あなたの周りに、いつも上司にガミガミ叱られている人はいないだろうか。

 

私が過去に所属したチーム、職場、会社では、必ずそのような「なぜか上司からいつもガミガミ叱られてしまう」人が一人はいた。

自分が叱られているわけではないので直接的な害は無い。

とはいえ毎日のように、ミスに対する上司の激しいツッコミが目の前であっては、見て見ぬ振りもできない。

 

個人的には、どんなに部下が仕事ができなくても人前で叱責するのは良くないと思う。

というのも、人前で叱責したことによって仕事ができるようになった例を見たことがないからだ。育成という側面では非効率的だし、周囲へのストレスという面でもデメリットが大きい。上司力の無さを露呈しているようにしか感じられない。

一方で、正直、部下側にも非があるケースが多い。いつも叱られてしまう人たちには、ある共通点がある。

 

 

特徴1:なぜ叱られているか、わかっていない

ガミガミ怒叱られ続けてしまう人の共通点。それは「何を叱られているか理解していない」ということだ。

叱られ続けてしまう人は、見事なまでに上司の地雷を踏む。一度踏んだだけでは止まらず、次の日も、その次の日も同じ地雷を踏み続ける。

どうして同じ過ちを繰り返してしまうかというと、そもそも「なぜ叱られたのか」を理解していないからだ。例えば先日も、訪問先でこんなやり取りを目の当たりにした。

 

—–

 

「この前作ってもらった提案書だけどさ、なんで申し込み手順が抜けてるの?標準資料はいつも入ってるよね。」

「あ、お客さまが申し込み手順は要らないって言ってたんで、抜きました。」

「・・・ん?だから抜いちゃったの?うちにとっては必要なページだよね?」

「はい、ここのお客さんはカクカクシカジカで・・・(延々と事情を説明)」

「いやいや、だからさ。お客さんが言ったことをそのまま鵜呑みにしたの?◯◯さんは何でお客さんがそんな風に言ったか、理由は深掘りして聞いたの?この説明ページがない方が、お客様にとってもうちにとっても良いってこと?」

「えーと・・・そうですね、はい。お客さんの話では、カクカクシカジカで・・・(同じことを更に詳しく説明)」

「いやいや、だからさ!お客さんの話は置いておいて、資料を作る時に自分で考えたのか、って聞いてるの!いつも言っているよね?」

「まぁ、はい。あの、ここのお客さんは特別で・・・。」

 

—–

 

仕事をする時、常にクリティカルに考えているのか、という上司のダメ出しに対して、自分の行動を必死に正当化しようとする部下。

両者の議論は平行線をたどり、交わらなかった。

 

 

特徴2:叱られた時の対応を誤解している

叱られ続ける人は、叱られた時の対応を誤解している。彼らの多くは、上司の話をろくに聞かず、すぐに正論を説明しようとする。

例えば、

「これはミスではありません、正当な理由が私にはあります。◯◯が……」

と言ってしまう人だ。

 

しかしいくら正当な理由を説明しようとしても無駄である。残念ながら上司からすると、その事象はすでに「ミス」として認識されている。

どんなに自分なりの理由を主張したところで、上司の認識がひっくり返ることはない。「言い訳が多いな」くらいにしか捉えられないだろう。

 

それよりも上司が部下に期待することは、自分のミスを認める素直さと、今後改善しようとする姿勢である。

これはクレーム対応に似ている。お客様がクレームを言ってきた時、クレーム処理が下手な人はすぐに正論を主張しようとする。

でもお客様からすると、そんな正論は求めていない。まずはとにかく「こちらの話を聞け」である。

だとすると、上司の地雷を踏んでしまった時は、クレーム対応に追われていると思えばいい。とにかくまずは素直に謝り、相手の話に耳を傾ける。傾けるフリをするのではなく、上司が何を伝えようとしているのか、しっかり理解しようとする。それだけで上司の評価は変わるだろう。

 

 

人の振り見て我が振り直せ

ただ、中には上司があまりに怖すぎて、叱られている最中は頭が真っ白になってしまうという人もいるだろう。

自分が叱られている時に客観的に考えられないのであれば、周りの同僚が叱られている場面をこっそり観察してみよう。

1ヶ月もすれば、上司のパターンも見えてくる。大体いつも同じことを指摘しているはずだ。自分ではそれがよくわからない場合には、上司からの評価が高い同僚に聞いてみるのもありだと思う。

(ただのゴマスリじゃなくて、本当に)上司からの評価が高い人は、上司が何をすれば喜ぶか、ポイントを心得ている。

なぜ彼らはそんなことが出来るのか。

 

 

上司を客と思う

答えは簡単だ。彼らは上司のことを「客」と思って対応しているのだ。

「ただでさえムカつく上司をお客様なんて思えません。」

「そんな社内ばかり見るのではなく、本当のお客様を見るべきです。」

という声が聞こえてきそうだが、もしガミガミスパイラルから抜け出したければ、少し大人になって試してみてほしい。

 

自分は営業パーソン。目の前のお客さん(上司)は一体何を欲しがっているのか。何を提供すれば一番喜んでもらえるのか。

彼らは叱られたことが無いのではない。叱られた時こそチャンスと捉えている。

上司が本当にして欲しかったことは何か、真の要望を分析している。

また上司が機嫌の良い時間帯、好きな考え方、好きな話題、好きな食べ物までも細かく把握し、さりげない会話の中に登場させている。

 

まさに営業の基本である。お客さまに対して自然にできることが上司に対して出来ないということは、どこかで身内意識が働いているからではないだろうか。

家族と同じように、身内だからこそ「言わなくても分かってほしい」という意識が強く働いてしまうのかもしれない。また身内だからこそ、何かを指摘された時、ついつい反抗的な態度になってしまうのかもしれない。

 

 

まとめ

なぜかいつも叱られてしまう人は、そもそも「なぜ叱られているか」の理解にまず努めてみてはどうだろうか。

結局、相手が上司だろうとお客さまだろうと、コミュニケーションの基本は相手の話を聴くことから始まる。反射的に自分を正当化するのをやめて、上司の話に耳を傾ければ、きっと叱られる回数は減るだろう。

 

それでも叱られ続けるのであれば、それはもう完全に上司のストレス発散に付き合わされている可能性が高い。そんな時はさっさと諦めて、上司から一番遠い席に移動するか、早めに帰るか、転職するのが良いと思う。

 

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安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
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(2025/6/2更新)

 

−筆者−

大島里絵(Rie Oshima):経営コンサルティング会社へ新卒で入社。その後シンガポールに渡星し、現地で採用業務に携わる。日本人の海外就職斡旋や、アジアの若者の日本就職支援に携わったのち独立。現在は「日本と世界の若者をつなげる」ことを目標に、フリーランスとして活動中。

個人ブログ:U to GO