先日、外国人観光客を自宅に宿泊させる、いわゆる民泊をしている友人の家でビジネスミーティングをしていた。
9:30 am
その日は土曜日だったが、朝から5人のメンバーが集まった。そのうち3人が起業家、もう一人は会社員なんだけどほぼ独立しているような人、そしてフリーランスの私。
いわば今の「新しい働き方」ブームを体現しているような人間たちの集まりだった。
新しい働き方の代表格として副業、フリーランス、起業などがもてはやされているが、実際にうまくいく人は実力と胆力の両方を兼ね備えている人だ。スタバでMacBookを開きクールに仕事をしているように見えるかもしれないが、裏で地道な努力を重ねていたりする。
このミーティングに集まる私を除く4人は、確実に上述の実力と胆力を備える仕事人だ。オフィスの豪華さや会社の肩書きで自分を誇示することはなく、たった一台のラップトップと人間の中身で勝負している。
心底尊敬するし、私もそんな風になれたらな、と思う。
そんな彼らを見て「あー、本当に世の中の働き方は変わりつつあるなぁ。」と呑気に感心していたところ、さらなる衝撃が午後に待っていた。
12:00 pm
「Hello!」
ふと玄関を見ると、Tシャツに短パンというラフな格好の、背の高い白人男性が立っていた。
「ハロー。」私の友人が出迎えた。そう、彼は民泊のゲストである。まるで本当に古くからの友達の家に遊びに来た感覚で現れ、到着して5分も経たないうちに会話が始まった。
出身はオーストラリアで、日本に3週間滞在するという。
「日本ではどこに行く予定なの?」
「特に決めてないよ。」
「え?決めてないの?観光じゃないの?」
「うーん、観光もするけど、仕事もしなきゃだからね。」
彼はソフトウェアエンジニアで、昔は起業もしていたらしい。今はフリーランスとして働いており、アメリカのとある企業から仕事をもらっている。
「これから1週間は東京にいるよ。どっかのカフェで仕事しようと思ってる。来週は京都に行く予定だけど、そのあとは決めていないんだ。しばらくはアジアとかロシアを旅しながら仕事する予定。時差があるから、オーストラリアの経度からあんまり離れたところには行けないんだ。」
この話を聞いて、本当に驚いた。もはや彼を縛るものは経度以外に何もない。
その後、しばらくオーストラリアや日本の起業事情などのテーマで団欒した。彼が特別なのかと思いきや、彼の周りの友達はそんな感覚で仕事をしている人が多いらしい。
「すごいな。新しい働き方のレベルが違うな。世界はもはや “ノートPC持ってちょっとTOKYOのカフェで仕事してくるわ” みたいな時代に突入したんだ……。」
ちょっとした感動を覚えているのもつかの間、さらに世界は私の想像を超えてくる。
3:00 pm
「アロー。」
明らかにノン・ネイティブ英語発音のハローが聞こえてきた。
振り向くとチリチリの髭を蓄え、ダルダルのTシャツを着た男性と、日本人はあんまり被らないだろう麦わら帽子をかぶった女性の、外国人カップルが立っていた。
彼らはもう一つの部屋に滞在しているスペイン人のカップルだ。仕事をしながら日本に観光も兼ねて滞在しているらしい。
カップルで世界を旅しながら仕事する。それだけでも素敵な働き方なのだが、羨むべきは仕事の開始時間だ。どうやら毎日午後3時から仕事をしているらしい(終了時刻を聞きそびれた)。
私自身、フリーになってお昼から仕事をするだけでもちょっとした贅沢感(少しの罪悪感)に浸っていたのに、おやつの時間からとは……。世界は全くもって広いものだ。
世界のノマドは頭の中がボーダレス
オーストラリアのエンジニア、スペインのカップルに共通するのは、特にビジネスのために来日したというわけではないということ。普段の仕事をリモートでやっているだけである。ただそのリモートの距離が遠いというか、国境は超えてしまっている。
『君はどこにでも行ける』(徳間書店)の最終章で、ホリエモンがこんなことを言っている。
おそらく、海外に出られない大人は、「ここなら安全」「ここで十分」「出て行くのは危ない」と無意識に考えているのだと思う。そうじゃない。
何を見たいのか、何がほしいのか。何をやりたいのか。それをはっきりさせないと、いつまでも「外」と「なか」の区切りは消えないだろう。逆に言うと、はっきりさせれば動き出すのは容易い。
現実の「外」と「なか」のハードルは、驚くほど低くなっている。行ける場所に限定はない。どこに行くのも可能なのに、どこにも行けないのだとしたら、とらわれているのは君自身だ。
本当に「出ていく」には、世界は超えなくちゃいけない障害だらけだという、勝手な思い込みを解くことが大切だ。
(中略)
頭のなかの国境を消そう。そうすれば君はどこにでも行ける。
仕事柄、海外に行きたいという相談をよく受ける。その度に「行きたいと思うなら、とりあえず行ってみたらいいんじゃない?パスポートとお金さえあれば何とかなるよ」と言うのだが、実際に行動に移す人は少ない。
多くの日本人にとって国境を頭の中から消すことは、そう簡単じゃないらしい。
世界はちょっとの英語とノートPC、ネット環境と美味しいコーヒーがあればどこでも働ける時代になった。
もしあなたが「新しい働き方」に憧れるなら、一台のラップトップ片手に、いっそ海外のカフェまでフラっと行ってみてはどうだろうか。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
−筆者−
大島里絵(Rie Oshima):経営コンサルティング会社へ新卒で入社。その後シンガポールに渡星し、現地で採用業務に携わる。日本人の海外就職斡旋や、アジアの若者の日本就職支援に携わったのち独立。現在は「日本と世界の若者をつなげる」ことを目標に、フリーランスとして活動中。
個人ブログ:U to GO
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