日本人の一人あたりGDPの低さが目立ってくると、当然のことながら「生産性」が注目される。だが、日本企業の生産性は先進国の中では圧倒的に低い。

なぜ日本企業は生産性が低いのか?私も疑問に思うことが多々あった。

 

だが、一つのヒントが下の話にあるかもしれない。先日訪問した、あるソフトウェア開発会社での話だ。

 

営業の方たち数名と話していたのだが、その中の1名が

「日本の生産性の低さの原因がわかりましたよ」

と言っていた。

 

興味を惹かれたので、「何が原因なんですか?」と私は聞いた。

「いま、お客さんから連絡があって、1週間前に契約が決まった仕事について、もっと情報がほしい」っていうんです。

「うん。それで?」

「それなんですけど、向こうの人が「見積もりの妥当性を知りたいから、見積の根拠を示した資料を作って欲しい」って言われました。」

 

相手の会社は、超大手企業で、契約金額もそれなりに大きい。だが、契約が決まった後に

「根拠が知りたい」

とは、一体何を要求しているのだろう。

「あれ、見積書は出したんじゃないんですか?」と私は聞いた。

「そうなんですけど、見積り書の項目が粗すぎるらしいんです。なんか購買の方から茶々が入って、項目を細分化して、もっと一つ一つの項目に妥当性を持たせなきゃダメだ、と言われたそうです。」

「……それは、契約が決まった後、値引きしてほしい、という交渉があったということですか?」

「まあ、そうかもしれません。」

「ふーむ。」

 

その営業の方は「慣れっこですけどね。」といい、

「でもですよ、もう一度すべてを見なおして、項目を細分化するのに、少なくとも3日、4日はかかります。多分提出は来週です。

まあ、ほとんど値引きできる余地はないので、値引いてもせいぜい数十万、というところです。そして、今はもう既に初めて見積もりを出してから3週間以上経ってるんです。」

「そうなんですね。」

「そうです。で、ここからが肝心なんですが……」

「何?」

向こうの担当者は4、5名いるんですが、ここ3週間位、一体何をやってたんですかね。多分、値引き交渉数十万のために、仕事が止まってるわけですよ。それって、すごい時間の無駄じゃないですか?

「……」

彼らは圧倒的に仕事が遅いんです。アホか、というくらいに。

例えば、大企業ですから、1週間分の4、5名の人件費は少なくとも100万以上にはなりますよね。値引き交渉で時間を無駄に使うくらいなら、早く始めたほうが遥かに良いじゃないですか。無駄な値引き交渉なんかせずに、さっさと仕事しろって感じですよね。

しかも見積もり項目の細分化なんて、本来のプロジェクトの目的からすればどうでも良いはずなんですがね。

ま、大企業の人たちってヒマなんですかね。それで、ひょっとして生産性の低い原因は、これじゃないかと思ったんですよ。やたら細かい仕事と、瑣末なことにこだわる文化、そして、時間意識の希薄さ。」

「なるほど。」

「でしょう。そんなことやってて、納期前には「残業だ」なんて、呆れますよね。私、絶対に日本の生産性の低い原因は、大企業の時間コスト意識の無さだと思いますよ。多分時間より僅かな現金のほうが大事なんですよ。ま、完全に私の思い込みですけど。スイマセンね。」

もちろん全てではないが、私も幾つかの企業で

「スピード感も時間コスト意識も皆無だな……」と感じたことが何度かある。

 

今回取引をした大企業は中小企業の取引先全てに、いちいち細かい価格交渉をしているのだろうか。たしかにそんなことをしているヒマがあったら、さっさと仕事を終わらせて、成果を出したほうが良いのでは、と思う部分もある。

 

その営業は言った。

「うちも、大企業との取引は結構ありますが、動きの遅い会社は徐々に取引をやめたいです。今回みたいなことが続いたら、仕事はこっちから願い下げですよ。我々だって、生産性の高い会社と付き合いたいですからね。

そんな会社は、信用を失って当然だと思いません?」

 

なるほど、と思った。

 

【お知らせ】
オウンドメディアが“武器”になる時代が再び!生成AIで変わる企画・制作・継続のすべてを解説
生成AIの登場で、かつてハードルだったコンテンツ制作目標設計継続が一変。
本セミナーでは、なぜ今オウンドメディアが“やるべき選択肢”となったのか、
費用対効果を可視化し社内を動かす企画へ落とし込む方法を、3名のプロが分担してお届けします。

ウェビナーバナー

▶ 詳細・お申し込みはこちら


こんな方におすすめ
・オウンドメディアに興味はあるが成果が見えず投資できない
・社内の理解が得られず、企画が通らない
・記事は作っているが、何がKPIなのか曖昧で迷走している
・コンテンツ施策を始めたいが、マーケ知見が不足している

<2025年6月19日実施予定>

生成AIによるコンテンツマーケティング自動化で、オウンドメディアの悩みが9割解消された話

メディア運営が劇的に変わった3つの要因

【このセミナーで得られる5つのこと】
・オウンドメディア再評価の最新トレンドがわかる
・生成AI×人間の役割分担で発信体制を最適化する方法
・“継続できるメディア”を支える編集と企画の仕組み
・企画を通すための費用対効果の可視化手法
・実例ベースで学ぶ社内提案ロジックと構成

【セミナー内容】
第1部|なぜ今、オウンドメディアなのか?
登壇:安達 裕哉(ティネクト代表)

第2部|やりきる編集とは? 発信体制の仕組み化
登壇:桃野 泰徳(ティネクト編集責任者)

第3部|通る企画として社内を動かす 費用対効果の「規格」設計
登壇:倉増京平(ティネクトマーケ責任者)


日時:
2025/6/19(木) 10:30-11:30 + Q&A

参加費:無料  配信形式:Zoomウェビナー


お申込み・詳細
こちらウェビナーお申込みページをご覧ください

(2025/6/10更新)

 

書き手を募集しています。

安達裕哉Facebookアカウント (安達の最新記事をフォローできます)

・編集部がつぶやくBooks&AppsTwitterアカウント

・最新記事をチェックできるBooks&Appsフェイスブックページ

・ブログが本になりました。

「仕事ができるやつ」になる最短の道

「仕事ができるやつ」になる最短の道

  • 安達 裕哉
  • 日本実業出版社
  • 価格¥1,540(2025/06/11 13:51時点)
  • 発売日2015/07/30
  • 商品ランキング207,403位

(Joel Dueck)