「読書」は知識を手にする非常に効率のよい方法の一つではあるが、あらゆるスポーツに上手な人と下手な人がいるように、あるいは仕事のできる人とできない人がいるように、「読書」という行為にも巧拙がある。

 

読書が下手だと、よい本を勧められても

「読む気にならない」

「面倒くさい」

と、読書を先送りしてしまったり、結局読まなかったりすることが多いだろう。

 

逆に読書が上手な人は、

「とりあえず読んでみる」

「良い本を薦めてくれてありがとう」

と、本からうまく知識を吸収し、豊かな知見を手にすることができる。

 

誤解のないように言っておくが「読書しなければならない」と言いたいのではない。知識を得る方法は読書だけではないし、そもそも読書を「苦行」だと思っている人にとっては、得るものはないだろう。

だが「読書したい」と思っているにもかかわらず、本が苦手な人は、幾つか改めるべき部分があるかもしれない。そして、その本質は「読解力」「読むスキル」と言うよりは、どちらかと言えば「読書」に対する態度にある事が多い。

 

習慣的な行為は「スキル」よりも「考え方」に大きく影響を受ける。だから、読書がうまくなりたいのであれば、以下のことに気を配ると良いだろう。

 

1.「楽しむため」に読む。「勉強するため」ではない。

本来「この本面白いよ」と言われるのは「ポケモンGo面白いよ」と言われるのとあまり変わりがない。「シン・ゴジラ面白かったよ」とも同じだ。読書が上手な人はそう考える。

だが、「この本おもしろいよ」を「勉強しなよ」と同じに感じてしまう人もいる。その人は読書が下手な人だ。

だが、読書は勉強ではない。それは本質的に娯楽であり、趣味である。憶えようとしなくていい、現実に活かそうとしなくていい、仕事に役立てなくていい。活かそうとすればするほど、読書はつらい行為になる。

本は、ただ楽しむために読めばいいのだ。

 

2.「簡単な本」を読む。「難しい本」を読まない。

例えば「レ・ミゼラブル」は傑作ではあるが、読書を普段あまりしない人にこれを薦めるのは「読書嫌い」を作るだけだろう。スキーの初心者をいきなり超上級者コースに連れて行き、骨折させてしまうようなものだ。

一般的にはあまり言われないが、読書というのはできるだけ「簡単な本」を読むことが非常に重要だ。難しい本を読むことはストレスが溜まるだけで、時間の無駄である。

そして読書の上手な人は、自分のレベルに合った本を選択するのが上手である。逆に下手な人は背伸びしすぎてしまったり、「難しい本のほうが良いことが書いてある」と思い込んだりしている。

読書の初心者へは「児童書」や「中学高校生向け」の本は読みやすい上、非常に面白いものも多いので、超おすすめである。もし子供がいれば一緒に読書してしまうのも手だ。

 

3.「興味があること」を読む。「興味が無いこと」は読めない。

読書の根本として、「興味が無いこと」は読めないと知るべきだ。上司から言われた本が読めないのは、自分がそれに興味がないからである。読書が下手な人は、興味のないものを無理やり読むからつらいのだ。

例えば「経営戦略」にあまり興味のない人が、上司から「読め」と言われてしぶしぶ本を読まなければいけない時、戦略に関する本を読めば興味が湧くか、といえばそんなことは滅多に起きない。

そんな時は「自分の興味があること」とオーバーラップさせながら、興味ゾーンを広げていくことが読書の基本的な戦略だ。読書が上手い人は、これを実践している。

例えば「推理小説」が好きな人は、「推理小説」と「経営戦略」が重なった本を試しに読むと良い、例えば以下のリンクのように。

推理小説を読んでいるかのようなビジネス書(ハーバード・ビジネス・レビュー)

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4.「何か1つでも得たものがあればラッキー」で良い。「読了」にこだわらない。

本を読了することそのものには、あまり価値が無い。

実際、本を書いている人自身も「全部読む必要はない」と思っている事が多い。だから、拾い読み、飛ばし読みを前提として読んでも全く問題はない。

読書が上手い人はほぼ例外なくそれを知っている。彼らは「何か1つでも得たものがあればラッキー」ぐらいに思っている。逆に読書が下手な人は、無理をして読み終えようとする。結果、読書が嫌いになる。

「せっかく買ったのだから」とすべて読む気持ちもわかるのだが、一番貴重なものは時間である。読了にこだわるのはやめよう。そうすることで読書が上手くなり、そして読書が上手くなればなるほど、読書が好きになるだろう。

 

5.「無理に本なんか読まなくていい」と思う。「本を読め」に惑わされない。

読め、と言われるとますます読みたくなくなるのが本だ。

「本なんか、読む必要はない」と思っているくらいがちょうどよい。実際、読書が上手い人は、本を情報のチャネルの1つくらい、と思っている人も多い。逆に読書が下手な人ほど「本の情報が最高」と思っている。だから、取捨選択がうまくいかない。

だが、多くのコンテンツと同様に、実際には本当に良い本は一握りであり、時間をムダにすることも多いのだ。

「いい本は少ない、だから無理に本なんか読まなくていい」と認識しよう。「本を読め」という人ほど、逆にあまり本を読まない人だ、ということも充分ある。

 

6.「速読」なんて無意味。「遅読」する。

ビジネス書を読む時に「速読する」と言う方がいる。ただ、私は読書が下手な人にはそれをおすすめしない。

理由は簡単だ。

・速読の技術を身につけることがつらくて、本を読めない人が多く、本末転倒

・本を読むこと自体が目的化する

・面白い本ほど、ゆっくり楽しめるのに、速読したらコスパが悪い

と、正直に思う。「早く読める」は、読書が上手な人が、慣れの結果として得られるスキルであり、それ自体は目的とならない。

また、こんな研究結果もある。

速読は実は不可能だと科学が実証

「現存する科学的根拠によれば、速度と正確さには反比例の関係があり、読み手が読むべき文書にかける時間が短いと、その分だけどうしても理解が劣ってしまいます」とカリフォルニア大学の心理学者であり、その研究論文の著者でもあるElizabeth Schotter氏は述べています。

(ライフハッカー)

 

読書は趣味、読書は娯楽、そう考えるのが最も読書が上手な人であるのは、間違いない。

 

【お知らせ】
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。


<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>

第6回 地方創生×事業再生

再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは

【日時】 2025年7月30日(水曜日)19:00–21:00
【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。

【今回のトーク概要】
  • 0. オープニング(5分)
    自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」
  • 1. 事業再生の現場から(20分)
    保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例
  • 2. 地方創生と事業再生(10分)
    再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む
  • 3. 一般論としての「経営企画」とは(5分)
    経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説
  • 4. 中小企業における経営企画の翻訳(10分)
    「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論
  • 5. 経営企画の三原則(5分)
    数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する
  • 6. まとめ(5分)
    経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”

【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。

【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/7/14更新)

 

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(Vanessa Bazzano