世の中にはわかりやすいものがあふれている。

疲れているときにはわかりにくいものに触れたくない。漫画やゲーム、テレビなどのちょっとした楽しみは息抜きにもなる。

わかりやすいものに対するマーケットはそうでないものよりもはるかに大きいので、世の中にはわかりやすいものがますます増えていく。

 

 

だが、個人レベルで見ると、わかりやすいものばかりに触れていると、生活の質はなかなか向上しない。生活の質の向上は、わかりにくいものに触れた時起きる自己の能力向上によって得られるからだ。

 

普段、漫画しか読んでいない人が、文豪の作品を楽しめるようになれば、生活の質は向上する。

普段、テレビしか見ない人が、美術館の絵画も楽しめるようになれば、生活の質は向上する。

ジャンクフードばかり食べている人が、野菜の味を知れば、生活の質は向上する。

 

楽しみの幅を広げることは、世界を広く知ることにもつながる。知識の強化、美的センスの向上など、様々な副次的効果が見込める。

 

だが、わかりにくいものに触れるのはそれなりにエネルギーを必要とする。また、わかりにくいものを楽しめるようになるためには、時間がかかる。それは、一種の「学習プロセス」だからだ。

したがって、意図的に「わかりにくいもの」「知らないもの」に常に触れているように時間を作る必要がある。

 

では、具体的に何をしたら良いのだろうか。何を楽しめるかについては個人差が大きいと思うので、無理におすすめはしないが、私は幾つかの習慣を引き合いに出す。

 

例えば「人の薦めてくれたこと」は、難しそうであってもとりあえずやってみるという習慣。

また、「いったことのない場所」に意図的に訪れる習慣。

習い事も、工場見学でも、ものづくり体験でもなんでも良い。とにかく「自分が知らない、全くの門外漢である分野」と触れることが、人生を豊かにする。

ポイントは、「仕事の役に立ちそう」とか「何かが身につきそう」といった見返りをあまり考えないことだ。

 

 

もちろん、それですら単なる趣味にとどまらず、なにか仕事の役に立つ可能性もある。

スティーブ・ジョブスは大学を退学したあと、こっそり大学のカリグラフィー(書道のようなもの)の授業に勝手に出席していた。その時点では単に興味を持っていたのだけなのだろうが、後のMacintoshの発明に役立ったという。

彼は、その予想外のつながりを指して、Connecting the dots(点をつなぐ)と言った。

 

役に立ちそうなものだけを追い求めるのではなく、よくわからないものに飛び込むこともまた、人生にとっては重要なのだ。

 

 

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(Photo:Lorenzo Gaudenzi