突然だがみなさんは副島隆彦さんをご存知だろうか。

彼は陰謀論者として名高い作家なのだけど、その彼がこのたび老人一年生 老いるとはどういうことか (幻冬舎新書) ”という本を上梓された。

ぶっちゃけ本音をいうと、僕は彼が普段書いている本はそこまで好んで読まない。

けどこの老人一年生 老いるとはどういうことか (幻冬舎新書) ”は凄く良い。何がいいって、筆者の本音がキチンと全て書かれているからだ。

 

老いとは痛みを抱える事である。その辛さは経験者にしかわからない

はっきり言うけど、老人一年生 老いるとはどういうことかは、科学的に正確ではない記述も多々含まれている。

理系の教育的素養がそこまでない副島隆彦さんが自頭を働かせて分析した意見なのだから、まあ仕方がない事ではあるのだけど。

 

けどこの本は、それ以上に価値がある。

何故ならかつて健康で身体に不調を抱えていなかった副島さんが、年老いて体に痛みを抱えて得たフレッシュな感想が嘘偽りなく書かれているからだ。

こんなにも正直な本は僕は今まで見たことがない。

 

この本によると、副島さんは、気管支炎、腰痛、頭痛、排尿時痛、痛風という5つの痛みを抱えているのだという。

何も痛みがない人からすれば常に身体が痛いという事がどういう事かなんて想像もつかないと思うけど、事実として痛みは凄く辛い。特に治らないタイプの痛みはヤバイ。

 

あなたが凄く運動したりして、翌日に筋肉痛を抱えたとしよう。この痛みは、辛いっちゃ辛いけど、治るからまだ良い痛みだ。筋肉も成長するし、体重も減るだろうし、まあポジティブな痛みといえるだろう。

けど、実は世の中にはこれとは違うネガティブな痛みがある。あるってもんじゃない。凄く沢山ある。

 

例えば腰痛なんかは凄いもんだ。若い頃にスポーツをやってた人の多くが腰痛を経験していると思うのだけど、この痛みは一度かかると全然抜けない。

僕が腰痛を抱えたのは大学2年生の頃だったのだけど、これは本当に治らないし下手するとこのせいで一日中動けなくなる。

 

「はぁ?腰が痛いから動けないとか甘えでしょ?」

そう思う人もいるかもしれない。僕も前はそう思っていた。けど、これはマジなのだ。

腰が痛いと、人は本当に動けない。根性じゃなくて、身体的に無理なのである。

 

腰痛は一度抱えるとなおらない。一生、付き合っていかなくてはいけない。

日によって痛みが変動する最悪の負債は、一度体験しないと絶対に理解できない。僕もこれを抱えるまでは全く理解できなかったし、正直な事をいうと、腰が痛いとか甘えだと思っていた。

けど腰痛持ちになった今だからいえるけど、腰痛は本当に辛い。スピーディに身体を動かすだなんて、本当に出来なくなる。これは甘えじゃなくて、身体的に無理になるのだ。こんな苦しみが人生にあるだなんて思わなかった。

若さとはなんと素晴らしい事よ……

 

若くて恵まれた医者には、年老いた患者の気持ちなんてわかるはずがない

こんなことを言うと凄くいやらしいのだけど、医者は基本的には社会的に恵まれた人達が多い。幼い頃から何不自由なく育った人が凄く多い。

僕自身はたまたま不幸な育ちをしたからこそより一層わかってしまうのだけど、医学生は全然苦労してない。

地獄のような底辺社会で生きた人間と比べれば、その生育環境は天国みたいなものだ。

 

天国で生きてきた彼・彼女らは、地獄で生まれ育ち、痛みを抱えて生きる苦しみは全然理解できない。だってそんな痛みは経験したことがないのだ。そりゃそうだ。

人は経験した事でないと真の意味では理解できない。ナイフで切られた痛みはナイフで切られないとわからないし、虐められた心の苦しみは虐められた経験がないと理解できない。

 

底辺社会の苦しみは、その生育環境にある。

当然いいものなんて食べられないし、みんな修羅の国に生きてるのだから、当然他人なんかに優しくする余裕なんてない。

そういう環境で虐げられないと、本当の意味での身体・精神的な苦しみなんて理解出来ない。その癖、そういう環境にいた人をケアしなくてはいけない医者はそういう環境とは無縁だ。

そういう医者が、自分が体験したことのない苦しみを真の意味で理解して、真の意味でキチンと寄り添えると思うだろうか?

断言しよう。それは不可能なのだ。誰が悪いというわけではない。こればかりはもう、仕組み上仕方がないのだ。

 

繰り返しになるが、人は経験したことがない痛みを真の意味では理解できない。

腕が切断された事がない人間は、目の前で「痛いよ~痛いよ~」と言ってる人の気持は絶対にわからない。

親から毎日虐待を受け続けた事が無い人間には、罵詈雑言が止むまで無言で黙り続ける事の苦しみなんて絶対に理解できない。

 

老いもこの苦しみの範疇に入る。人の身体は消耗品だ。どんなに神様に愛された人間だって、絶対に老いからは逃れられない。

老いを経験したことがない若い医者が、老いた人を100%理解できるかっていうと、絶対にありえない。医者なんてそんなもんだ。

 

偉大な宗教家が苦行の元にうまれるのは、結局のところ苦行を通じて苦しみを理解できたからに他ならない。

人は、経験したことがない痛みは理解できない。こればっかりはもう仕方がない。

 

お気持ちが全力で書かれた本、老人一年生

繰り返しになるけど、老人一年生は科学的に間違った事がかなり書かれている。

どこがどう間違いかを指摘するのはここでは控えるけど、まあ色々と科学的には間違いが多い本ではある。

 

けど、その上で僕はこの本を読む事を全力でオススメする。だってそこには、純情な副島さんによる、真の痛みについての正直な気持ちが吐露され尽くしているからだ。

この素直な気持ちは、自分の経験上ならびに自分が付き合ってきた患者さんの意見とほぼ99%一致する。

自分自身が腰痛持ちであり、劣悪環境で育ち、様々な苦境に追い立てられた事からも全力を持ってこの本を推奨できる。この本に書かれているお気持ちは100%正しい。

年老いる前に、この本に触れられる事はすざまじい利点となるだろう。是非、読んで老いに対する予備知識を備えて欲しい。こんなスゴ本、そうそうでませんよ。

 

 

【プロフィール】

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高須賀

都内で勤務医としてまったり生活中。

趣味はおいしいレストラン開拓とワインと読書です。

twitter:takasuka_toki ブログ→ 珈琲をゴクゴク呑むように

noteで食事に関するコラム執筆と人生相談もやってます→ https://note.mu/takasuka_toki

 

(Photo:如煙Halfcode)