少し前のことだ。あるイベントで「40歳になるまで成果を求められてこなかったオジサン」と遭遇した。
彼は新卒でその会社に入り、さしたる競争もせず毎年の定期昇給という甘い汁を吸いつづけ、40歳となった。ガチ安定(だった)企業に在籍していたので、そこそこ給料もいい。
たまにこういう人と遭遇すると、
成果を出す厳しさも知らず、
リストラの脅威に怯えることもなく
理不尽な上司からいじめもなく、
呑気に40歳まで仕事をしてきているので「本気で他では生きていけない人」が出来上がっている事を知る。
私は彼から「そんな働いてどうすんですか?大変ですねぇ」と、上から目線で同情された。
まあ、本音を言えばその時は若干腹が立ったが、もちろん彼を卑下するつもりはない。彼は彼の人生を生きているだけである。
だが、30前後ですでにバリバリ成果をあげ、業界でそれなりに名前を知られているような人と比較をするとあまりのちがいに唖然とした。
そう言った若手はは、常に自分に成果をあげることを厳しく課し、妥協のない仕事を心がけている。上司とぶつかることもしばしばで、常に新しいチャレンジに身を晒し、隙があればより大きな責任を引き受けようと虎視眈々である。
こうして働いて10年も経たないのに厳しい競争に身を晒している人がいる一方で、働いて20年にもなるのに、大して成果も出していないのに呑気に「今年はボーナスが少なかったな―」とか言っている人がいるわけである。
当時の私は理不尽な上司に苦しめられていたこともあり、「こいつ……世の中舐めてるな」と、一人で勝手に怒っている、大変狭量な人間であった。
ただ、考えてみれば彼は悪いわけではない。彼のまわりの人間は皆、多かれ少なかれ安定の中で安穏と生きてきたのである。彼に競争という価値観が生まれなかったことを本人の責任とすることは些か酷であると言うべきだろう。
ところが先日、彼の在籍していた会社がリストラを始めていることを知った。
対象者は40歳以上、ちょうど彼は45歳頃だろう。対象者となる年齢層だ。「あの会社もリストラか……」と、衝撃を受けた。
彼はどうしているのだろうか。リストラをうまく免れて、会社にしがみついているのだろうか。それとも、クビになってしまい、早期退職に応じて退職金をもらい、転職活動をしている最中だろうか。
定年まで彼はあと20年。とても逃げ切れる歳ではない。
現在は、企業の寿命が人の働く長さよりも短くなっている時代だ。
本誌調査が明らかにした企業の寿命――1企業が繁栄を謳歌できる期間――は、平均わずか30年。経営者が企業家精神を失う時、企業は、たちまち衰亡の途を転落し始める。
(日経ビジネス)
社会人人生は40年以上だ。
そう考えれば、社会人人生のどこかで必ず厳しい勝負をせざるを得ない時が来るはずである。
歳をとればとるほど、一般的に人は頑なになり、そして親身になって教えてくれる人も少なくなる。
つまり、40歳を超えて「これから頑張ろう」と心を入れ替えたとしても、プライドを捨てて若手に頭を下げ、教えてくれる人を探さなければならない。
人がどう考えるかは自由だし、怠けた結果として人生がどうなるかは、その人の責任だ。
だが、40過ぎて上のようになるのが嫌ならば、20代、30代で体力があり、そして教えてくれる人を持てるうちにひたすら努力と実績を積み上げなければならない。
「良い学校に入り、良い企業に入れば安泰」そんな感覚が持てた時代は終わった。よく言われている話だが、そんなことを、ふと実感した。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】 ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。
(2025/6/2更新)
こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ——
「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。
【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
・安達裕哉Facebookアカウント (安達の最新記事をフォローできます)
・編集部がつぶやくBooks&AppsTwitterアカウント
・最新記事をチェックできるBooks&Appsフェイスブックページ
・ブログが本になりました。
(kathuw56)