長時間労働を撲滅すべし、という人の声が大きいが、それとは別に「長時間労働させてくれ」という人もまた多いのではないだろうか。
そしてその思惑の中心は
「給料が減るのではないか?」
という心配だろう。
私の周りだけかもしれないが、「長時間労働、問題になってますよね。」と振ると
「まあ、いいんだけど、長時間労働禁止になると痛し痒しだよね。給料減るかもだからね。」と危惧する人が意外に多い。
知人のエンジニアも
「昔、業績が悪化したとき残業禁止になった。早く帰れるのは嬉しかったけど、給料はおそらく月7、8万は減ったんじゃないかな。」
という。
確かにリーマン・ショックの頃に残業禁止令が出たとき「給与が減った」という話は少なくなかったようだ。
エンジニア6割が「景気悪化で給与に影響あり」の実感(リクナビNext)
「残業がなくなったため、給料は月に10万円ほど減った」と、愛知県の機械・機構設計エンジニア(28歳)は書いている。基本給は変わらずとも、残業代が減れば、手取り収入の減少につながるのは当然の話。
今回の調査によれば、2008年12月には平均26時間、最大で120時間こなしていた月の残業時間が、09年3月には平均20時間と大きく減っている。また、12月には残業時間「0」という回答が「107人」であったのに対し、3月では「166人」と5割以上増えている。残業時間の削減に伴って、残業代も減る一方だ。12月の平均残業代が「3万3673円」に対して、3月は「2万1919円」。35%のマイナスということになる。
ワークライフバランスの観点からいえば、残業は少ないに越したことはないが、基本給を含む賃金ベースが上がらない中、エンジニアにとっての残業代は生活を維持するための収入源のひとつであったことは間違いない。その意味では、残業代の約4割削減は、エンジニアの生活を直撃することになる。寄せられた声も切実だ。
残業や長時間労働は、単に減らせば良い、という話でもないことは、多くの人は理解しているだろう。
当たり前だが、会社が存続を許されているのは「成果をあげている間」だけである。
では極端な話、仮に「残業」を強引に「絶対禁止」にすると、どうなるのだろうか。
例えば残業を完全に禁止、自宅でも仕事してはならない、違反した場合は営業停止、と厳しい罰則も用意する。そう法律で定めたときにどのような事態が予想できるだろうか?
もともとサービス残業ばかりしていた人は変わらないかもしれないが、残業代がなくなるので、当面の給与は減りこそすれ、増えることはない。
同時に社員にはプレッシャーがかかる。
「1日8時間以内に必ず成果をあげることができる働き方をすること」と。
この帰結は、厳しい時間管理を社員に課すことだ。
「この仕事は◯◯分以内に終わらせる」
「この仕事は◯◯時間以内に終わらせる」
と。
それは場合によってはトヨタが工場でストップウォッチを片手に「動作の効率化」をしたように行われるだろう。
乾いた雑巾を絞るように。
だが、無能な人はそもそも「自己管理」が苦手なので、おそらくそれについてこれない。もちろん、生産性の測定は厳密に成されるため、彼らの給料は下げられる。当然のことながら、比較される相手は「有能な人が、生産性を高めて仕事をしている状態」だ。
すると、今まで以上に生産性の低さは糾弾される。
「この人はどうしようもない」と判断された人は、より単純で、標準化された、頭を使わない「作業」に回される。場合によってはアルバイト、外部委託、もしくはAIなど機械に代替される。
一方で、有能な人は生産性を上げて、場合によっては前と同じくらいか、それ以上の成果をあげるかもしれない。彼らには残業代が減った分、少し還元してもいい。
結局、生産性を高めた結果得られたボーナスやインセンティブは彼らだけに振る舞われる。
それが「信賞必罰」だからだ。
また、プライベートでも差がつく。
無能な人材は、チャレンジが苦手なのでチャンスが転がっていても副業を始めることはない。いつでも商売で成功するのは機知に富んだ人々である。一方、有能な人々は副業でも成功し、あちこちでネットワークを作り、ますます富む。
そして、1年も経てば皆理解するのだ。「全員労働時間が一緒」ということは、「有能な人」と「無能な人」の差が今まで以上に強調される、ということに。
それは、いわゆる「エリート層」と「ワーカー」がはっきりと別れている欧米をイメージさせる働き方でもある。
まあ、皆が望むのなら、そういうのもいいのかもしれない。
個人的には嫌だが。
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