本人が望んでいない形で他人がセクシュアリティを暴露することをアウティングという。

アウティングは様々な問題をはらんでいる。

秘密を暴露されることは誰だって嫌だろう。ましてアイデンティティに深く関わる部分である。本人に与える打撃は相当大きい。プライバシー侵害にもつながるし、マイノリティであるということから社会的にもつらい思いをするかもしれない。

今回はアウティングの問題から思うところを書いていきたい。

 

アウティングの何が一番問題かというと、私は「本人が語っていない」ことだと思っている。もちろん秘密にしていることが知られてしまうことも、セクシュアリティというアイデンティティに関することが意図せず伝わってしまうことももちろん大きな問題だ。

だが何より問題なのは、本人が自分で伝えていないこと。本人を無視していることだと思う。たとえそれが秘密にしていることでなくても、セクシュアリティに関することでなくても、本人のことを語れるのは本人だけであるということを忘れていないだろうか。

 

噂はあくまでも噂である。学生の頃もそうだったが、会社で働いていても、噂はたくさん耳にする。大半は良くない噂である。他人の良くない噂話をしている時は、とても楽しい。

つい盛り上がってしまう。だが本人を前に噂話をすることはできない。これはつまり本人抜きに話が盛り上がっているということであり、本人の口から語られていないということでもある。

 

噂話をすること自体を否定するつもりはない。悪いことだと言うつもりもない。でも、できればしたくない。私もついしてしまうけれど、「会話の楽しみ方がこれでいいのか」とふと思ったりする。

結局、他人の噂話ばかりするということは、自分について語ることができないからなのだろう。一人称で語ることができないから他人をネタにするのである。

 

他人をネタにするという観点からもう1つ。噂は本人のいないところで話されるものだが、本人を目の前にしてネタにするということもある。自虐ならぬ他虐である。

デブ、ハゲ、ブスといった自虐ネタは時に笑いを誘うが、自虐的にそう言っている人に対し、他人が言ってもいいのかというと必ずしもそうではない。

完全に開き直っている人は気にならないのかもしれないが、多くの場合、自分がネタにするのはよくても他人には言われたくないと感じているだろう。

 

そういえば、ゲイの友人がこう言っていた。

「俺は自分で自分のことを“ホモ”と言うことがあるけど、これは完全に自虐ネタだからね。自分で言うのと他人から言われるのは違うから。だから他人から言われるとイラっとするし、少し悲しい」

(※ホモは差別用語だとされており、言われると不快に感じる当事者が多い。)

 

これをわがままだと言ったり、「自分で言っておきながら人には言われたくないのかよ」とツッコミを入れたりする人がいるのなら、それは違うと言いたい。自虐は自虐だからネタになるのであり、他虐は単なる加虐である。

他人をネタにするのではなく、常に自分をネタにしていきたい。笑いをとろうというわけではなく、一人称で語りたいということだ。自分が見聞きしたこと、経験したことについて、自分で考え、自分の言葉で発信するということが会話の基本になったら、それはとても楽しいコミュニケーションだと思う。

 

「自分で見て、自分で考えて、自分の言葉で発信する」

 

文字にすると簡単そうだけれど、実は結構難しいことなのだと思う。なぜなら、その方がラクだから。自分が傷つくこともないから。水は低きに流れ、人は易きに流れるというが、流れた先にあるものを見越して進んでいきたいものである。

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ではまた!

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安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
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(2025/6/2更新)

 [著者プロフィール]

名前: きゅうり(矢野 友理)

2015年に東京大学を卒業後、不動産系ベンチャー企業に勤める。バイセクシュアルで性別問わず人を好きになる。

著書「[STUDY HACKER]数学嫌いの東大生が実践していた「読むだけ数学勉強法」」(マイナビ、2015)

Twitter: 2uZlXCwI24 @Xkyuuri

ブログ:「微男微女