何かも何も興味ありすぎてしかたない!
隕石衝突によって恐竜が絶滅したという説(現在最も確からしい)
生命の火星由来説(まんざらでもないらしい)
などなど隕石にまつわる話は自分の耳にもたくさん入ってくるけれど、そもそも宇宙のどこから隕石が飛んでくるんだよ?
「それは主に火星と木星の間にある小惑星帯から1年間に大体1000個くらい落ちてきてますよ」。
とさも、当たり前のように答えられました。
今回取材に行った深井稜汰くん(左)と鏡味沙耶さん(右)に簡単に言われちゃいました。勉強不足すいません。
彼らはともに 東京工業大学地球惑星科学専攻横山研究室で隕石の研究を行っています。
隕石ってそんなに身近なのか?
深井くん曰く「地球の外側にあるものだったら地球に隕石として落ちてきますよ」。
そう、地球には前述の通り意外にもたくさん隕石は落ちてきています。さらに小惑星帯からだけでなく、火星からもたくさんの隕石が落ちてきていて、例えば火星に大きな隕石が衝突した時に、そこから剥ぎ取られた火星の岩石がやがて地球に落ちてくるそうです。
なるほど、妙に納得しました。(火星に隕石がぶつかったという事実はさておき)
そしてそれらで南極や砂漠に落ちてきたものは古いものでも保存されている場合が多く(ポンと転がっているらしい)、発見されたものが研究所や博物館など然るべき場所に保管され(場合によっては民間のECサイトで売られてたりもする)、彼らのような研究者が分析等に活用しているのです。
なぜ、隕石の研究をしているのですか?
太陽系の形成を知ろうとすると、隕石を調べることはとても有効なんです。なぜならば、隕石は太陽ができたばかりの時(約46億年前)の状態をほぼそのままで残している場合が多いのです。
地球は地表面が非常に活動的なんで、地球の地表面を調べても今の研究ではせいぜい40億年前くらまでしか遡れないのです。隕石はいわば「太陽系のタイムカプセル」のようなものなんです。
なぜ、そんなことがわかるんですか?
太陽の元素はスペクトル分析すること(簡単に言うと太陽光を調べること)で大体わかっているんですが、隕石は地球よりもはるかに太陽と組成が似ていることがわかっているんです。
では、その隕石の研究を通して具体的には何を解明しようとしているのですか?
[深井くんの研究]
僕は、隕石に含まれるネオジムという元素の同位体比の分析を行っています。ネオジム(Nd)というのはいわゆるレアアースの一種なんですが、その元素の同位体比を調べています。(同位体というのは、例えば水素には中性子1つの水素と中性子2の重水素が存在していて、それらは同位体と呼ばれていて、太陽系内であれば比率がほぼ一定に存在している)
なぜネオジムなのですか?
いままではクロム(Cr)という物質を用いて同位体分析をする研究は進んでいて、地球の組成にものすごく似ている隕石と、逆に大きくはずれる隕石があることがわかっているんです。
さらに現在ネオジムを用いて分析している研究者はまだ少なくて、その分析を発展させることによってクロムの分析ではわからなかった隕石の新しい分類ができるかもしれないと考えています。
何が解明されるのですか?
それらを調べると、地球にある隕石が小惑星帯のどの辺りから降ってきたか?の分布ができるかも知れないと考えています。
そのような分布はまだできていなく、今までどこも均質に降ってきていると思われていたものが、小惑星のある場所にかたよっていたのではないか?ということがわかるかも知れないと思っています。
どうなるかは不安ですが、やってみようと思っています。
将来どんな研究がしたいですか?
今はこのネオジムの同位体を利用しての研究をすすめていきたいです。ネオジムの同位体の分析精度をあげて、良い手法を開発して、うまくいけば新しい隕石の分類ができるになっていけばいいと思います。
自分が今おもしろいうと思っているのは、隕石の中でも、地球の組成にものすごく似ているものと、逆に大きくはずれるもがあるんです。なので研究をさらにすすめていけば、隕石から地球がどのようにできたかが今まで以上にわかるかもしれない、さらには生物の出現条件だって…まだ妄想に近いですが、そういう夢を持っています。
[鏡味さんの研究]
私は、小惑星から来た隕石を調べてます。今は小惑星帯にあるどこの小惑星から落ちてきているかがわかっていて、具体的に言うとVestaという特定の隕石の研究をしています。
実際にそこから地球に落ちてきている隕石と、NASAがその小惑星の画像を提供してくれているので、それらをあわせて研究しています。主にはネオジムの同位体比の分析とサマリウム(Sm)とネオジムの元素濃度比(Sm/Nd)を同時に分析することで、隕石の年代測定年代をしています。
何か解明したのですか?
いいえ、まだ解明していないと思っています。地殻の結晶化年代(わかりやすく言うといつその岩石が形成されたか?)を求めていますが、得られた年代がそれを指しているとは限らないからです。
様々な年代測定法によって、おおよその年代はでていますが、どこまで精度よく出すことができ、他の年代と比較することができるかという点では研究が続いています。
研究していてどんなことが楽しいですか?
研究対象の天体の実物(ベスタの地殻そのもの)を使って、手の届かないこと(時間的にも空間的にも)を研究できるといったことです!
お二人共インタビューうけてくださりありがとうございました。研究者に話を聞いていると自分の興味ばかりが先行して、自分の興味でどんどん話が脱線してしまうことが多々あります。
今回、私は火星から隕石が落ちてきてることはうっすらとしか知らなかったのですが、お二人がいろいろ丁寧に説明してくださり、今では「そんな当然だろ!」って気持ちになってます。
そうなんです。でもこの「そんなの当然だろ」って思わせるためには、このような研究者の方々のとても地道な研究があってじはじめて「そんなの当然だろ」って気持ちになるのです。
そして、その新しい発見された知識は、それはその発見した人だけの研究成果というわけでもなく、人間が過去から現在に知を繋ぎあわせて、今自分が生きている現在にようやくそこに辿り着いたというだけに過ぎないのです。
(了)
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ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

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・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
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