「ソーシャルメディア採用」を行っている会社の話を聴いた。と言っても、ソーシャルメディアから応募者を集める、ということでない。

これは要するに「良質なフレンド、フォロワーをどれだけ保有しているか、どんな情報をSNSに発信しているか」を採用の重要な情報の1つとして用いるスタイルの採用活動を指す。

 

まず、採用担当者は応募のあった人のSNSを見る。そしてまず、SNSのアカウントを持っていない時点で、採用の対象から外れる。

「今どき、公開しているSNSのアカウント1つもないのはダメです。アカウントをすべてクローズしている人は、交友関係も小さいのだろうな、と感じます。」と、担当者は言う。

「匿名や、秘密にしたい人もいるのでは?」とお聞きすると、担当者は「まあ、それは勝手ですがウチの会社の採用とは関係ないですよね。」という。

 

「なぜこんなことをしているのですか?」とお聞きする。

担当者は「まず一つは、「良い人の周りには、良い人が集まる」という法則があります」と言った。

「実は、もっとも良い人が採用できるのは、「うちの会社に在籍している良い人」からの紹介でした。だから、SNSでつながりを見て、その人が良い人の知り合いであれば、ポイントは非常に高いです。」

「なるほど」

「それから、交友関係もわかります。どんな人達とつながりがあるのか。社外のネットワークの大きさはどれくらいか、それによって彼のコミュニケーション力もかなり把握できる。」

「そうですね」

「あとはもちろん、本人の投稿です。どのような価値観を持っているのか、差別的な発言をしていないか、客観性を持っているか、そういったこと全てが、判断の基準となります。」

「ふーむ。」

「昔は身辺調査などを使ったりしたこともあったのですが、今はそんなことをする必要はあまりないですね。ウチは性格検査もやっているのですが、SNSで乱暴なことばかりを言っている人は、大抵性格検査でも問題が出ます。やはり統計は正しいですね。」

 

かなり本気の取り組みのようだ。

「合理的ですね。」

「はい、かなり精度が高くて、我々も助かっています。注意しなければならないのは、フォロワー数だけは多いけど、その質が低い、という人もいる点です。」

「フォロワーの質まで精査するんですか」

「こちらも変な人を入れたくないですからね。フレンドやフォロワーの質が低い人は、本人も同様のクラスタに入っている可能性が高いです。本人があまり発言SNS上で発言しなくても、周りに差別的な発言やバイアスの強い発言をしている人が多い場合は、我々は警戒します。」

「本人の了解は取るんですか?」

「見ていることはいいますが、了解はとりません。取る必要もないでしょう、公開情報ですから。ですが、我々もたまに「あー、こんなことをインターネットに書いてしまって、秘密を守れない人なんだな」と感じることは多々あります。最近では、ネットリテラシーの低い人を会社に入れること自体、大きなリスクですから。」

「面接と比べてどうですか?」

「正直、面接の比重はかなり落ちました。SNSに書き込んでいることこそ、素の応募者の姿です。面接でいくら繕っていてもSNS上ではその人の性格が如実に出ます。虚栄心の強さ、周囲への配慮、何に関心があって、どのような信条かまで。正直、面接は形だけでもいいのでは、と思っているくらいです。まあ「どれだけ仮面をかぶれるか」も1つの能力なので、面接をやめることはないと思いますが。」

 

もう一つ気になったことを聞いてみた。

「ちょっと聞きにくいのですが……社員から、「監視されている」という苦情はないのですか?」

「いい大人が、インターネットに書き込んだことを見られて「監視されている」は、あまりにも恥ずかしい言い訳ですよね。そういう使い分けも能力の1つでは?」

「なるほど」

「我々は秘密を持ってはいけない、とは言っていません。ただ、公開情報にきちんと気を配る事ができて、質の高いネットワークを保有をしている人は、有能である事が多い、と思っているだけですよ。」

 

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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)

 

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