今回はお金の話をひとつ。
知人が「年収1億円になれるセミナー」に誘われたとのこと。
「あやしいですよね。どうなんですかね」
講師は「年収一億、しかもそれは不労所得」を公言し、フォロワーも多いという。
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かつて中小企業のコンサルティングをしていた頃のこと、「オーナー経営者」によくお会いしていた。
そして彼らの中には「めちゃめちゃお金持ち」が、普通に存在している。
大企業の雇われ経営者が「1億以上の報酬」をもらって騒がれていことがあるが、真のお金持ちは大企業にはめったに存在しておらず、中小企業のオーナーたちの中に数多く存在している。
だが、彼らは極力自分を「お金持ち」には見せないように注意深く行動している。自宅や乗っているクルマも、信頼できる社員にしか見せず、もちろん役員報酬がいくらなのかも開示しない。
社員が思う社長の給料と、実際のそれとは、おそらく10倍くらいの開きがある。
これは、宝くじを当たったことを公言する人が殆どいないのと同じで、「金持ちであること」を見せびらかしても嫉妬を買うだけであり、時に狙われるかもしれないと、彼らがよく知っているからである。
だが、そうなると例えば「年収1億円」と公言している人たちは、なぜこんな不合理なことをするのだろうか?という疑問が浮かぶ。
年収が1億円であることを公言しても、ほとんどメリットはないにも関わらずだ。
1つ、単純に考えれば、「自己顕示欲が強い」と言えるのかもしれない。
でも「稼げる」くらいの賢さがある彼らが、そんなバカな理由で稼ぎを公言し、自分の身を危険に晒すだろうか?
そうは思えない。おそらく彼らはもっと賢い。
真の理由はおそらくこうだ。
端的に言うと、「お金持ちと知り合いたい」という人がたくさんいることを、彼らは知っており、その集まってきた人たちを相手に商売をすることで、彼らは年収1億を稼ぎ出しているのだ。
例えば、情報商材の売り方は下のようになる。
1.「年収1億です」と言って、フォロワーを集める。
2.その秘密を無料のメルマガに書いた、といい、登録者をふやす。
3.メルマガを登録した人に、アフィリエイトで商売をする。
これが良いのか、悪いのか、という判断は脇に置き、年収を公言すること=マーケティング行為 であることは、多くの方の推測することだろう。
そしてこれは、本質的には子供の頃、誰もが想像した、「日本国民全員から年間一人1円ずつ貰えば、1億円になる」をいちばん手っ取り早く実践したものであると言える。
「たくさん人を集めれば、その中には100円、いや1000円払う人もいるはずだ。」
と考える。
だから「年収1億」を公言する彼の商売が何であるか、は傍目から見てよくわからないのは当然だ。
「リストを作って、そこで商売をしている」ことが本質だからだ。
だから、「1億円稼いでます!」という人のセミナーなどに行くと、教えてもらえるのは、必然的に「俺と同じようにやれ」となる。
めでたしめでたし。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
【著者プロフィール】
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