つい先日、某企業の採用担当の方と話をした。その方は今、「困っている」という。
何に困ってるのかをお聞きすると、先日の飲み会で、「できれば働きたくない」という若手がそれなりの数いた、というのだ。
そんなこともあるのか、と思ったら、働きたくない若者が3割に上る、との調査もあるらしい。
「働きたくない」若者3割、「モーレツ社員」「企業戦士」という言葉を知らない――電通総研の就労意識調査
電通総研は8月13日、働く若者の就労への意識を調べた「若者×働く」調査の結果を発表した。「企業戦士」や「モーレツ社員」という言葉はを知っていた若者は2~3割にとどまっていたほか、「できれば働きたくない」と思っている若者は3割に上った。(ITmedia)
「それで、なぜ困っているのか」と質問するとその方は、
「働きたくないなどと言う人を何故雇ったのか。職場のモチベーションが下がる。採用はどうなっているんだ」と、上の人から叱られたという。
その方は「まったく、何でも採用のせいにするのはかんべんして欲しい」と嘆息した。
思うに、そこには2つの問題が潜んでいる。
1,「できれば働きたくない」という人が、職場全体に悪影響を与えるのか?
2.「できれば働きたくない」という人を事前に見抜くことはできなかったのか?
1.は会社として大きな問題かもしれない。「ひとつの腐ったリンゴが樽全体をダメにする」という英語の諺があるが、モチベーションが低い社員が問題行動を起こすことで、職場全体の生産性が下がる可能性がある。
Googleなどの「優良企業」と呼ばれる会社でも「腐ったリンゴ」は問題視されている。元CEOのエリック・シュミットは著書※1の中で、次のように述べる。
会社の気質は、そこで働く人々の総和だ。だから、素晴らしい気質の会社を作りたければ、従業員に同じ気質を求めなければならない。(中略)
会社の基本的利益を犯すような人間には、毅然とした態度を取らなければならない
また、慶應大学の中室牧子氏は、著書※2の中で「問題児」がクラスに与える悪影響をこう述べる。
一人の問題児によって、一人の児童が新たな問題行動を起こす確率は17%も高くなると推計されている
企業での研究ではないが、問題行動を起こす人間の与える影響が少なくないことを示したデータだ。
つまり、この採用担当を叱責した上司が「やる気のない人間」を会社から排除することを重視しているのは、それなりに合理的な根拠があると言える。
「働きたくない、と発言した社員は、既に上に目をつけられています。まあ、彼らをやんわり退職に持っていくようにするしかないですね。」と彼は言う。
「そうですか」
「もちろん、採用したわれわれにも責任はあります。でも、これからは「働きたくない」なんていう可能性のある人を採用しないように、かなり対策していきます。」
その対策に興味があったので、私はそれを聞いた。
「でも、本音では働きたくない、という人をどうやって ふるい落とせばいいのでしょう。」
「今考えているのは、リクルーターの強化ですね。先輩などには本音を言いやすいですし、できるだけ「選考」と思われないように選考を進めようと思っています。
あとは、グループディスカッションのテーマを「働きたくない人をどうすべきか」にして、反応を見るとか、心理テストを活用するとか、色々とやりかたはあります。まあ、きちんとやればそんなに本音は隠せないですよ。」
「成果」のみならず「姿勢」も多くの企業にとっては大事なのだろう。また、学生と企業のイタチごっこが始まりそうだ。
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