「リスクを取らなければ成功しない」という。新しい試みには常にリスクが伴うからだ。しかし、リスクを適切に取ることの出来る会社は少ない。
例えば、新規事業の担当者が事業計画の発表の際、このように言ったらあなたはどう感じるだろうか?
「現在の予想では、期日までに新製品の開発が完了する可能性は5分と5分です」
これに対し、「バカヤロウ、始める前から諦めるんじゃない」と言ってしまう企業風土はおそらくヤバい。それは明らかに
「間違えるのはかまわないが、不確かなのはだめだ。」
という文化である。
そのような会社で期待される回答は、
「はい。全身全霊、命をかけて期日までに完成させるよう、頑張ります。」
である。
こう言わなければ、左遷されてしまうのだ。
「間違えるのはかまわないが、不確かなのはだめだ。」
という言葉はプロジェクトマネジメントの第一人者であるトム・デマルコ氏がその著書、「熊とワルツを」の中で旧態依然の企業文化を皮肉って述べた言葉だ。
彼はその著書の中で、こう語る。
中でも厄介なのは、きちんと意図された行動までをも妨げかねない、不確定性への姿勢である。この姿勢とは、要するにこのようなものだ。
「間違えるのはかまわないが、不確かなのはだめだ。」
このルールが自分の会社に当てはまったら、おしまいである。
このルールの意味は、約束した納期に間に合わなくても良い、大幅に遅れてもかまわないが、その日までの間、期日に間に合いそうにもないと言ってはならないということだ。
事前に失敗するかもしれないことを認めるという大罪を犯さなければ、失敗は容認される。
このような姿勢を持つ会社は数多くある。
例えば、
・ほとんど達成の見込みの無い目標に対し、「達成可能かどうかはわかりません」と言うと、「やる気が無いのか」という会社
・遅れや失敗を報告し、「遅れを取り戻すのは難しいので、新しい期日を設定したい」というと、「気持ちが足りない」という会社
いずれも、「間違えるのはかまわないが、不確かなのはだめだ。」という風土の会社である。
もちろん、このような状態で目標を達成できるわけはなく、大抵の場合は失敗する。しかし、失敗の原因は常に「やる気」にあるので、失敗の原因は顧みられることはない。
デマルコ氏はこのような状態を、「子供のやること」と切って捨てる。
冷静に考えてみると「失敗にきちんと向き合わない」と言うのは確かに致命的である。
「子供のやること」
と言われても、仕方ないのではないかと思う。
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