こんにちは。Relicの北嶋です。今回は弊社の事業テーマの1つ「イノベーション」について書きたいと思います。
(写真は弊社マーケティング責任者の江城)
オープンイノベーションとは何か
「オープンイノベーション」という言葉をご存知でしょうか。
2016年7月に刊行された、独立行政法人NEDOによる「オープンイノベーション白書」が引用する米国研究者ヘンリー・チェスブロウの定義によれば、オープンイノベーションとは以下のような意味となります。
オープンイノベーションとは、組織内部のイノベーションを促進するために、意図的かつ積極的 に内部と外部の技術やアイデアなどの資源の流出入を活用し、その結果組織内で創出したイノベ ーションを組織外に展開する市場機会を増やすことである
(出典:NEDO『オープンイノベーション白書』http://www.nedo.go.jp/content/100790965.pdf)
1980年代から1990年台にかけて、世界を席巻したイノベーションの先進事例は、ほとんどすべて自社内の経営資源、研究開発を、用いた「自前主義」から生まれたものでした。
彼らはいわば「ブラックボックス化戦略」と呼ばれる知的財産管理を優先し、ヘンリー・チェスブロウの言うところの閉じたイノベーション、すなわち「クローズドイノベーション」を推進しました。
しかし、1990年台から、クローズドイノベーションの代表格であるルーセント・テクノロジーやIBMは、自社内で研究開発機能を持たないシスコシステムズやインテル・マイクロソフトに後塵を拝することになります。
なぜこのようなことが起きたのでしょうか。
実は、シスコシステムズはスタートアップへの出資、M&A、アライアンスなど、外部資源を積極的に活用し、新技術の開発と市場化を成し遂げたのです。
近年では市場の不確実性が増すだけでなく、さらに雇用流動性の高まり、インターネットの普及・発達による優秀な人材やアイデアの外部流出等の影響により、大企業ですら「自社で全てを賄うこと」の限界を認識していると言えるでしょう。
したがって現代において「オープンイノベーション」というキーワードは、単なるバズワードではありません。
「アイデアは既存の要素の新しい組み合わせ」といいますが、外部組織と自社が保有する知識を組み合わせ、市場に投入してイノベーションを果たすことは、どのような企業であっても一つのテーマとなりえるのではないかと思います。
現実的に、オープンイノベーションはうまく行っているのか?
さて、ここまでは「キレイな話」です。ここからはリアルな現場の話をしましょう。
実は今現在、世の中で「オープンイノベーション」は活用されているのか、と問われると、まだまだこれからというのが現実かと思います。
なぜならば「オープンイノベーション」を推進し、本当に上手く行っている事例や、新しい事業が立ち上がり、順調に成長しているケースは極めて少数だからです。
例えば、複数の企業がアイデアを集め企業間や個人とのマッチングを行うプラットフォームを運営しています。 一見アイデアがたくさん集まり、盛り上がっているようにも見えます。
しかし、また関係企業の方にインタビューさせていただくと懸念や課題が浮き彫りになります。
これらのアプローチに共通する考え方としては、「量は質に転化する」、もしくはもっと大胆な表現をすると、「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」です。
そのため、こういった活動の多くは、KPIとして「集まったアイデアやプランの数」や「マッチングした件数」等の定量的な部分にのみ重点が置かれてしまっているケースが多くみられ、数は集まったものの、その企業にとって親和性が低い、優位性を作り出せない、企画・設計が不十分であるなど、課題が山積しているケースが多いのも実情です。
そのため、アイデアやプランとしては人目を引きますが、実際に手を動かして事業化するフェーズになると様々な課題や障害が見えてきて、止まってしまうことも多いのです。
したがって、マッチングを主体とした「プラットフォーム型」のアプローチは「量」を集めるという観点では有効ですが、一方で「質の高いものを集める」、「集まったものを正確に見極め、判断する」「精度を高めて実行や実現/成功という出口まで推進する」という部分では不十分であるという課題を抱えています。
逆に「量」を追うのではなく、アイデアを一定のボリュームで絞り込み、集中してプランを磨き上げて精度を高めたり、外部の専門家やコンサルタントをアサインして強力に推進することでオープンイノベーションを促進しようとする企業やプログラムなどもあります。
こういった「コンサル型」とでも言うべきタイプも、一つの重要なアプローチであることは間違いありません。
しかし、アイデア、イノベーションの本質は多産多死。生まれるアイデアやプランの数が絶対的に少なければ、そこから良質な事業が生まれる可能性も自ずと限定されてしまう側面があります。
「量」と「質」の両者を追いかけるオープンイノベーションは可能か
このような状況を鑑みて、我々は1つの問題提起をしました。
すなわち、オープンイノベーションを推進する過程において必要となる重要な機能を網羅するプログラムの実現は可能なのか?という問いです。
そして、この問いに対する私の回答は「おそらく可能」です。ただし、これを可能にするには3つほど条件があります。
1.最適な領域・テーマ設定や、アイデア・プランの「量」につながるデータベース
2.アイデアを定量的な分析も含めて絞り込み、「質」を高めること
3.テストマーケティング、人材や資金の獲得、アライアンス構築や知財設計などの実行
つまり、さきほどご紹介した「プラットフォーム型」と「コンサル型」の両タイプの特徴やメリットを合わせたオープンイノベーションの推進が必要だということです。
ですが、現状の我々の体制やリソースだけでは、上記の条件を満たすことができません。
特に、1.のデータベースに関しては、我々だけで実現することは非常に困難で、それを自前で構築しようとすることは非現実的だったのです。
Relicとして「オープンイノベーション」を体現する
そこで我々自身も「オープンイノベーション」を体現することにしました。
すなわち世界中のスタートアップやベンチャー企業、製品情報や研究情報、投資情報などのデータベースを持つアスタミューゼ社と共同で、オープンイノベーションの促進を促すことにしたのです。
現在、アスタミューゼ社は最新の研究テーマや成長市場、サービス/製品データと、それらに関連するベンチャー企業・スタートアップ企業や大学・研究機関等を国内だけで1万2千、グローバルでは700万に及ぶデータベースを所持しています。
また一方で、我々は前回もご紹介させていただいたとおり、「新規事業やイノベーションの共創パートナー」として、強力に実行・推進することを得意としているのに加え、オープンイノベーションの推進に最適化されたシステムやプラットフォームを開発・運営しています。
この両社の強みを掛け合わせたオープンイノベーション支援を通じた新規事業創出プログラム「〜asta*ENjiNE(アスタエンジン)」は、オープンイノベーションに関するソリューションをワンストップで提供できるプログラムとして、現在私自身が非常に可能性と価値を感じているものであり、実際に多くの企業様からご好評・ご相談いただいています。
最新の研究テーマやサービス/製品データと、それらに関連するベンチャー企業・スタートアップ企業や大学・研究機関、起業家個人のデータを保有するアスタミューゼと、新規事業創出・オープンイノベーション支援サービス「ignition」やクラウドファンディングプラットフォーム「ENjiNE」を提供するRelic社、両社の強みを融合した新規事業創出プログラム「asta*ENjiNE」(アスタエンジン)を企業向けに提供致します。
(プレスリリース http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000016318.html)
我々自身が「オープンイノベーション」を通じて様々な新規事業や新商品開発に積極的に取り組むことにより、その生の知見や経験・ノウハウなども含めさらなる多くの企業の「オープンイノベーション」を通じた新規事業開発を促進する。これが今まさに我々が挑戦していることの一つです。
WEBサイト:株式会社Relic
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