一般的に上司は部下を管理する、という役割があるが、その一方で、上司は部下を守る、という役割もある。いざというときに上司が部下を守らなければ、部下は会社を信頼することはできず、ロイヤリティを保つことはできない。
もちろん部下を甘やかす必要はない。上司は部下に厳しく成果を求めるのが当然である。だが、卑怯であるという認識を部下に持たれるのは致命的だ。
人望がない人間は、仕事ができない。
では、どのようなときに上司は部下を守るべきなのだろうか。 本記事では、シーン別に上司が部下を守るべき時を挙げ、上司の役割を省みたい。
【シーン1】部下が顧客からクレームをもらった時
クレームをもらった時にこそ、上司は部下を守らなければならない。 客の前で部下を叱る上司を見かけることがあるが、これで顧客の気分が晴れるわけでもなく、解決にもならない。客の前で部下を叱るのは愚の骨頂である。
ここですべきは、上司は自らの責任を認め、自らのこととして対応することによって部下の不始末の落とし前をつける。 部下を叱り、再発防止をするのはその後である。
【シーン2】(特に中小企業で)部下が社長から叱られている時
社長から部下が叱られている。上司は部下を守らなければならない。 社長と一緒になって部下を叱るのは、愚の骨頂である。
社長を止め、私に任せて下さい。あとは私がやります。 というのが、上司の役割である。
通常、中小企業においては、社長に怒られることは、会社員としての人生が厳しい、ということでもある。それは望ましいこととはいえない。
【シーン3】部下が無茶な仕事を振られて困っている時
本来、部下には成果と関係ない仕事はさせてはいけないし、やらせるべきでもない。
ただし、社内には「雑用」も多い。 そして、雑用は「頼みやすい人」に集中し、その人がババを引くだけである。 だから、雑用から、上司は部下を守らなければならない。
例えば、何故か仕事が遅い部下がいる、状況を調べてみると「他の部門からの勝手な依頼」や「社長からの個人的な頼まれごと」により仕事が滞っていることがわかる。
上司は、それらの仕事を遮断し、適切に振り分け、部下が成果を上げることができるように全力を尽くさなければならない。
【シーン4】部下は頑張っているが、成果が出せていない時
外からどれだけその人が頑張っているかは見えにくい。そんな時、上司は部下を守らなければならない。
成果とは確率であり、常に成果が出ている人はむしろ信用してはいけない。 それを知っていれば、努力していても成果が出ない部下を守るのは当然である。
「もう少し時間が必要だと思います」と言うのは、上司の役割である。
【シーン5】経営者の気まぐれの影響が大きい時
経営者は気まぐれで、短気な人物が多い。時にそれは新しいことを始めるのに必要な性質ではあるが、何かにじっくり取り組むことも会社では同じくらい重要である。
そういった気まぐれに振り回され、部下が困っている時には上司は部下を守らなければならない。
部下にじっくり取り組ませ、自分は経営者にそれなりのものを見せる。これは上司としての信念を持っていれば当然のことである。
【シーン6】優秀な部下だが人間関係の構築が下手な時
優秀だが人間関係の構築が下手くそな人間はどこにでもいる。彼らは成果を出すことができても、人間関係の構築が下手であるがゆえに認められにくい。
彼らの長所を活かし、欠点を無いものとして扱えるかどうかが、上司の力量である。
部下が起こす人間関係のトラブルを自らの責任によって修復し、部下の人間関係の構築を手伝う。周りの批判から彼を守ると同時に、人間関係の構築に目を向けさせる。
それが、上司の役割だ。
部下に成果をもとめ厳しくする、ということは、部下を守る、ということと釣り合いの関係にある。
片方だけではダメなのだ。
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