「考える前に行動した方がいい」という人、たくさんいます。でも、それって本当なんでしょうか?

私は、この言葉を「考えこんでしまって動けなくなっている人に対する激励の言葉」、いわゆるスローガンとしては良い言葉だと思っていますが、この言葉を金科玉条として捉える気には到底なれません。ですから、部下に「考える前に行動せよ」という言葉をあまり軽々しく使うのは、少し考えものです。

これは、当たり前ですが、「考える前に行動したら、ダメだから」です。

 

例を挙げましょう。例えば、あなたが巨大な橋を架けるプロジェクトの責任者だったとしましょう。構想、設計の前に、まずは手を動かして橋を作ろう!なんてことはやりません。綿密に計画を行なって、考えてから工事に着手するわけです。

これは、「ソフトウェア作成」でも同じです。きちんとした設計をせずに「とりあえず手を動かして作ろう」というのもアリですが、大抵は後に「メンテナンスが出来ない」であったり、「設計を変更しなければならない」などのトラブルが発生します。

 

また、バスケットボールのスーパースターである、「マイケル・ジョーダン」は、「正しいシュートフォームで練習をしなければ、いくら練習してもまちがったシュートフォームが身につくだけである」と言っています。

 

従って、良い仕事をしようとすれば、綿密に「考える」ということが絶対に必要です。

 

また、ピーター・ドラッカーはその著書である「経営者の条件」においてこう言います。

意思決定は本当に必要かを自問する必要がある。何も決定しないという代替案が常に存在する。意思決定は外科手術である。システムに対する干渉でありショックのリスクを伴う。よい外科医が不要な手術を行わないように、不要な決定を行ってはならない。

優れた決定を行う人も優れた外科医と同じように多様である。ある人は大胆であり、ある人は保守的である。しかし不要な決定を行わないという点では一致している。何もしないと事態が悪化するのであれば行動しなければならない。同じことは機会についてもいえる。急いで何かをしないと機会が消滅するのであれば思い切って行動しなければならない。

もちろん、行動は大事です。しかし行動するかどうかは、常に「条件付き」であることは自明です。

 

これは経営者や、リーダーなどの話だから、自分の部下のような一般社員には当てはまらない、と言うかも知れません。

そうですね。そういう考え方もあります。「一般社員は考えなくていい」「部下はコマ」と考えている会社ではそうでしょう。ただし、部下に自律的に働いて貰いたいなら、話は別です。

「行動する」と同じくらい、「考える」は大事です。あえて言うなら、「考えるのと、行動するのと、同じくらい時間を使っているか」の方が質問として合理的です。

 

「いや、考えてばっかりで、動かない奴が多いんだ」という上司もいらっしゃいます。これもおそらく事実誤認をしています。部下はおそらくあなたよりもずっと「いかに短時間で効率よく成果をあげるか」を考えています。その方法がわからないだけです。「あなたが言った方法では、うまくやれそうにない」と思っているだけなのです。

したがって、上司が言うべきことは、「考える前に行動せよ」ではなく、「このやり方の合理性についての説明、あるいはもっと良い案を出すこと」です。

 

「とりあえず動け」は、最初の一歩を踏み出すためのスローガンとしては有効に機能します。しかし、常にこれを無条件に受け入れるように部下に要求することは、「統制」をマネジメントの方法として使うことの始まりであり、「部下の納得を得られない上司の無能」に過ぎません。

 

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【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
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(2025/6/2更新)