がある」

「なぜ?」

「上司の側も同じく「困ったら相談しろって、言わなくてもわかるよな。察してくれよ」って思っているからさ。」

「ありがちだな。」

「でも、「常識だったらわかるだろ」は、これからどんどん通用しなくなる。なにせ、正社員は減る一方だし、必然的に社外の人や契約社員、場合によってクラウドソーシングを使ったりするからな。「察し」なんてものは過去のもの。」

「そうか。」

「そのかわり、ルールと、契約の重要性が増す。人が人に頼んだり、仕事を一緒にするときにはどんなルールが必要かをきちんと洗い出す必要があるだろうな。で、今そういう依頼が激増中。」

「例えば?」

「社員以外の人にうまく仕事を頼むには?とか、クラウドソーシングの使い方、とか。他社との組み方、とか。」

「なるほど……。」

 

 

コミュニケーション能力の高低は、仕事の成果に顕著に現れることが多い。

そして、長らく日本人のコミュニケーション能力は「察し」というハイコンテクスト文化に支えられてきた。

 

だが「察し」に頼りすぎると、ごく小さなチームのうちは生産性が高いが、徐々にプロジェクトが大きくなるにつれ、人間関係の悪化が原因で、生産性は下がる。

また、同質性の高い集団にしか、ハイコンテクストなコミュニケーションは通用しない。

しかし、日本人は多様化した。会社の中にいるのは正社員だけではないし、世代によっても全く考え方が違うことは、多くの人が痛感しているだろう。

 

そして、そのうちに

「みんな、私のことをわかってくれない」という発言や、

「上司は私の気持を全くわかってくれない」という発言につながる。

 

そしてついに、「察してくれ」が高じると、それは徐々に憎しみに変わる。

なぜ期待に応えてくれない、

なぜ何もしてくれない

こんなチームと会社、最悪だ!

 

というわけだ。

 

——————

 

つい先日、自動車の免許更新にいった。

その講習の中で、「事故防止のためには、「だろう運転」から「かもしれない運転」になりましょう」と言われた。

思い込みによる運転の危険性 ~「だろう運転」から「かもしれない運転」へ~(東京海上日動)

「多分、大丈夫だろう」と自分に都合よく考えて、一方的に安全だと思い込み運転することを、一般に「だろう運転」と呼んでいます。その結果、「まさか、そうなるとは思わなかった」というような、思わぬ出来事が起きることがあります。

 

コミュニケーションも全く同じ。

「だろうコミュニケーション」から「かも知れないコミュニケーション」に。

自分に都合よく思い込まず、相手にきちんと言う、聞く。面倒くさいが、それは「多様性を求めること」の1つの代償でもある。

 

 

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