先日、ある会合で「知識」についての話になった。 知識経済の社会においては、あらゆる組織が知識を使いこなすことを要求される。

 

だが、知識をつかいこなす、と言われても

「具体的な行動としては何なのか?」

には迷っているのが、多くの組織での現状なのではないだろうか。

 

その時思い出したのが、ちょっと時期外れだが、あるシステム開発会社の入社式で、管理職の方が新人へした話だ。

「知識を会社で取り扱うこと」について簡潔に説明していた。「Googleで調べればいいや」ではダメなのだ。

 

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本日は入社おめでとうございます。 せっかくですから私は知識についての話をしたいと思います。

先日、某所で 「すぐ役に立つ知識は、すぐに役立たなくなる」という言葉を聞きました。 なんとなく、イメージが湧くでしょうか? わたしは、仕事を思い出して「ああ、なるほどな」と思いました。

 

例えば、システム開発をしていると、わからないことがたくさん出てきます。

ま、もちろんわからないことがあってもwebなどで調べながら、とりあえず入れた知識を切り貼りしていけば、なんとか動くものは作れます。

「なんとか動いたし、まあ仕事は終わったからいいじゃないか。」

そう思う人もいるでしょう。

 

けれど、そういったGoogleで検索できるような「すぐに役立つ知識」ばかりを使って仕事を流していると、環境が変わった時に、対応できません。

皆がよく調べるようなことには対処できますが、例えば言語が変わった、環境が変わった、設計が変わった、トラブルが起きた。そういう時には今まで活躍していた「すぐに役立つ知識」が役に立たないことに気づき、あなたは困るでしょう。

 

皆さんは、知識を扱う職業に就くのですから、そのようなことにならないよう、知識についての扱いに長けていなければなりません。

 

では、具体的にどういった行動があなた方に求められているのでしょう。

意識していただきたいのは、 「知識の一般化」と「メタ認知」、そして「検証」 です。この3つについては常に心に留めておいていただきたい。     詳しく話しましょう。

 

「知識の一般化」は法則を見つけ出して、応用することです。 例えば設計の標準化をしたり、プログラム生成ツールを作ることなどがこれに当たります。

そうすることで、バグを少なくし、コーディングの量を減らすことができます。 あるデバッグの手法が他にも使えないか、とためしてみるのも、一般化の1つです。

このように、一つの知識の適用範囲をどんどん広げてみてください。自分以外の人にも使えるように、知識を拡張してください。

 

一方で「メタ認知」は、自分がどこまで知っているのかを知ることです。

ある関数を使ってみた。プログラムがうまく動いた。そこまでは良いでしょう。 ですが「なぜうまく動いたのか」を知らなければ、知識には決定的な欠落があります。応用も効きません。

「自分は知らない」ということを知っている人と、「まあいいか」とスルーしてしまう人では、一〇年後に大きな差ができるのです。

最初は知らないことが多すぎて、途方に暮れるでしょう。 それで良いのです。あなたはその時、「自分が知らない」ということを知ったのですから。 根気よく取り組んで下さい。

 

さて、最後の「検証」です。

検証とは人の言っていること、そして自分の知っていると思われることに対しても、常に猜疑を投げかけることです。

例えば先輩が「ウォーターフォール型の開発はもうダメだ」と言っていたとします。まあそれはいいでしょう。ですが、あなたがたはそれをそのまま信じてはいけません。

その知識はあくまでも「先輩は」ウォーターフォール型に対して否定的だ、という程度のものです。真の知識は検証の上に成り立つのですから、自分で試して、触って、それを確かめるまでは知識ではありません。

 

また、あなた方は1つのプロジェクトで成功した手法を、別のプロジェクトに使おうとするときもあるでしょう。

そんな時に後輩から「本当に大丈夫ですか?」と聞かれた時、何も考えずに「大丈夫だ」と言ってはいけません。それはまだ未検証の知識です。

「うまくいくかわからないけど、試してみて、検証しよう」と言わなくてはいけません。

よく、過去の成功例に囚われた経営者がおかしなことをいいますが、あれと同じです。過去は過去、今は今と切り離して考えてください。

結局のところ知識は「知ったかぶって」も、良いことは何一つ、ないのです。

 

これからあなた方は多くの知識に触れ、それを活用しなければならないでしょう。

そんな時、この3つはきっとあなた方の力になるはずです。

健闘を祈ります。

 

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Hernán Piñera