上に立つ人間にとって最も取り扱いが難しい物の一つが、人のやる気である。やる気は、圧力をかけても、カネを与えても、福利厚生を整えても、教育をしても、そして、仕事が面白くあったとしても、それだけで喚起できるようなものではない。
だから、経営者や管理職はどうやったら「人のやる気」をあげることができるのか、悩み続ける。
そして、そのような悩みに対して、インスタントな手法を欲する人は多い。例えば、最近多いネタとしては
- 人の話をきちんと聞く
- 否定しない
- ビジョンを語る
- コミュニケーションの回数を増やす
などだろうか。しかし、残念ながら、これを真似しても、全く部下のやる気は上がらない。まして、人に対して、「これをやれば人のやる気が引き出せる」などという単純な解を信じている人はおめでたいというべきだろう。
人のやる気というものは大変複雑なもので、コントロールしようと思ってできるものではない。コントロールできるのは、自分の振るまいと、考え方だけである。人のやる気はその結果にすぎない。
したがって、「人のやる気が上がらない」ということであれば、人に対して働きかけを行うよりも、まず自分の振る舞いを「立派な人の振る舞い」変えなくてはいけない。
では、どのように変えるのか。
もちろん、法則はない。しかし、こういったものは長い歴史の中で普遍的にリーダーに必要とされてきた資質を学ぶことで得ることができる。2000年、1000年と受け継がれてきた書物の中には「人間の振る舞いに関する原則」がかならず存在する。
それが、経営者に「古典」が好まれる理由だ。
例えば、ローマ帝国の創始者であるユリウス・カエサルの発言はリーダーにとって必要とされる振る舞いを学ぶことができる。
”カエサルの妻たる者は、疑われることさえもあってはならない。”
現代風に読み替えれば、「社長の側近たるものは、社員から疑われることさえ会ってはならない」ということだろう。
また、アメリカ建国の父の一人である、ベンジャミン・フランクリンの言葉も現代に継がれている。
”生きるために食べろ、食べるために生きるな”
「人は金では釣られたくないと思っている」ということか。
「名言を取り上げたり、それを実践したりすることが望ましい」というつもりはない。
しかし、「多くの人がこれに共感するからこそ、この言葉が受け継がれている」と見るのは問題無いだろう。極端なことを言えば、事の真偽はともかく、少なくとも「このような人物を皆が理想としている」という情報を得られるところに、古典の価値がある。
「古典を読め」という上司や経営者はとかく煙たがられるが、一読する価値はあるのではないだろうか。
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【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)