例えば期末の人事評価で。こう言われたとする

「5段階評価で、あなたは2ね。ダメっていう感じ。」

真面目に仕事をして来たのに、突如そう言われる。

当然「ちょっと待って下さい、なんで2なんですか?」と抗弁するだろう。

 

すると上司は答える。

「あなたの担当顧客からクレームが一回あったから」

「どの客ですか。」

「それは、教えられない。状況だけは共有しとくから、報告書を読んでくれ。」

あなたは憤慨する。

「いやいや、教えられないってことはないでしょう。責任を持って評価する立場なら、それを教える必要があるはずです。中には難癖をつけて、値引きしろと無理を言ってくる客もいるでしょう。」

「いや、教えられない。」

「……。」

 

上司は言う。

「悪いけど、あなたの意見は聞けない。あのクレームはウチにとっては大口の取引先で、絶対に機嫌を損ねちゃまずいんだよ。」

あなたは詰め寄る。

「お客さん、お客さんって、上司たるあなたの見解はどうなんですか。あなたが責任者でしょう?」

 

上司はモゴモゴ言う。

「いやさ、お客さんは神様だよ?」

「納得行きませんよ。あなたがどう思ってるか聞いてんですよ。評価に責任取れるんですか?」

「まあまあまあ、我慢してよ。」

こうしてあなたはめでたく減俸された。

「クソ上司……」

とあなたは言う。

 

この話が「最低の話」だと思っただろうか?

場合によっては「労基署かどこかに訴えてやろう、裁判しても構わない」と思う人もいるかもしれない。

 

「無責任な上司」につけられた評価に納得する人はまずいないだろう。

ほとんどの人は、「責任を伴わない評価は、聞くに値しない」と思うはずだ。

 

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「口コミサイトは最低だね。」

私が知る飲食店の店主の殆どの方は、こう言う。

 

知人にそれを話すと、「悪い評価がつくからじゃない?」と言うが、そんな単純ではない。例え良い評価をもらっている店でさえ、等しく「口コミサイトが嫌い」という。

特に個人で頑張っているような良い店の店主は、そのように言う。

「口コミサイトからは、はっきり言って来ないで欲しい。営業妨害だ。」

 

なぜほとんどの飲食店の店主は等しく「口コミサイトが嫌い」なのだろうか。

話を総合すると、おそらく店主たちは「口コミ」の影響力を認めつつも、いや、影響力があるからこそ、口コミサイトを「公正ではない」と思っている。

 

つまり、冒頭の話と、全く構図は同じだ。

「きわめて偏った少数の意見が、顧客全体の意見であるかのように見える。しかも、口コミサイトは評価に対して責任を取ろうとしない。状況は公正ではない」

と、感じている。

 

口コミサイトに書き込む人の大多数は匿名であり、しかもサイトそのものは評価に対して責任を取らない。そんな状態が許されている。店主たちが憤慨するのも無理はないだろう。

 

 

もし冒頭の話が理不尽であると感じたなら、「だれも責任を取ろうとしない、匿名の評価」をあてにするのはやめたほうがいい。

そんな行為に加担していると、自分がそんな目にあった時に助けてくれる人は、誰もいなくなるのだから。

 

 

 

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