大学探訪記現代の巨大な建造物は、ほとんどコンクリートで出来ています。ただし、その耐用年数は約半世紀程度、「永く持つ」にはまだ力不足です。どうしたら、劣化しにくいコンクリート、永く持つコンクリートができるのでしょう?

そんな研究をしている人がいます。

名古屋大学准教授の丸山一平さんです。

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丸山さんは簡潔に言えば

「コンクリート構造物は放っておいたらどうなる?それを長持ちさせるには?」というテーマで様々な研究を行っています。ここで、「コンクリートなんて、もう知り尽くされているのでは?」と思ったアナタ。私と同じく、コンクリートに無知だということです。

 

私があまりにも無知だったので、まずは「コンクリート」というものが何なのか、ということについて教えていただきました。結論から言えば、コンクリートはセメントに様々なものを混ぜて固めたものです。

まず、セメントに水を混ぜたものを「セメントペースト」といいます。

「セメントペースト」に細骨材と言われる「砂」を混ぜると「モルタル」ができます。レンガとレンガをくっつけるペースト状のあれです。

さらに「モルタル」に粗骨材と言われる「砂利」を混ぜると「生コンクリート」ができます。これと鉄筋を型に入れて固めて、建造物を作る、というわけです。

 

私が特に意外に思ったのが、できるだけ強度の高いコンクリートを作るには、「コンクリートを早く乾かしてはいけない」ということです。直感的には早く乾かしたほうが良さそうな気がしますが、「コンクリートを水とできるだけ長時間反応させる」ほうが、コンクリートが硬くなります。

したがって、コンクリートを早く乾かさないよう、水をまいたり湿度を保ったりする必要があるそうです。このコンクリートと水の反応を待つ期間を「養生期間」といいます。

コンクリートと水が反応すると水和反応物ができて,コンクリート中に微細な孔をつくりながらお互いにくっついて強度を発現します。

しかし,養生期間を長くすると,その分工事期間が延びてしまってコストがかかるので,「養生期間」は長いほどよいのですが,コストの制約から短くなっています。ですがもちろん、構造物の強度を保つため、養生期間が短くならないように法律でもその条件が規定されています。

なるほど、簡単に作っているように見えて、奥が深い…。

 

 

そして肝心の「なぜ、コンクリートは劣化するのか?」という話です。

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(上は、コンクリート建造物の経年劣化のデータ

Simulation results of nuclear power plant building 2 and 3 in Onagawa site of Tohoku electric power company, Nuclear and Industrial Safety Agency Japan, 2011 (in Japanese).

T. Kashima, Y. Kitagawa, Dynamic characteristics of a building estimated from strong motion records using evolution strategy, J. Struct. Const. Eng. AIJ, 602 (2006))

 

出来立てのコンクリート建造物は完全に固まったように見えても、まだ内部にかなりの水を含んでいます。この水分は何年もかけてゆっくりと蒸発し、コンクリートは徐々に乾いていくのです。

微細な孔を多くもつコンクリートは水分が蒸発すると,固体同士がくっつこうとする力によって収縮していきます。

これは、やまとのりをイメージすると良いかもしれません。乾燥すると小さくなってカピカピになり,強度が強くなります。セメントと水でできたセメントペーストには,大和のりと同じような性質があります。

よって、セメントは乾燥すると縮みます。ですが砂利などの骨材は縮まないので、収縮率の差によりコンクリートの内部にはたくさんのヒビが入ります。

そしてこの「ヒビ」がたくさん内部にできると、コンクリートの剛性が落ちてくる、というわけです。

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(上は、乾燥の度合いによるセメントペースト中の固体と空隙の変化)

 

コンクリートを劣化しにくいようにするには、収縮低減剤などの添加剤をコンクリートに加えたりする方法が取られていますが、実はこの「メカニズム」についてはまだよくわかっておらず、このメカニズムを明らかにしながら、「どうすれば長く使えるコンクリートができるか」を探るのが、丸山さんの研究です。

 

「なぜこの研究を始めたのですか?」とお伺いすると、丸山さんは「んー、自分でもよくわかりません。なんでだろう?」といいます。

そこで、この研究に至る経緯を伺いました。

丸山さんは学部生の頃、建築物のデザインから入ったといいます。ところが学部4年生のときに、「材料が変わると建築物がかわる」ということを知り、次第に建築物の材料に傾倒していきます。

「正直、材料のことは全くわかっておらず、代表的な建材のうち鉄は工学部の材料の分野で手が出せません。その代わり、コンクリートは建築の人間が踏み込んでいっても怒られないし、鉄と違って自分たちで作れる。

実は当初、電子商取引で世界中のあらゆる材料を利用できるような建築設計プロセスの研究をやりたかったのですが、卒論でコンクリートやれと言われ、今に至ります。ほんとうに偶然ですよ」

 

 

ローマ時代からすでに使われていたコンクリートですが、まだまだわからない部分が多く残されています。

現在の大規模建造物の殆どはコンクリートで出来ていることを考えれば、大変インパクトの大きい、まさにフロンティアの研究ではないかと思いました。

丸山さん、ありがとうございました。

 

 

研究にご興味をお持ちの方は、

http://www.degas.nuac.nagoya-u.ac.jp/members.html

までアクセスし、コンタクトをお取りください。

 

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