部下の育成には何が重要ですか?と管理職の方々に聞くと、「成功体験です」と回答する方は多い。
成功体験は「ノウハウの法則化」を後押しし、「自信」を付けさせ、そして、「仕事を愛する気持ち」を喚起するからであるという。
たしかに私もそのような状況を目撃したことがある。
組織の上層部にいる、出来る人たちの揺るぎない自信は、そのような体験を通じて醸成されたものなのだろう。
だが、成功体験を積ませることは意外に難しい。なぜなら「成功」はそれほど簡単に手に入るわけではないからだ。
例えば、苦労に苦労を重ねた後の感動的な成果は理想的な成功体験といえるのだろうが、そんな都合の良い状況はそう簡単に生まれない上、会社におけるほとんどの仕事はルーティンワークであり、物語性など求めるべくもない。
成功体験は、何かを乗り越えたという実感なしに得られるものではない。
だから、「成功体験」を与えることは難しいことであると考えている上司はそれなりに多い。私は、「成功体験を与える前に、部下が挫折しちゃうんだよね」という上司の言葉を何度も聞いた。
だが、成功体験を与えることは難しいことなのだろうか。
おそらく、そんなことはない。
実は、最も簡単に与えられる「成功体験」は、「上司に勝つ」ことだからだ。上司次第で、いつでも成功体験は与えられる。
ある商社の部長は人を育てることがめっぽう上手であった。議論においても、企画立案においても、提案書の作成においても、その上司は有能であったため、社内では一目置かれていた。
だが、しばしば彼は部下に成功体験を与えるため、意図的に議論に負け、部下に花を持たせていた。彼の育成の秘訣は「部下に負けてあげること」だったのだ。
彼はこう言った。
「常に有能であり、ミスをせず、部下を打ち負かす上司のもとでは人は育ちません。有能すぎる上司はダメなのです。」
私は頷いた。
「私は部下に手抜きは許しません。でも、頑張った部下には花を持たせることもあります。上司を乗り越えた経験は、彼らの自信になるからです。親もそうでしょう。両親を乗り越えた、と反抗期の子供に認識させることは、子供の自信につながる。大事なステップです。」
部下におそれを抱く上司は、「負けてあげる」という余裕がない。
部下をいつも論破してしまうような上司は、少し注意したほうが良いかもしれない。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
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(Photo:valeriy osipov)