電車の中を見渡すと、スマホゲームをやっている人が実に多い。個人的にはゲームが好きであるし、ゲームを電車の中でやることに対して批判的な気持ちは一切ないが、それでもかなりの人が俯いてスマートフォンのゲームを一心不乱にやっている光景を見ると、少し異様なものを感じる。
私の知り合いでスマートフォンのゲームが大好きな方がいるが、彼は毎日毎日、家から駅に歩くときも、電車の中でも、昼休みも、トイレにいく時も、会社からの帰り道も、寝る前も、ほとんどスキマ時間のすべてをスマートフォンのゲームをやることにに使っているそうだ。
「おそらく、一日に5時間から6時間はスマホのゲームをしている」
と、彼は言った。
しかし、なぜこれほどスマートフォンのゲームは人を惹きつけるのであろうか。
そのカギの一つはおそらく「手軽な達成感」である。
例えば、前述の彼は「スマートフォンのゲームのなにが楽しいのか」と聞かれると、
「自分の理想のパーティーをつくり上げたり、レアアイテムやレアモンスターを手に入れることが楽しい」という。
さらに、
「自分が作ったパーティーが、思ったとおりに機能し、強敵をうまく攻略できた時、快感を感じる」とも言った。
また別の女性はいわゆる「落ち物パズルゲーム」にハマっているが、「自分の予想したとおりにパズルのピースをコントロール出来た時、ゾクゾクする」と答えた。
実際、人は、「自分の計画したとおり」に事が運ぶことに対して、大きな喜びを感じる。一種の「万能感」や、「強い自己肯定感」を味わうことができるのだ。
したがって、「自分の計画したことが試せる場が提供され、しかもきちんとやれば成功する確率の高い「ゲーム」というものが、多くの人達の精神安定剤として機能している」ことは事実だろう。
しかし、これは何もスマートフォンのゲームだけに限った話ではない。
ワーカホリック、いわゆる「仕事中毒」と言われている人々も、一種の「達成感」を求めてますます仕事してしまう、という状態が起きている。
「自分の企画が商品化され、よく売れた」
「キャンペーンを仕掛けて、顧客を増やすことが出来た」
などといった「達成感」を仕事に求める人は多い。もっと直接的に「仕事はゲーム」と言う方も決して少なくない。
だが、現実的には仕事や人間関係などで自分が思ったとおりに事が運ぶことは極めて少ない。自分のパートナーや子供ですら、自分の思った通りに動くことは稀である。
先日、北海道の教育委員会が「ノーゲームデー」を定めたことが話題になった。
(出典:北海道教育委員会)
何かと批判の的になる「ゲーム」だが、「家族の団らん」や、「体験活動」「読書活動」が提供する達成感が、ゲームが提供するそれに負けている、という問題もまた潜んでいるようにも見える。
「話を聞かない親」
「やらされ感のあるボランティア」
「つまらない読書」
では、ゲームの誘惑に勝てないことは明らかだろう。大人が実際そうであるように。
皆、「達成感」が得られる仕事を望み、「達成感」が得られる勉強を望んでいる。仕事や勉強のやり方に工夫が求められる。
だが、それと同時に、「達成が得られない状態」とうまく付き合うための心の持ち方も、学ばなくてはならないのかもしれない。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
筆者Facebookアカウント https://www.facebook.com/yuya.adachi.58 (スパムアカウント以外であれば、どなたでも友達承認いたします)