アップルを作った2人の人間のうちの1人はスティーブ・ジョブスだが、もう一人をご存知だろうか。
もう一人の人間の名はスティーブ・ウォズニアック。彼は天才的なエンジニアだ。この世に「パソコン」を生み出したのは彼なのだ。
スティーブ・ジョブスは、彼の生み出したものをうまく販売し、世界一のパソコンメーカーを作り上げた。それが今のアップルの前身のアップル・コンピュータだ。
そのウォズニアック氏が、自伝を書いている。
彼がこの本を書いた理由が述べられている。
”僕について世の中でいろいろと言われていることには間違いが多すぎる。アップルとかその歴史について書かれた本も、間違いばかりでいやになってしまった。大学を中退したりとか(していない)、コロラド大学から放校になったとか(なってない)、スティーブと僕が高校の同級生だったとか(何年かずれている)、初めのころのコンピュータをスティーブと僕が一緒に作ったとか(僕が1人で作った)さ。”
とかく、成功者については美談を周りが作りたがるので、彼の言っていることには多くの真実が含まれているのだろう。
その真実に興味があり、本を手にとってみた。
その中で彼が面白いことに触れている。
「アップルⅡ」というコンピュータは世界一売れたパソコンだったのだが、その後継機たる「アップルⅢ」は、さっぱり売れなかった。(彼は、今のお金で10億ドルは損をしたと試算している)
なぜ大成功の後に大失敗が待っていたのか。
その理由を彼はこう述べている。
”アップルⅢは、開発体制がエンジニア1人とか、数人の協力とか、そういうものじゃなかったからだ。アップルⅢは、マーケティング部門主導の委員会形式で開発された。社内で力を持ち、自分がいいと思うアイデアにお金と資源を投入させられるエライさんたちだ。そう、コンピュータがどうあるべきかという自分のアイデアにね。”
マーケティング部門は、自分たちが必要だと思うあらゆる機能を、一台のコンピュータに詰め込んだ。
しかし、そのコンピュータは、アップルⅡとの互換性にかけ、信頼性も低かった(よく故障した)。
ウォズニアック氏は、こう振り返る。
”今思い出してもあぜんとするよ。あんなの、エンジニアだったら絶対にやらない。いや、そういう意味では、まともな考えの人がやることじゃない。大きな会社では、こういうやりかたをするのかって、ぼくは幻滅したね”
そして、アップルはその後、スティーブ・ジョブスが復帰するまで凋落の一途をたどることになる。
”スティーブと僕は、エンジニアリングを中心とした会社を考えていたんだ。エンジニアを上流階級のように処遇し、その結果、HP社が手にしたと思われるすごい士気を持つところにしたいって思ったんだよ”
しかし、現実は逆の方向へ走りだす。
”エンジニアが好きなものを作り、マーケティング部門がなんとかしてそれを売る方法を見つけるっていうのとは、正反対の場所さ”
マーケティング部門は会社における重要な部門であることは間違いないが、「マーケティング部門主導」であったり、マーケティング部門が現場に対しての力を持ちすぎているような会社は、注意が必要なのかもしれない。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
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3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)