いつも変化したがっているのに、なんにも変われない――そういう「変化が大好き人間」が、案外たくさんいる。

 

「どんどん変化しようとするほど変わっていける」、なんて思っていませんか?

変化をやり遂げられる人には常識で、変化をやり遂げられない人がほとんど気づいていないことがある。それは、「どんどん変化しようとしていると、かえって変化できない」だ。

 

自分自身や組織を変えていきたいなら、なにか新しい事をスタートする必要がある。そこまでは間違っていない。

 

だが、つねに新しい事に取り組んでいれば上首尾に変化していけるかといったら、そうとも限らない。

「私はいつも新しいものを求めている」と言っている人が何も変わらないまま、いたずらに年を取り続けているのを、あなたも見たことがあるはずだ。

変化を追い求めているはずなのに、彼らはどうしてああなってしまうのだろうか。

 

その原因は、彼らが変化を求めるあまり、頻繁に方針をひっくり返し過ぎることにある。

 

たとえば、航海中の船のキャプテンが「南西に進め」と命じて、すぐに「いや南東だ」「北西に」「ここからは南南東に進め」とひっきりなしに進路を変更していたらどうなるだろうか。船は同じ場所をグルグルと回り続けて、ほとんどどこにも進まないだろう。

どこかにたどり着きたかったら、ひっきりなしに進路を変更してはいけない。同じ向きに向かって進み続ける時間が絶対に必要になる。

 

ところが、このせっかちなキャプテンとほとんど変わらないことやっている「変化大好き人間」の人がいる。図で示すと、以下のような感じだ。

スクリーンショット 2016-08-30 2.58.15

 

変化を望むあまり、新しいアイデアを耳にするたびにそれに飛びつく人の行動の軌跡は1.のようになる。東に助言者の言葉があれば東に・西に有望な資料があれば西に――そうやって次々に変化を実行しようとする人や組織は、えてして、このように右往左往を続ける。変化だ改革だと口にしていても、ほとんど何も変えられないし変わらない。

 

ときには変化をこらえ、舵取りに慎重な2.のような人や組織のほうが、まだしも変化を成し遂げられるというものだ。

 

この図が示しているように、目先の話に惑わされてコロコロ方向を変える人のほうが、変化と言える変化を実現しにくいのである。本当に変化を実現したかったら、「ここぞ」というタイミングで「これぞ」という変化を採用し、いったん採用したら、しっかり時間をかけなければならない。

 

2.が示しているように、ときには間違った方向に向かってしまうこともあるだろうし、迷走する時期もあるだろう。途中で生じた問題に対して、少しばかりの軌道修正があっても構わない。けれども、ある方向への変化を実現したいなら、一定期間、同じ方向に向かって走り続ける時間はどうしても必要になる。

 

 

変わっていける人や組織に必要なもの

以上を踏まえて、変わっていける人や組織に必要な資質を考えてみる。

第一の資質は忍耐強さだろう。

変化や改革を実現するためには、どうしても時間がかかる。ということは、目に見える結果がすぐに出なくても、同じ方向に向かって走り続けられるだけの忍耐強さがなければ変化は難しい、ということだ。

小手先の方針変更がすぐ結果となってあらわれて来ないと気が済まないようでは、1.のように、同じところをグルグルするしかなくなってしまうだろう。忍耐力のない人には変化する力が無い

 

第二の資質は自省能力だろうか。

同じ方向に向かって走り続ければ人間は変わっていけるといえ、好ましくない方向に突っ走り続けるのは良いことではない。

だから単に忍耐強いだけでなく、自分がどういう方向に変化しているのか・その変化が好ましいものなのかを顧みる力の無い人は、とんでもない方向に変わっていってしまうかもしれない。そういう自省能力を欠いているけれども忍耐強い人は、なんらか変化はできるかもしれないが、なかなか危険でもある。

 

現代人は「変化」を良いことだとみなしがちだし、移り気な現代社会では、その認識はある程度正しいだろう。けれども、その「変化」を実際に成し遂げるためには、相応の忍耐力や自省能力が求められる。

ところが、えてして変化や改革を望んでいる人ほど、そうした忍耐力や自省能力を欠いていたりするのだからかなわない。変化をさほど望んでいない人のほうがどんどん変わっていけて、変化を渇望している人のほうがいつまでも同じところをグルグルしているのは人間世界ではありがちなことで、このあたり、皮肉だなぁと思う。

 

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東京大学経済学部卒業後、ドイツ証券に入社し投資銀行業務に従事。
2020年に株式会社TOKIUMに参画し、当時新規事業だった請求書受領クラウド「TOKIUMインボイス」の立ち上げを担当。
2021年にはビジネス本部長、2022年より取締役に就任し、経費精算・請求書処理といったバックオフィスDX領域を牽引。
業務効率化・ペーパーレス化の分野で多くの企業の課題解決に携わってきた実績を持つ。

安達 裕哉 氏(ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO)
Deloitteで大手企業向けの業務改善コンサルティングに従事した後、監査法人トーマツにて中小企業向け支援部門を立ち上げ、
大阪・東京両支社で支社長を歴任。2013年にティネクト株式会社を設立し、ビジネスメディア「Books&Apps」を運営。
2023年には生成AIに特化した新会社「ワークワンダース株式会社」を設立。生成AI導入支援・生成AI活用研修・AIメディア制作などを展開。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計71万部を突破し、2023年・2024年と2年連続でビジネス書年間1位(トーハン/日販調べ)を記録。


日時:
2025/5/16(金) 15:00-16:00

参加費:無料  定員:50名
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。


お申込み・詳細
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(2025/5/8更新)

 

【プロフィール】

著者:熊代亨 ←名前をクリックすると記事一覧が見れます

精神科専門医。「診察室の内側の風景」とインターネットやオフ会で出会う「診察室の外側の風景」の整合性にこだわりながら、現代人の社会適応やサブカルチャーについて発信中。

通称“シロクマ先生”。近著は『融解するオタク・サブカル・ヤンキー』(花伝社)『「若作りうつ」社会』(講談社)など。
twitter:@twit_shirokuma 
ブログ:『シロクマの屑籠』

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