もうすぐ4月である。学校をこの春卒業する学生にとっては、最後の長期休みがこの春休みであり、「これから働くこと」に対して大きな不安を抱えている人も多いだろう。
ある学生が、「これから社畜生活の始まりですよー」と嘆いていたが、その表現は彼等の気持ちからすれば決してオーバーなものではないのかもしれない。
先日も、ある方から、「働くのが怖い」であったり、「とても不安」という相談があった。理由を聞くと、「仕事がうまく出来るかわからない」、「落ちこぼれたくない」、「人間関係が心配である」という意見が大半であった。
そんな時、いつも私はある社長が入社式で語った話をさし上げることにしている。若干うろ覚えの部分もあり、細かいところは忘れてしまったが、書いてみたいと思う。
新入社員の皆さん、おめでとうございます。今日から社会人ですね。
今後、皆さんと一緒に働けることを、とても楽しみにしています。
そんな、新社会人の皆さんに、こういう言葉を送りたいと思います。
性相近し、習相遠し
せい、あいちかし、ならい、あいとおし、と読みます。
これは、中国の偉大な思想家、孔子が語った言葉です。性というのは、「生まれ持った才能や性質」のこと、習というのは、「学びや習慣」のことです。ですから、この文の意味は、
人が生まれ持った才能や性質はそれほど変わらないが、その後の学びや習慣によって、人は大きく違ってくる。
ということです。
もちろん、私もかつては新入社員でした。今でもよく憶えています。
そして、その時の先輩が、私にこんなことを言いました。
「毎日、日経新聞を読むんだ。」
それからとにかく私は素直に、毎日のように日経新聞を読み続けました。周りのたくさんの同僚たちも同じように始めましたが、きちんと続けることができたのは、ほんとうにごくわずかの人たちでした。
もちろん、続ける努力をした人は、多くのものを得られます。先輩の信頼や、お客さんの信頼などです。信頼を得られれば、面白い仕事が回ってきます。30年間続けた人と、何もしなかった人、その結果は明らかです。だから、私は社長になれたのです。
様々なご感想があろうが、この話を聞き、孔子の言葉の意味云々よりも、「初めて働くにあたって、3つのことが大事なルールなのだ」と感じた。
1.習慣化が肝心である。
学校の成績は、「短期勝負」だが、働くことの成果は、「長期の勝負」である。1年2年でなく、10年20年という期間で成果を考えると、「習慣化」は才能の差よりも大きな能力差を作り出す。
せいぜい3年程度の積み重ねでしか無い受験勉強に比べ、社会で働くことは真の意味で、「積み重ね」が要求される。学び続けよ。良い習慣を身につけよ。
2.素直さは重要である。
考えているよりもあなたの上司や先輩ははるかに賢い。現実的にはそうでなかったとしても、「そう思っておく」ことは非常に重要だ。できるだけいろいろな人から、吸収できればそれだけ有利なのだから。
いずれにしろビジネスが多少なりともわかってくるのは、もう少し後のことである。腹が立つ上司や、無礼な先輩に反抗する前に、「彼等が何を考えているか」を読み取る努力が求められる。
「新聞を読め」も、彼等なりには合理的なアドバイスなのだ。否定するのは「続けてみてから」でも、遅くはない。
3.組織の中では、上司や先輩とうまく仕事すると面白い仕事が回ってくる
サラリーマンが出世するためのただ一つの方法にも書いたが、「上司が出世すること」が、自分が出世するための決定要因であることは間違いないし、上司や先輩に疎まれる人物はチャンスすら与えられない。
もちろん上司は選べないし、上司がどうしようもない人物であるという可能性もある。だが、「上司とうまく仕事すると面白い仕事が回ってくる」のは、どこへ行っても同じである。
会社で働くことを不安に思うのは当然である。ルールもわからず、いきなり放り込まれて、「成果を出せ」と言われるのだ。
だが社長の話からわかるように、会社はそれなりにシンプルなルールで回っている。でなければ、これほど多くの人が組織で働くことはできないだろう。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
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お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
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