少し前、「就職するならば、大企業と、ベンチャーと、どちらに入ったほうが成長が早いか」という論争が盛り上がっていたことがあった。多分、ちょうど1年位前だ。その時の私は、「そんなの場合によるだろ」くらいに考え、大して深く考えもしなかった。
しかし、ここ1年ほどの各社の状況を見て、成長について深く考えざるをえない結果が得られたのでここに記す。
まず、「大企業の方が成長が早い」という人と、「ベンチャーの方が成長が早い」という人、どちらかで言い切っている人は「これは煽りだ」ということを確信して書いていると思う。当たり前だが、大企業だからといって必ず成長が遅いわけでもないし、ベンチャーだからといって必ず成長が遅くなるわけでもない。これは小学生でも分かる話だ。
だから多くの人は、私のように「場合による」という結論で済ませてしまうだろう。
しかし、である。
いくつかの会社にて、「5年前に入社した新人が、その後どうなったか?」という話を聞いた所、大企業とベンチャーでは、人の成長の仕方に違いがある、と感じた。どのような違いがあるのか。私が感じたのは、次の1点である。
それは、大企業は成長のばらつきが少ない。ベンチャーは成長のばらつきが大きい。ということだ。
具体的に言えば、大企業に行った人たちは、「皆、まんべんなくそこそこ成長」だった。特別に出来ない人もいないが、特に突き抜けた人物もいない。逆にベンチャーに行った人は、「かなり出来るようになった人と新卒とあまり変わらない人の2極化」が進んでいた。
もちろん、あくまで私の感想である。信じる信じないはお任せするが、私の見る限りでは、明らかな傾向があった。
なぜこのようなことになったのか。
これも現場の社員に聞くことで分かった。「自分を成長させてくれたものはなにか?」と聞くと、ほとんどの人は次の2つを挙げる。
すなわち、「仕事の内容」と、「上司」である。「制度」や「研修」と答えた人はほとんどいなかった。
つまり、次のような仮説が生み出せる。
「仕事の内容」と「上司」に恵まれた人は早く成長し、そうではない人は成長のスピードが遅い。
これを突き詰めると、以下のような話になる。
「ベンチャー」に行ったほうが創業者などの「突き抜けた人」に直接会う可能性は高い。そういった人々にビジネスを教えて貰い、面白い仕事を任せてもらえる機会もある。
大企業では有能な人はピラミッドの上の方にいるため、最初の数年では「突き抜けた人」に直接会って、ビジネスを教えてもらえるケースが相対的に少ない。また最初、新人に任される仕事は定型的なものが多いため、「面白い仕事をふられる」という体験はどうしても少なくなる。
従って、ベンチャーに行った人は、創業者などの突き抜けた人々に直接仕事を教えてもらえる条件さえあれば、大企業に行った時よりも成長は早いだろう。
しかし、逆のケースも有る。もしベンチャーで「突き抜けた人」の下につくことが出来なかったら…、「雑用」のような仕事ばかりをやらざるを得ない状況だったら…。
大企業は異動によって上司が変わることも多い。「ダメな上司」の次に「デキる上司」の下につける可能性もある。そうやって、ある程度「平均化」できるのが大企業の良い所だ。
しかし、ベンチャーでは上司はほとんど固定である。ハズレを引いた時のダメージは大きい。
私は幸い、上司に非常に恵まれ、「仕事を任されたら何をすべきか」から、「提案書の書き方」、インタビューのやり方から、会社の経営状態の見極め方、人間関係の調整まで、ほんとうに様々なことを体系的に教えてもらい、実践する場があった。それは、今でも応用が効く、貴重な体験だ。
でも、そういったことを全て「盗め」、「独学で勉強せよ」と言われていたら、あれほどのスピードで学習することは出来なかったはずである。
だから、「大企業と、ベンチャー、どちらの方がいいですか?」と聞かれた時、私はこう答えようと思う。
「大企業はいいよ、どんな人にもそれなりの待遇を与えてくれるし、確実に成長できる。ベンチャーもいい。圧倒的に早く成長できる機会があるかもしれない。でもそれれらは表裏一体。大企業では「突き抜ける」のは難しいし、ベンチャーは当たり外れの差が大きい。」
答えになっていないよ、と言われるのはもちろんわかっている。
(2026/9/1更新)
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