「ブラック企業」について考察する機会が増えているのだが、先日某所で議論をした所、ある疑問が提示された。
すなわち、ブラック企業における「加害者」はだれなのか?という問いである。
その場にいた誰かが、「そりゃ経営者でしょう。企業文化は経営者が作るものですから」と言う。
なるほど。
確かにワンマン経営者が長時間労働を賛美し、労働に対する奉仕を強制する、というわかりやすい構図を想像することもある。
某外食チェーンの社員が入社2ヶ月で過労で自殺したのも、トップの残した企業文化によるものだろう。
しかし、今回の電通のような話になってくると、多少様相は変わってくる。
企業文化はトップが作るものというよりは、「伝統的に受け継がれた、何かしらの共有されたコンセプト」であるから、実際には「体質」と呼ぶべきものだろう。
体質を体現するのは社員一人ひとりであり、その場合は「社員すべて」が加害者ということになる。
もちろん、責任を問われるのは上司や幹部だろう。だが、隣の席で「長時間労働は当たり前」と言うような顔をして働いていた同僚が加害者でないと、だれが言い切れるだろうか?
その場の方が言う。
「では、トップや社員たちの責任を問えばよいのでしょうか?」
その疑問に対して、別の誰かが言った。
「トップや、社員たちを長時間労働に駆り立てるものって、何でしょうね?」
「……多分、いくつかあります。1つは出世競争、もう1つは残業代を稼ぐため。あとは……顧客の要求ですよ。」
「でも……、出世や残業代なら、おそらくここまで過剰に働く人は少ないでしょう。本質はお客さんとの関係ではないですかね。そして経営者も顧客の要求には逆らえない。会社を潰さないため、会社を伸ばすため、経営者も必死なんですよ。」
ため息を付いて、一人の人物が言う。
「そこまでして、お客さんの要求に答えなくてはいけないんですかね。」
対面に座っていた人が言った。
「答えなくちゃダメでしょう。Amazonは当日品物を持ってきてくれる、コンビニエンスストアは年末年始や夜中もやっている。自動車のような高度な機械をだれでも買うことができ、鉄道の運行は秒刻みの正確さ……これらを実現するためには相応の代償が必要だということでしょう。」
「つまり、責任は消費者にあるということでしょうか?」
「そうは言っていません。しかし、社会と消費者のニーズに対して、「人に負荷をかけて実現する」では、今回のようなことはなくならないでしょうね。」
消費者たる我々は過剰な要求を企業に突きつけていないだろうか。
取引先に無理を言っていないだろうか。
因果応報とはこのことかもしれない。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

ティネクト代表の安達裕哉が東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。
ティネクトでは現在、生成AIやマーケティング事業に力を入れていますが、今回はその事業への「投資」という観点でお話しします。
経営に関わる全ての方にお役に立つ内容となっておりますでの、ぜひご参加ください。東京都主催ですが、ウェビナー形式ですので全国どこからでもご参加できます。
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
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