その営業チームは、期初以来一度も目標を達成することなく最後の四半期を迎えていた。

 

チームは新米リーダーの下に中堅メンバー1人、新卒の営業パーソンが3人という5人構成だった。

力量の低い新卒メンバーが苦戦をし、中堅メンバーが彼らのマイナスを補完するという状況が10ヶ月続いている。

 

いくら中堅の営業マンでも、一人で3人分をリカバリーするのは難しい。チーム内は未達成が当たり前という雰囲気が蔓延していた。

成績は全社で最下位。新米リーダーは「なぜお前のチームは成果が出ないのか」と迫られる。彼は周囲からのプレッシャーに耐え切れず、期末まで残り2ヶ月というところで体を壊しチームを離脱した。

 

 

限られた資源でいかに目標達成するか

新米リーダーの代わりに急遽チームを任されたのは、それまで新卒のリカバリーに回っていた中堅の営業マンだった。未達により積み上がった借金の山を、残り2ヶ月で返さなければならない。

リーダー不在の今、メンバーはやっと自分の足で立てるようになった新人営業パーソン3人と自分自身。彼に与えられた資源は絶望的に近いものだったが、この状況から目標を達成する策を考えなければならなかった。

 

彼はまず、彼自身がプレーヤーとして走りきる方法を考えた。自分の業務やメンバー育成という仕事を全部捨て、ひたすら営業に徹する。当然ながら、その間メンバーは放置されることになる。

最善策ではなないが、目標達成だけを考えれば有りえない方法ではなかった。

 

しかし彼は思った。そんな方法で目標を達成したところで、メンバーに何を残すことができるだろうか。目標達成は大事だけれど、達成の方法にも哲学があるはずだ。

そんな時、自分が新人営業マンだった頃に先輩からもらった言葉が頭をよぎった。

 

新卒一年目に目標達成に向けてやりきった人と、やりきらなかった人ではその後の人生が変わってくる。

一度負け癖、逃げ癖がついてしまうと、そこから抜け出すことはなかなか難しいんだ。辛くても、苦しくても、自分の弱さから逃げないこと。目標を達成するとはそういうことなんだよ。」

 

彼は、今度はそれを自分が伝える番だと思い、メンバーにこんな話をした。

 

いまさらだけど、「なぜチーム目標を達成しなければいけないのか」をもう一度考えて欲しい。私はこのチームで目標達成がしたい。みんなはどうか。

もしこのチームで目標達成したいと思うならば、個人目線は捨てて、自分がチームに対して何ができるか改めて考えて行動して欲しい。

 

話しながら、今さら目標達成の意義を考えることにどれほど意味があるのだろうと不安になった。だったらこの時間を勉強会やロープレに当てた方が、よっぽど成果が出るのではないのか。

自分の決断がチームの未来を決めると思うと、よく考えたはずなのに迷いが生じてくる。

今この瞬間に何をすべきか見極めなければいけない。 頭ではわかっていても、焦る気持ちを止められなかった。

 

 

人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力

この状況には、京セラの創業者である稲盛和夫氏の言葉が重なる。

人生・仕事の結果は、考え方×熱意×能力という一つの方程式で表すことができます。

「能力」とは、知能や運動神経、あるいは健康などがこれにあたり、両親あるいは天から与えられたものです。

「能力」に「熱意」という要素が掛かってきます。これも、やる気や覇気のまったくない、無気力で自堕落な人間から、人生や仕事に対して燃えるような情熱を抱き、懸命に努力を重ねる人間まで、やはり個人差があります。

これに「考え方」が掛かってきます。掛け算ですから、マイナスの考え方を持っていれば、「能力」があればあるほど、「熱意」が強ければ強いほど、大きなマイナスになってしまいますプラスの「考え方」を持っていれば、人生・仕事の結果は、さらに高いプラスの値となるのです。

昔、私の上司がよくこの言葉を引用して、こんな風に説明してくれた。

 

成果を出すためには、能力が大事だと思われている。いかに技術を上げるか、いかに知識を増やすか。

でも成果とは、能力だけでなく考え方や熱意の掛け算なんだ。 いくら能力が高くても、熱意がゼロだったら成果もゼロだ。間違った考え方をしていれば、間違った方向に成果が出てしまう。

だから、上司は部下に正しい考え方を伝えて、部下の熱量を上げていくことが仕事なんだ。」

 

この中堅営業マンが取った行動は、まさに部下の「考え方」と「熱意」に働きかける方法だった。

 

 

目標未達の原因は「考え方」と「熱意」にある

「なぜメンバーの成果が出ていないかと考えました。もちろん力量不足もありましたが、それよりも原因は”目標を達成しなくても許されるだろう”という甘えと、”どうせ期待されていない”と感じてしまっていることでした。

彼らは数ヶ月未達成が続いてしまったことで、“新人はダメだ”というレッテルを、周りも、自分たち自身も貼ってしまっていたんです。」

 

彼は徹底的に「なぜ目標を達成すべきか」をメンバーと一緒に考えた。そして、新人でも目標は達成できると期待をかけ続けた。

期待をかけられたことをきっかけに、メンバーの目標に対する意識が変わっていった。個人の目標達成のためではなく、チームの目標達成のために何ができるかを考え行動するようになっていた。

 

彼の熱意は一人ひとりに伝わり、チームには勢いが生まれていた。 結果的に彼の施策は成功し、最終営業日に見事目標を達成した。

 

目標を達成できない時、多くの人が能力に原因を求めてしまう。確かに能力は大きな要因の一つだが、一朝一夕に伸びるものではない。

であれば、「考え方」や「熱意」に視点を移してみてはどうだろうか。

そう簡単ではないが、ひとたび「考え方」を変えられれば、マイナスをプラスにすることができる。1の情熱を100に引きあげられれば、百倍もの成果をもたらすことができる。

 

人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力。本当に足りてないものは、一体どれだろうか。

 

 

 

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システム開発やITコンサルティングを経て、
外資系製薬企業で15年以上のITビジネスパートナーとして人事からコマーシャル、 メディカルなど製薬企業の様々な分野のプロジェクトに携わる。
現在はネクセラファーマ株式会社で、システムだけではなく、企業風土改革や業務改善をリードし、
日本発グローバルバイオ製薬企業にむけて、同社の成長基盤の構築に尽力している。

岡田 雄太(ワークワンダース株式会社 CTO)
野村総合研究所に新卒入社後、証券総合バックオフィスシステムやオンライントレードシステムなどの開発に従事。
その後、8 Securities(現SoFi Hong Kong)へ出向し、日本人唯一のエンジニアとして国際的なプロジェクトに携わる。
BOOSTRYでは信託銀行向けSaaSの立ち上げと成長を牽引。
WiseVineではCTOとして開発組織を30名規模に拡大し、プロダクト開発を推進。
2025年4月よりワークワンダース株式会社CTOに就任。AI活用を中心とした開発支援をリードする。


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(2026/01/19更新)

 

−筆者−

大島里絵(Rie Oshima):経営コンサルティング会社へ新卒で入社。その後シンガポールに渡星し、現地で採用業務に携わる。日本人の海外就職斡旋や、アジアの若者の日本就職支援に携わったのち独立。現在は「日本と世界の若者をつなげる」ことを目標に、フリーランスとして活動中。