最近では4月が近づいてきている影響だろう。

学生から、「本当にこの仕事、私にあっているんでしょうか?」と聞かれることがあるが、それに関して思い出すエピソードがある。

 

ある会社が、「言われたことを素直にやる人」というのがどの程度の割合で存在するのかを確かめる実験を行った。社長は常々、「素直な勉強好きの人がほしい」と言っており、できるだけそういう人を採用してきた、とも語っていた。

そして、「社員は素直な勉強好きなのか?」を実際に確かめたというわけだ。

 

実験は簡単なものだった。社長から「この本はとても良い本なので、ぜひ読んでください」という話を社員全員に評価面談の時行い、どの程度の人が読んだのかを後日確かめる、というものだ。

結果、1ヵ月以内にその本を読んだ人物はわずかに2割だった。

社長はその数字を見て、「なぜ皆、人から勧められたことを素直にやらないのだろう?」と考えこんでしまった。

 

皆に理由を聞けば、殆どの人は

・時間がなかった

・忘れていた

・重要だと思わなかった

・効率が悪いように感じた

という返答をするに違いない。そして、これらは全くもって正しい。

おそらく、時間もなかったし、覚えていなかったし、さして重要だと思わなかったのだろう。

 

にもかかわらず、例えば、「この本いいよ」と人から勧められて、「すぐに読む人」と、「読まない人」では、その後のキャリアや能力に大きな差が出てくる可能性が非常に高い。

それは、「学び」と「素直さ」というものが、密接に関わっているからだ。

 

単純に言えば、「学習能力の高い人」は、総じて素直なのである。

すなわち、人から薦められたことに対して、自分ですぐに価値判断をせず、一旦受け入れ、読んでみたり、やってみたりする。評価はその後ですれば良い、というように考える人たちが、「学習能力の高い人」なのだ。

かつての職場では、人から勧められた本をその場で「Amazon」で買い、とりあえずひと通り目を通してみる、という習慣を持つ人が数多くいた。「学習能力」と言う意味ではそれが高い人が数多くいたのだろう。

 

ただ、多くの組織ではそういった「素直な人」の割合は大体2割程度である。その2割は大抵、「仕事の出来る人」となっていく。社内の信頼も厚い。そして何より、多様な価値観や考え方を取り入れ、人間的成長も早い。

だが、忙しくなってきたり、その分野での経験が長くなってくると徐々にそのような人の割合は減ってくる。「ムダ」か「そうでないか」が主要な判断基準となる。それが蔓延すれば、「学習能力の低い組織」の出来上がりだ。

そうならないためにも、時にはムダかどうかを自分で判断せず、「人の薦めに素直に従う」ことも、能力開発においては非常に重要なのだ。

 

話を戻そう。新社会人の皆様から、「本当にこの仕事、私にあっているんでしょうか?」と聞かれたらどうするか。

 

当然、今から仕事を変えることはできないし、仕事への適性を仕事をやる前から知ることはできない。

そんな時、くよくよ考えたり、「効率のよいキャリア」を思い浮かべて悶々とするよりも、とりあえず新しい職場、新しい上司のもとでやれることをやったほうがいい。

どうせ、素直に現状を受け入れて働ける人は2割しかいないのだ。それだけでも「本当にこれでいいのだろうか」と中途半端な人と大きな差がつく。

 

だから正解は多分、「とりあえず、自分の価値観で判断せず、何でもやってみたらいいんじゃないか」という、アドバイスなのだろう。

 

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安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
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(2025/6/2更新)

 

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