こんにちは。株式会社Relic代表の北嶋です。
今日はHEART CLOSETの代表、黒澤さんとご一緒させていただいています。
というのも、今日の話題が「市場ニーズの測り方」だからです。
新製品・サービスを世に出す時、市場のニーズを掴む目的で様々な調査会社を使うことがあります。
しかし、調査会社を利用して集めたアンケートのデータは、上司を説得することはできるかも知れませんが、「消費者が実際に買ってくれるかどうか」とは別物です。
「この商品、ほしいですか?」と聞かれてYesと答えた人も、「では、実際にお金を出して買ってください」と言われると、尻込みするものです。
「欲しい」と「お金を出す」は、別のことなのです。
したがって、新製品・サービスの「市場ニーズ」を掴みたければ、必ず実際、試しに売ってみる必要があります。
これがいわゆる「テストマーケティング」です。
・お客さんがどのくらいの価格なら買ってくれるのか。
・買う時にどんなことが障害になるのか。
・買った後の感想はどうか
こう言ったアンケートでは取れない「生きた情報」を取れるのはテストマーケティングを置いて他にはありません。
では、実際に「テストマーケティング」をどう進めればよいのでしょう。
HEART CLOSETの事例は、こういったときにかなり勉強になる事例です。
HEART CLOSETは、女性向けのアパレルの製造・販売を行う会社で、代表の黒澤さんが立ち上げました。
黒澤さんはもともと「ゲームグラフィック」を制作する会社を自ら立ち上げて経営していましたが、「ある悩み」がもとで、どうしても女性向けのアパレルをやりたくなったと言います。
それは何か、といえば意外かもしれませんが、
「胸が大きいこと」でした。
といっても「胸が大きいこと」自体が悩みというわけではありません。そうではなく「胸のサイズに合う服がない」ことが悩みだったのです。
黒澤さんは「胸のサイズに合わないので、服を選ぶことが大キライだった」と言います。
私自身、胸が大きく、普通の店舗で販売している服をほとんど着られません。小さめの服を無理して着たら、すごくエッチに見えてしまいます。逆に、胸を隠そうとゆったりした服を選ぶと、今度はとても太っているように見えてしまいます。
それでも友達の結婚式に参加するときなど、着ていく服を新しく用意しないといけません。けれど私の場合、ショッピングセンターで1日かけて探しても、きれいに着られるワンピースはまず見つかりません。仕方なく通販サイトを一晩中ネットサーフィンして、妥協すれば何とか着ていけそうな服を見つけていました。(PR Times)
特に、オフィスや葬儀など、「露出が憚られる場」では、ふつうの服を着ているだけで胸が強調されてしまうことは、大きな悩みでした。
「LLサイズを買う」=太ってみえる か、「Mサイズを無理して着る」=セクシーになる の二者択一に悩んだ黒澤さんは、「胸サイズに合う服を作ろう」と、アパレルの立ち上げを決意します。
ですが、こう言った悩みは普通、共有されにくいものであり、市場があるかどうかは未知数でした。
ただ、調べてみると、日本人女性の胸はここ三〇年でかなり大きくなっているようです。これによれば、女性の四分の一がEカップ以上なのです。
トリンプのカップサイズ別売上推移をみると、2014年度は「Cカップ」26.3%、「Dカップ」24.1%で拮抗して1位2位。「Eカップ」「Fカップ」も上昇し、74.2%の女性が「Cカップ」以上になっています。1980年では「Aカップ」が全体の6割近くを占めていたことから考えても、女性のカップサイズは30余年の間に驚くほど大きくなっているようです。(トリンプ調べ http://news.livedoor.com/article/detail/10392328/)
ですが、なぜ「胸の大きな女性」向けのアパレルが少ないのでしょうか。
これほど胸の大きな人が多ければ、既にアパレルがあっても良いはずです。
しかし、黒澤さんが調べたところ、こう言ったアパレルはありませんでした。
彼女は、その原因を「トルソー」(服の型紙をとるためのマネキン)ではないかと推測しています。
トルソーは2つの大きなメーカーによって作られていますが、そのトルソーメーカーが、「大きな胸のトルソー」を作っていないのです。
これにより、そもそもアパレルメーカーは「大きな胸を持つ女性の服の設計」をしていない、と認識した黒澤さんは、そこで特注のトルソーを使い、服の設計に乗り出します。
設計は細部に至るまで黒澤さんの手によって行われました。
例えば胸の部分の布には、かなり余裕を持たせました。平置きしてみると、かなり胸の部分の布が余るのがわかります。
また、ボタンホールとボタンの数を見ていただくと、数が違うのがわかります。これはもちろんミスではなく、「隠しボタン」によって、服が浮いた時に隙間から下着が見えてしまうのを防ぐためです。
また「襟」を大きくとり、胸を相対的に小さく見せる効果を出しています。
さらに、ハンガーにかけてみると通常のシャツと異なり、後ろではなく「前」の部分が長いのがわかります。
胸の高さだけ、前のほうに余裕を持たせているからです。
こうして「これまでにないアパレル」がデザインされたのですが、1つ懸念があります。
まず店舗では「どの程度の市場があるか」の測定がしづらいこと、また自社でショップを持つには相当の費用もかかり、また「胸が大きい人が集まる店」という評判は女性の安全面にも問題が残ります。
このような時に最適なのが「クラウドファンディング」の利用です。
ITに造詣も深い黒澤さんは、「まだ世に出ていない商品のニーズを、実際に販売して確かめるのは、クラウドファンディングが最適である」と考え、出店を決意します。
僕の友人が、おっぱいの大きな女の子向けの服をプロデュースする、「HEART CLOSET」というファッションブランドを立ち上げました。応援しております。クラウドファンディングも開始しているようなので、みなさんどうぞご贔屓に。 https://t.co/9252sC6bmW
— 菊田裕樹 作曲が得意なフレンズ (@Hiroki_Kikuta) 2016年7月1日
この出店の結果、「webでバズった」クラウドファンディングは2時間で目標を達成し、1ヶ月で250着を完売しました。さらに、これに呼応する形で出したプレスリリースは大きく注目され、様々な媒体に紹介されました。
また、SNS上でもかなりの話題を集め、ファンづくりに成功した黒澤さんは、量産体制を作ることができました。
「おっぱい強調したくて胸元開いてるの着てるんじゃないんだよ」
貧乳には絶対理解されない。
あとYシャツのボタンはマジで飛ぶ。ありがたやありがたや
胸のサイズから洋服を選ぶ。新感覚のアパレルブランド「HEART CLOSET」
https://t.co/Oj1CtpAflB— あにょん (@paradice_summer) 2016年7月3日
HEART CLOSET…!!!
おおお…ヽ(;▽;)ノ
素晴らしいヽ(;▽;)ノ
そうなんだよこれなんだよヽ(;▽;)ノ— ゆきむー (@yukimr37) 2016年7月4日
胸のサイズから洋服を選ぶ。新感覚のアパレルブランド「HEART CLOSET」のシャツとジャケット| クラウドファンディング- ENjiNE(エンジン) https://t.co/jWWqLaIv1I
これはこれで選ばれしものの服だよな (ΦωΦ)腕の太さとか考慮してんのかな…— かえで.. (@kaede1222) 2016年7月4日
このように、時としてクラウドファンディングによるテストマーケティングは「極めて新規性が高く、市場が未知数」という商材にとって、極めて有効な武器となりえるのです。
・日本経済新聞社のクラウドファンディング
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