様々な会社で採用の仕事をしていると「わかりやすい実績のある人」に出会う。例えば、こんな具合である。

 

・(大手企業)でNo.1営業マンだった。

・(大きなwebサービス)のマーケティングをやっていた

・(有名スタートアップ)のコアメンバーだった

 

だが、本当に彼らは「実力者」なのだろうか。即採用すべき人物なのだろうか。

 

認知心理学者であり、ノーベル賞受賞したことでで知られるダニエル・カーネマンは著書※1の中で、

多くの人は信じたくないかもしれないが、統計的には「成果が出るかどうかは、実力よりも運の要素が遥かに大きい」

と述べている。

一般的に、成功者の言う「こうして成功した」は再現性がなく、それほどアテににならない。

※1

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また、こんな研究もある。

カリフォルニア大学デイビス校の心理学者、ディーン・サイモントンは彼は「ある科学者が成功した論文を発表した後、論文の質は上がっているのか?」を検証した。※2

つまり「一度成功すると、その後成功しやすくなるのか」を確かめたのだ。

 

結果、科学者が画期的な論文を書く時期はまちまちで規則性がなく、キャリア全体にわたっていたのだ。ただ、画期的な論文が生まれる確率は、数多くの論文を執筆しているときに最も高くなる。

つまり、つまり「イノベイティブな成功」はノウハウとして蓄積されるような性質のものではなく、「精力的に働く時」に偶発的に出現するものなのだ。

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成功体験は、その後の成功の確率を上げるわけではない。むしろ「成功事例の上にあぐらをかいて働かなくなった」経営者、マネジャーは数多い。

つまり「実績」はそれほど正しく実力を反映しない。その人がたまたま成果を出せてしまった、ということのほうが、可能性としては高い。

 

 

 

では「実力」をどのように見抜けばよいのか。

 

上の2つの研究結果を見ると「本当の実力」とは恐ろしく単純だ。それは

1.生産性が高い、つまり多産であること

2.継続すること、つまり粘り強いこと

この2つを可能にする能力が、実力である。モーツァルトも、ダーウィンも、エジソンも、皆この能力を保持していた。

したがって「仕事が遅い」のは致命的である。さっさと取り掛かり、改めるべきところは素早く改める。そして「継続」する。クオリティの高い仕事を継続することで「偶発的な幸運」が舞い込む可能性を上げる。

これが「実力者」の仕事ぶりだ。

 

ある会社の採用担当者は、

「実績なんていくらでも盛れるし、たまたまうまく行っただけかもしれない。そんなことよりも「どれだけ生産的に働いたか」を聞くほうが遥かに有意義です。」

また別の経営者は

「採用してわかったのですが、過去に高い実績があった人でも、次の会社でも成果を出せる人って、すごく少ないですね。むしろ、実績があっても過去の成功にとらわれて柔軟性を欠くケースも少なくありません。」

 

という。

 

「本当の実力」とは、そんなものである。実績ではなく働きぶりを見よう。

 

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【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

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(2025/6/2更新)

 

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