家電量販店で働いていたときのこと。

 

クレーム処理が抜群に上手い先輩がいました。

激怒して来店されたお客様も、その先輩が担当すると不思議と落ち着き、最後には笑顔で「また来るよ」と言って帰られる。まるで嘘みたいな、テレビやマンガでしか見ないような展開。

ある日、我慢できずに先輩に聞いてみました。なぜそんなにクレーム処理が上手なのかを。

 

先輩はひと言。

「お客様に共感すればいいんだよ。」

怒っている人に共感する?

 

意味がわからなかったのですが、もう少し詳しく聞くと、少しずつわかってきました。

先輩曰く、個人的なミスが招いたクレームは誠心誠意、一生懸命に謝罪することが大切。しかし、自分が直接の原因ではない、つまり外的要因の場合は別の問題なのだそうです。

例えば、家電量販店で言えば「初期不良」の問題があります。新品の商品でも、ある一定の確率で初期不良が起きてしまいます。家電メーカーも厳しいチェックをしているの思われますが、どうしても起きてしまうもの。

これが起きた場合、買われた人は買ったお店に商品を持込み、交換を申し出るのがよくある流れだと思いますが、正直なところ腹が立ちますよね。私だってそうです。

お金を払って商品を購入し、自宅に戻っていざ使おうと思ったら使えない。ものすごくがっかりします。

その後、

・再度お店に行って
・店員さんに事の顛末を話して
・交換してもらって
・自宅に帰ってようやく使える

という手間がかかるわけですから。激怒する気持ちもわかります。

受付カウンターで待たされたり、遠方から来ている方だと、その怒りもより強くなるわけで、大きな声を出されることも珍しくありません。

「お宅で買った商品が壊れているんだけど!」
「安売りしてるからって不良品を扱ってるんじゃないのか!」

なんて声が店内に響き渡ります。

クレーム処理が苦手な店員だと、謝罪と交換のことしか頭に浮かばないわけですが、それだとお客様の怒りは収まらないわけです。

なぜなら交換してもらっても、別に得をするわけではなく、当たり前のことだから。普通に使えると思っていた物が使えなくて、そのためにわざわざ再度来店している怒りがあるから。

 

そこで、先輩のメソッドです。

お客様に共感する。つまり、自分もあなたと同じ考えです、完全に同意しますと表現することです。

あえてわかりやすく書きますと、

「壊れているよ。ひどいじゃないか!」
「本当だ。ひどいですね!」

ということです。

つまり、なぜ怒っているのかを理解し、それに同意する。お客様も、ある意味では初期不良だから仕方がないと理解している。でも、この怒りをどこにぶつけていいのかわからない。

だから、その怒りを一緒に分かち合う。

・どうしてこんなことが起きるのか
・メーカーのチェックが甘いのではないか
・お客様のお気持ちを必ず上司とメーカーに伝えます

私も一緒になってこの問題を解決したいと思います。あなたの味方です。

これができるかどうか。

 

お客様は、個人で店舗と戦っているわけで、そこに一人でも店員の味方がいると思えれば、確実に気持ちは落ち着くと先輩は言います。

さらに、この店員さんは味方だと思ってもらえれば、次から自分に相談してくれるようになり売上にもつながると、少しだけ悪い笑顔で教えてくれました。

怒っている人に対しては、とにかく謝ることが大事だと教えられることが多いですが、むしろその人と同じ気持ちになってあげて、一緒に怒ることで解決するなんて、考えたこともありませんでした。

おかげさまで家電量販店を退職してからも、様々な仕事やプライベートでこの方法は役に立っています。

みなさんはどう思いますか?

それではまた。
ご存じ、ゆうせいでした。

 

 

【お知らせ】
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。


<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>

第6回 地方創生×事業再生

再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは

【日時】 2025年7月30日(水曜日)19:00–21:00
【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。

【今回のトーク概要】
  • 0. オープニング(5分)
    自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」
  • 1. 事業再生の現場から(20分)
    保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例
  • 2. 地方創生と事業再生(10分)
    再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む
  • 3. 一般論としての「経営企画」とは(5分)
    経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説
  • 4. 中小企業における経営企画の翻訳(10分)
    「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論
  • 5. 経営企画の三原則(5分)
    数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する
  • 6. まとめ(5分)
    経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”

【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。

【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/7/14更新)

 

【著者プロフィール】

名前: ゆうせい 企画、執筆、編集、モデルを提供する「カンパニオ」代表。

ぱくたそでフリー素材モデルとして不倫素材や、記者風素材を提供している。映画大好きの愛妻家を自負しているが、恋愛映画や恋愛系コラムは苦手。とにかく水曜どうでしょうが大好きでしかたがない。

Twitter:W8HeBCLk_400x400のコピー @wm_yousay

ブログ:http://huniki.hatenablog.com/「雰囲気で話す」